第十三章、前半 数人と母親

第51話 数人の母親が眠る場所

三者面談について。


俺の夢はスクールカウンセラー。


皆穂の夢は臨床心理士。


ノアの夢は医者。


数人の夢はプログラマー。


吉武先輩の夢は保育士。


成宮の夢はプログラマー。


鹿島先輩の夢は体育教師。


小町先輩の夢は本屋さん。


etcと言う感じだ。

そんな感じで.....将来の皆んなの夢が纏まっていく。

特に驚いたのが.....皆穂の夢だ。

まさか皆穂が臨床心理士になりたいなんて思わなかった。


人の心が知りたい。


それは.....大きな転換点を迎えた様な気がする。

俺は.....思いながら部屋で勉強していた。

スクールカウンセラーの仕事とかもそうだが、今の勉強。

8月3日のある日。


夏休みに突入し俺は8月を迎えていた。

特に何も起こらず、勉強やらノアと皆穂とつるんだり。

そんな感じだった。

でも8月ってこんな生活で良いのだろうか.....。


何だか青春を謳歌しているとは思えない.....が。

俺の家に家族以外の女子が居るだけでも相当謳歌なのだろうけど.....うーん。

と、思っていると.....ドアが開いた。

そして.....顔が赤い髪を伸ばし始めたノアが入って来た.....え!?


「ノア!?風邪か!?」


「ヒック.....」


「.....へ?」


えへへ.....吉クゥン.....と俺の頬に手を添える、頬が赤いノア。

ちょ、ちょっと待ってくれ!

コイツ、酔ってないか!?

俺は驚愕して扉の方向を見る。


「ノア!アンタ!離れなさい!」


長いポニテにした、エプロンを着けた皆穂が銀髪を揺らして怒り狂って入って来る。

いやいや、と言いながらノアは俺に縋る。

ちょっと待てコラ!

何をしたんだ皆穂!?

皆穂は首を振って俺を見る。


「ウイスキーボンボンをお茶菓子に出したら.....この有り様!」


「嘘だろ.....それで酔ったってか!?」


「えへへ.....って言うかぁ.....この部屋.....暑い.....」


そう言ってノアは.....の、ノア!!!!?

俺の目の前で下着姿になった。

そして更にブラを.....オイィ!!!!!

あっという間の事に反応が遅れた皆穂は。


「何やってんのぉ!!!!!」


と絶叫を上げて思いっきり止めるが。

ブラを取ってしまった。

俺はぎゃあああ!!!!!と顔を覆う。

そして悲鳴を上げる。


「涼しぃ.....」


「アホンダラ!クォ!.....お前のせいだぞ皆穂!なんで食わせた!」


「ちょっとノア!この変態馬鹿!こっち来なさい!」


「ェ?」


ェ、じゃねぇ!

俺は必死にノアをひっぺがそうとするが。

ノアは更に過激に俺に乗ってくる。

うへえ!

皆穂は俺を見ながらバキバキ手を鳴らす。


「.....吉クゥン。でかいでしょ。私の」


「.....ノア。お願いだ。正常にお前に戻れ。俺が殺される!」


「.....お兄ちゃん。見たものは仕方が無いけど、マジに殺す」


そして俺は拳の餌食になった。

簡単に言うと、後ろに吹っ飛んだ。

それから地面に落ちる。

その音でかノアはハッとした様だ。


「...........き.....吉くん。何をしたの?私」


「.....」


「いやあああ!!!!!」


「不幸だぁ!」


胸を隠したノアの強烈な平手打ちの餌食になった。

そして俺は地面に叩きつけられ。

俺は涙を流した。

こんな日々が続くのは.....嫌なんだが。

目の前では皆穂がまだ手を鳴らしているし.....。


ピンポーン


インターフォンだ!よし!

ナイスタイミングだ!

流石は数人だな!

俺はダッシュでその場を逃げて行った。


「出ないと!」


「お兄ちゃん!?逃げないで!」


冗談じゃ無い。

このまま居たら皆穂にマジで殺される。

その様に思いながら玄関を開ける。

そこに.....数人が立っていた。

目をパチクリして、だ。


「.....何をやっているの」


俺にその様に眉を顰めて話す、数人。

何故なら今の俺は。

皆穂と争っていたから、だ。

俺は苦笑しながら.....首を振る。


「.....気にする事は無い。お前こそどうしたんだ?灯篭さんと一緒だなんて」


「こんにちは。お久しぶりです」


「.....はい。お久しぶりです」


灯篭さん。

数人の父親だが.....一緒に来るってのは。

思いながら俺の腕に噛み付いている皆穂に話す。

皆穂は齧りながら俺に?を浮かべていた。

痛いんだけど。


「俺、ちょっと出て来るからな」


「.....あー、数人さんのお母さんに会うんだよね?」


「.....そうだ。留守番頼む」


そして俺は傷口にフーフーと息を吐きつつ涙目になりながら。

立ち上がって数人を見た。

それから俺は口角を上げて数人に言う。

取り敢えずは準備しないとな。


「数人。もう少しだけ待っててくれるか?」


「良いよ別に。僕は。ね、父さん」


「そうだな。数人」


この仲まで回復するとは思わなかったのだろう。

灯篭さんは嬉しそうな感じだ。

俺はそれを微笑ましく見ながら準備をする為に頭を下げて二階に上がった。

ノアが俺を涙目で見ながら.....どうしたの?と言う。


「.....えっとな、墓参りに行って来る。留守にするから宜しく」


「.....私を置いて行くの?皆穂ちゃんに酷い目に遭わされたのに」


「.....いや、え.....そう言われても.....」


私を置いて行くのって。

じゃあ一体、どうしろと.....。

俺は額に手を添える。

すると皆穂が階段を上がって来てノアに持ち掛けた。


「.....じゃあ、お兄ちゃんにどっちかが付いて行くとか?」


「.....え?でもそれは迷惑が.....吉くんに.....特に」


「どっちかが留守番。どっちかが.....お兄ちゃんを支える。どう?」


「.....いや、お前ら。墓参り.....」


人の墓前参りなんだが.....と思いながら見る。

だが.....良いよ、受けて立つと言ったノア。

バチバチと睨みながら火花を散らし始めた二人に。


俺は盛大に溜息を吐くしか無かった。

止められない様な気がする。

マジに困ったな.....。

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