第40話 それが父親の言葉か!

病室は分かれてない二つの病室に由利と皆穂が居た。

俺はその病室のドアをコンコンとノックする。

だが、全く返事が無い。


どういう事だ?

俺はその様に思いながらドアを見つめた。

少しだけ不安が過ぎる。

そして呟いた。


「.....どうしたんだ?返事が無いんだが.....」


「開けてみたらどうかな」


「.....そうですね」


その様にノアと和人に言われたのでドアを開けてみた。

で、そのまま俺は顔を引き攣らせて固まる。

下着姿の皆穂と由利が居たのだ。

俺は赤面していると。


洗面器が飛んできた。

そのまま俺は強打して俺だけ!?

ぶっ倒れた。


ってか、何だって俺だけ!?

俺は洗面器を見つめる。

すると。


「お兄ちゃん.....いきなり開けるなんて最低」


「吉くん。最低」


「.....無いね」


数人と皆穂とノアがそう言うが。

ってかノアと数人に至っては俺に対して開けて良いって言ったじゃねーか!

お前ら裏切ったな!

俺は盛大に溜息を吐いて起き上がる。

それから勢い良く閉められたドアを見た。


「.....でも元気そうだな」


「.....そうだね。何処まで元気かどうかは分からないけど」


「.....そうですね」


「.....ああ」


皆穂は夏風邪は薬を飲んで落ち着いたと聞く。

由利だな、問題は。

俺はその様に考えながら起き上がる。

足が重い.....。

俺のせいじゃ無いって周りは言ってくれるけど.....。



「全くお兄ちゃん。由利も居るんだから」


「.....」


「.....いや、悪かったって」


病室でその様な会話をする、俺。

飲み物を買って来た母さんも戻って来た。

そして俺達は椅子に座りながら.....俺は由利を見つめる。

それから汗を一筋流して聞いた。


「.....由利」


「はい」


「.....俺達の事が分かるか」


その言葉に機械人形の様に俺を見てくる、由利。

そして一言だけ言葉を発した。

俺から目を逸らして、だ。


「.....はい。曖昧ですが」


「.....」


「.....由利ちゃん.....」


ノアが涙目で呟く。

記憶が無くなっているどころの騒ぎじゃ無い気がする。

俺は.....その雰囲気と言葉遣いに.....青ざめた。

何だろう.....マズい気がする。


「.....由利は記憶が曖昧になっていると思うよ。お兄ちゃん」


「.....皆穂.....」


「.....私の事も曖昧だし、話し方がおかしい」


俺は無言で俯いた。

そして.....考える。

その肩に手を数人が置いてくれた。

俺は.....その手を握る。


「.....由利。すまなかった」


「.....なにがですか」


「.....俺のせいだ。俺が.....お前を病院に連れて行かなくて良いと。そう思っていたから」


「.....私は大丈夫ですよ」


目の前を見つめる、由利。

その目が死んでいる様な.....感覚だ。

まるで.....悪魔に魂を売った抜け殻の様な。

俺は.....少しだけ涙を流す。

そうしていると.....由利が言った。


「.....吉さん」


「.....どうした?」


「.....私を全力で守ってくれていた事は知っています。だから私は.....大丈夫です」


「.....」


全力で守った.....か。

でもな.....と思いながら見つめる。

何だかこの感覚。

皆穂がヤンデレをまた発症した時に似ている。

本当に.....悲しいな。


「.....お兄ちゃん。そこまで気を落とさないで。今からまた思い出を作っていけば良いんだと思うよ」


「.....」


「.....ああ、そう言えば.....部活に確か沢山のゲームが有ったと思う。そこに連れて行ってみたらどうかな」


数人がその様にアイデアを出した。

良いんだが、高校に小学生を連れて行って良いのか?

俺は思いながら数人を見る。

数人は電話をしていた。


「.....大丈夫じゃ無いかな。特別な許可が要るとは思うけど、あの学校は緩いから」


「.....吉武先輩に電話しているのか?」


「優香なら納得してくれると思うから」


そして病室を出て行く、数人。

俺はそれを見送ってから由利を改めて見た。

由利は?を浮かべて俺を見ている。

何をしているのだろうかという感じだった。

俺はその視線に問う。


「.....色々やってんだ。待っていてくれな」


「.....大丈夫です」


「.....それにしても数人さん、変わったね。お兄ちゃん」


そうだな、と俺は返事をする。

数人が変わったから.....俺達も助けられている。

その様に思っていると。

ドアが開いた。


「.....?」


「.....由利。お前というやつは迷惑を掛けて!!!!!」


そのドアからいきなり、中年の男が入って来た。

そして由利の胸ぐらを掴もうとする。

ちょっと待て!何だ此奴!

俺は怒って立ち上がる。

だが、次の母さんの言葉に俺は固まる。


「.....相澤社長.....」


「.....え!?」


俺はポカーンとする。

すると、その社長とやらは俺達に頭を下げた。

それから.....名刺を配る。

相澤彦(あいざわびこ)、と記載があった。


「失礼を致しました。私の娘がご迷惑を.....今直ぐに連れて帰りますので」


何を言ってんだ此奴。

俺は唖然として直ぐにハッとして言った。

今直ぐに連れて帰るって!


「ちょ、待って下さい!」


「何か?」


「.....いや.....今直ぐにって!入院しているんですよ!由利さんは!」


「.....だから?」


俺は耳を疑った。

此奴今、だから?、と言ったのか?

何だって.....そんな事が言えるんだ!?

俺は拳を握る。


「.....これは私と由利の問題です。あなた方が踏み込む必要は有りません。由利は情けないだけですから。全く.....これぐらいで倒れるなんて」


「.....そういう問題なのか.....?」


その言葉にハッとした母さんが静止する。

だが.....黙っていられなかった。

何でそんな事が軽々しく言えるんだ?

由利は今までずっと.....苦しんでいたんだぞ。


「.....あんた.....由利ちゃんは.....散々に苦しんでたんだぞ.....」


「.....由利の不甲斐無さです。ただの」


その様に切り捨てる、由利の親父。

信じられない。

記憶を失っている由利に掛ける言葉じゃ無い。

俺は.....怒りが激昂に変わりつつあった。

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