第52話 白石財閥の妹、雪子

数人の母親について数人自身はあまり詳しく話してない。

幼い頃に亡くなっているという事は言っていた様な気がするが。

俺は.....目の前の数人を見ながら.....考える。


両親をこの世から失う事。

それは.....心が相当に痛い事で.....そして、悲しいという事だ。

俺はその事を考えながら数人に聞く。


「.....数人」


「.....何」


「.....お前の母親って.....がんで亡くなったんだよな?」


「.....そうだね。.....僕が.....幼い頃に亡くなったよ」


電車に揺られながら、俺とノアと灯篭さんと数人と一緒に窓から外を見つめる。

因みに賭けの件だが皆穂が留守番になってしまった。

皆穂は散々に悔しがっていたが.....賭けたのはお前だしな。

どうしようも無いだろうと苦笑してノアを見た。


ノアは少しだけ複雑な顔をしていた。

自らの心臓病の父親を案じているのだろう。

俺はその姿を見つつ外をもう一度見る。


そう言えば滅多に乗る事は無いが、この方面の電車は思い出の電車なのだ。

生前の親父と乗った.....思い出の、だ。

今それを思い出すのはきっと、数人の.....事が有るからだろう。

数人の母親の事が、だ。

すると数人が俺を見つめた。


「.....でも僕はもう泣かないって決めているから」


「.....そうなのか」


「.....僕が泣いて.....母さんが苦労するなら.....泣かないってね」


「.....強いですね。数人さん」


ノアがそんな尊敬の眼差しを向ける。

私は強く無いですと言う様な感じで、だ。

俺は、そうだな、と言った。

だが.....そんな俺達の言葉に数人は.....俯いて違う、と答える。

俺達は顔を見合わせた。


「僕は強く無いよ。吉」


「.....いや。強い。少なくとも俺よりかは遥かに強いさ。幼馴染の為に立ち向かった程だしな」


「.....」


少しだけ数人は見開いて。

俺に笑みを溢した。

その姿を見つつ、電車の案内表を見る。

間も無くの様だった。


「.....海原駅まであと少しだぞ」


「.....そこが母さんが眠っている場所だよ」


「.....そうか」


俺は思いながら、灯篭さんを見る。

灯篭さんは少しだけ涙を浮かべていた。

それをハンカチで拭っている。


「.....いやはや、すいません。つい.....嬉しくて。数人と一緒に雪子のお墓参りが出来るなんて」


「.....いえ、そんな場所に僕達も本当について行って良いのでしょうか?」


「.....大勢の方が楽しいから。仲間だけだけど」


「.....そうか」


そして電車は海原駅という場所に着いた。

俺達は降りながら外を見る。

外は.....海が見渡せる、田舎の様な場所だった。

俺は見開きながら見る。

この場所は.....来た事が無い。


「.....綺麗な場所だね」


「.....そうだな」


「.....こっちだよ」


数人が指差して案内をする。

俺達は静かに木造の駅を降りながら。

数人と灯篭さんに付いて行く。

整備が曖昧の道を、だ。



「.....これが母さんの眠っているお墓」


数人は静かに指差す。

ザザーンと音がする海が見える、丘。

その場所に.....少しだけ年を取った様な墓石が並んでいる。


中央辺りにグレーの墓石で数人の母親の墓が有った。

俺達を優しく見守っている感じで。

少しだけ真剣な顔で.....手を合わせてノアと共に挨拶をした。


「こんにちは。俺は吉.....数人の友人です」


「.....数人さんの友人のノアです」


そして俺達は目を開ける。

線香の香りが鼻をつく中で俺は数人を見る。

数人は嬉しそうな感じで手を合わせた。

それから俺を見る。


「.....紹介した。ノアと皆穂も」


「.....有難うな、数人」


「.....全然構わない。僕の方こそ、有難う」


そうしていると。

向こうから、あれ?と声がした。

その声の方を向くと。


何かあまり会いたいという印象が無い様な雰囲気の人達が居た。

女の子、男性、女性、各一名、スーツを着用したりしている。

そんな事を思っちゃいけないのかも知れないが.....俺の嫌気を感じる特殊なセンサーがビクビク反応する。

俺は.....静かに見据えていると、その中の女子が言葉を発した。


「.....数人?アンタ.....久々じゃん」


「.....白石.....」


「へぇ?何様のつもりで来たの?アンタ。.....お父さんの妹の雪子さんの墓参りを1年もすっぽかした癖に」


「.....僕は引き篭もっていた。だから来れなかったんだ。すまない」


だが反省を述べているにも関わらず。

その女の子は俺達を見下して見つつそのまま親父と思われる男にこう話した。

だってだそうですが、と、だ。


俺は?を浮かべる。

すると男性が次に前に出て来て言った。

モノクルを付けた、中年の髭が少し長い男が、だ。

今の時代にモノクルを着けている奴が居るなんてと思う。


「.....私の大切な妹のお墓参りには感謝致します。しかしながら.....そこに居る少年と少女。赤の他人を連れて来るのは感心しません。お墓参りに1年も間を開けた事も、です。私達、白石財閥のルールに反しています」


「.....一族のルールとか.....和久田さん。何年前の話を.....」


とそこまで数人が呟いた瞬間。

数人の胸ぐらを掴み上げた女子。

俺は立ち上がって慌てる。

何だコイツ!?

するとその女子は数人を睨み付けた。


「一族のルールが古いっての?アンタ」


「古いと思うよ。僕はね。大体、いつまで縛られているつもり?母さんはそれが嫌で何時も色々と言っていたよ。白石」


「雪子さんはアンタ達が連れ去ったんでしょ。何様!!!!!」


まさかの事だ。

バキィと音がした。

信じられない事に、数人がその女子に殴られたのだ。


流石の俺もブチ切れそうになる。

そう、思いながら言おうとした時。

灯篭さんが俺の肩に手を置いて言葉を発した。


「確かに白石財閥のルールには反しています。その点は謝りたい。でも.....この子達は.....数人の友人なのです。和久田さん。初めての、です」


「.....ふむ。だから?.....それは盗人の言い分ですか?私達.....白石財閥に何の関係が有るのでしょうか」


「それから私はちゃんとして.....告白を受け結婚しました。雪子に.....です。雪子を愛していました。1年も来れなかったのは.....私が数人の件で忙しかったからです。謝ります。しかしながら殴る必要は無かったかと思いますが」


「雪子に仕組んだのでしょう。貴方方が。それはいけない事だと思います。雪子を殺したのもどうせ貴方方でしょう。罪を償ってほしいものです」


何様だコイツら。

さっきから聞いてりゃ滅茶苦茶な!

灯篭さんと数人がどれだけ苦労したと!!!!!

ノアが抑えるが堪らず俺は声を上げる。

そして睨み付けた。


「.....盗人とか状況が分からないけどよ。俺は数人の友人だ。それを否定されるのは非常に困る。.....今直ぐに訂正してくれ」


「数人くんの御学友の方ですね。私はまともな事を言っています。謝る必要は無いと思いますが」


「そうよ!」


コイツ.....分からない奴だな。

絶対殴る。

俺は怒って思い、一歩を踏み出す。

だがそれを数人が静止して、俺を見てくる。

そして首を振って前を見た。


「.....僕がやるから。これは.....僕と親父の事だから」


「.....数人.....」


「僕に任せて」


数人はその様に話し、前を見た。

それから一歩を踏み出して.....数人はその男を見つめる。

俺達は見守る。


「.....僕の母親は本当の愛で親父と結婚した。だから.....これは間違いじゃ無いと思う」


その力強い宣言に。

見開いてから、盛大に溜息を吐いた男。

そして周りを見渡して一言。


「.....ハァ.....話にならないですね。行くよ。陸子」


「ベーだ!」


舌を出して去って行く3人。

何だってんだこれ?

本当に腹立たしいな.....。


と思いながら.....複雑な顔をしている数人と.....灯篭さんを見た。

俺達以上に.....深いんだな.....と思ってしまう。

その視線に気が付いた数人は俺に.....言葉を発した。


「.....気にしないで。僕は大丈夫だから。父さんも」


「.....何がどうなっているんだ?数人。しかも白石財閥って確か日本で数少ない大金持ちの.....化粧品メーカー.....だよな?」


「.....そうだね。僕は.....仮にも大金持ち.....って言えるかもね。でもそんなものはどうだって良いんだ。親父と.....母親と一緒に居る事が.....大切だから」


さ、行こう、吉、皆んな。

と話を切り替えて手を差し伸ばして和かな顔をする数人に。

俺とノアは顔を見合わせて、数人に付いて行った。

まだもどかしい気持ちが心の中で燻りながら。

灯篭さんも複雑な思いを抱いている様だったが.....顔を切り替えていた。

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