第34話 吉と皆穂の出会い
だが俺は正直に言うと親父が幼い頃は嫌いでいた。
いつもいつも正義ぶっていて人の為に自己を犠牲にする。
そんな感じだったから。
正義は要は俺を目にして無いんじゃ無いかってそう思える様な。
そんな感じだった。
他人が電車に飛び込んだならそれを直ぐに助ける様に。
いつか巻き添えで死ぬんじゃ無いかって思っていたのだ。
だから俺は親父が嫌いで、しかもヒーローになろうとは微塵も思って無かった。
だがきっかけが訪れる。
これは幼稚園の頃の話だ。
幼稚園で倒れた少女が居た。
その少女は.....口から吐血して、倒れたのだ。
後に分かったが、少女は肺の病気でふらついて倒れた。
しかもその少女は.....俺が片思いの少女で。
倒れた瞬間に青ざめたのを覚えている。
だが、その倒れた瞬間、授業観覧だった為に親父も居たのだが。
直ぐに動いて、少女を救急車を呼んだり、緊急の処置を行い救ったのだ。
戦隊ヒーローの様に、救ってくれた。
この日からだろう。
いつしか.....親父が好きになっていったのだ。
そして、親父の背中を追おうと。
決心した日でもあった。
☆
親父は強かった。
そして喧嘩も相当なもんで。
西子に出会ったのもそれが有る。
きっかけでは無いが、それなりに.....意味は有る。
親父に憧れる為、筋トレもした。
そしてかけっこもした。
だけど、筋肉はあまり付かずに弱かったのだ。
だが、そんな時にも親父は俺の頭をポンポンしてから言った。
何を言ったかと言うと。
お決まりの決め台詞の様にこの様に、だ。
『吉。強いだけがヒーローじゃ無いんだ。気にするな』
それがどういう意味だったか。
理解まで時間が掛かったが、1年後に理解出来た。
あの時は情けなく泣いていたっけ。
強くなりたいと願って、だ。
ヒーローは強いだけがヒーローじゃ無い。
つまり、救うのもヒーローなのだ、と。
親父は言っていたのだ。
俺はそんな親父がますます好きなった。
母さんも俺を見て、嬉しそうだった。
本当に幸せな家族だったと思う。
それが.....小学生の半ばまで.....続いた。
俺がヒーローを捨てるきっかけになった事件が起こったのだ。
☆
親父は本当にお人好しで。
そして.....その日も。
お人好しだった。
だけど、その日は裏切られた気持ちが強くて.....仕方が無かった。
親父は.....他人を救って轢き逃げされたのだ。
そして、強かった筈だが死んだ。
幸せは.....一瞬にして消え去ったのだ。
警察署の.....俺は.....親父の遺体の前で決意した。
『ヒーローなんて死ねば良い。良い事なんて無い』
と、だ。
なんだって他人の為に。
親切にしたのに轢き逃げされなくてはならないのだ、と嘆いた。
結局嘘だったんだ、親切の見返りなんて。
親切なんて.....この世には無いんだって。
母さんの泣きじゃくる顔。
そして.....暗い部屋で.....顔に白い布を置かれた親父を。
全てに心を閉ざした、瞬間だった。
それから俺は.....3ヶ月引き篭もった。
精神不安だったのだ。
だけど、それは決して母さんには言わなかった。
何故かと言えば。
これ以上、負担は掛けられないと思っていたから。
だから、引き篭もったのだ。
だけどそれも.....自分を.....捨てて情けなくしているだけだと気が付いた。
それを気付かせてくれたのが.....その年のお付き合い。
母さんの再婚相手の娘.....皆穂だ。
☆
3ヶ月引き篭もった結果。
俺は痩せ細った。
そして体力も落ちたのだが。
その中で母さんの話が更に信じられなくて閉じ籠っていた。
再婚するかも知れない。
その様に、だ。
何故、再婚するかと言われたら.....俺を支える為だという。
赤の他人と一緒にってそれは無いだろうと。
嘆いて、閉じ籠った。
そんな有る日、俺は皆穂に会ったのだが。
その顔を見て俺は驚愕した。
何故なら、6年前に遭遇した少女と似ていたから。
それで驚愕したのだ。
「初めまして。吉くん。僕は由紀治。吉田由紀治です。皆穂。挨拶して」
「.....貴方.....」
相手も相当に驚愕している様に見えたが。
今更.....どうでも良いやと思い始めて俺は俯いた。
父さんが死んだ今.....と、だ。
「.....皆穂?知っているのかい?」
「一緒に遊んだ気がする.....」
「.....」
その言葉を聞いてから俺は踵を返し、そして去る。
母さんは止めなかった。
だけど、皆穂は違い。
俺の手を握って止める。
そして俺を見上げてきたのだ。
俺は驚愕する。
「えっと.....伊藤くん.....だよね。私と友達になって.....私、ノアと別れ別れになって友達が居ないの」
「.....断る。何をもってしてお前なんかと」
「.....えっと.....」
そして皆穂の手を思いっきり振り解いて。
俺は長くなった髪を整えてから二階に上がった。
結論から言えば、皆穂と由紀治さんはよく来る様になってそして。
俺の部屋の前によく来ていた。
ベッドで座っている俺に。
声を掛けてくる人達。
救ってくれるとは思っていても。
俺は耳を塞ぐしか無かったと思う。
結局、親切は裏切る。
どうせコイツらもその様に思いながら俺は。三日に一回来るその声を耳を塞いで聞き続けて.....少しだけ時間が経った。
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