第19話 婚約写真
京子と皆穂を二人、デパートに送った。
そして.....俺はと言うと。
二人っきりが良いかと思ってそのまま少し色々な場所にフラフラ立ち寄って。
そして今に至る。
自宅に帰って来た。
俺は玄関の戸を引っ張って開ける。
そして室内に入ると、母さんが居た。
何か片付けをしている。
「.....あ、手伝おうか?母さん」
「良いわよ。大丈夫。お父さんの遺品を見ているだけだから」
「.....そうなんだね」
「ええ。遺品.....見ていると励まされる感じがするわ。本当にね」
母さんは懐かしく思いながら、の感じだった。
俺は.....腕まくりをして、片付けをしようとする、が。
その前に話した方が良いかな、と思った。
俺は母さんに向く。
「母さん」
「.....何?吉」
「俺と.....皆穂かな。.....京子さんに会って来たんだ」
俺は全てを有りのままに告げた。
その言葉に母さんが思いっきり見開いて俺を見てくる。
ただただ.....悲しげな顔をした。
俺は.....母さんの手を取る。
「.....それでね、母さん。俺.....」
「.....良いの。吉。恨みを打つけた訳じゃ無いのでしょう?だったら大丈夫」
「.....母さん.....」
「.....私は今だに許せないわ。京子の事。でも.....貴方が代わりに.....京子に会ってくれた。それは.....お礼を言うわ」
母さんは横に有る、古びた段ボールを開けた。
そして.....中身から何かを取り出す。
婚約写真の様な.....モノを。
そして埃を.....払った。
「.....私も恨みばかり募らせても.....意味無いのかも知れないわ.....でもね.....」
涙がポツポツとその写真のケースに落ちる。
そして.....埃混じりで流れた。
俺は.....それを見ながら少しだけ複雑な顔になる。
母さんは今でも.....父さんを.....愛しているんだな、と。
ただ、そう思えた。
母さんは涙を流しながら、俺に向く。
「.....ごめんね、やっぱり京子を許せないわ。私.....」
「大丈夫だよ。母さん。俺も.....同じ気持ちだったから.....」
「.....貴方は強くなったわね。吉。やっぱり.....私は貴方を産んで間違いじゃ無かったわ。本当に良い子.....」
号泣する母さんを俺はゆっくり抱き締めた。
そして頭に手を添える。
俺も同じ気持ちだ。
だけど.....このままじゃ駄目なんだよな。
そう思いながら若き日の親父を見た。
親父.....。
「.....母さん。俺は何時迄も側に居るからね」
「.....有難う。吉」
そして暫くの間。
俺達は感傷に浸っていた。
母さんは脆い。
だから守らないと.....な。
☆
次の週、5月8日。
俺は目の前の仁王立ちの女の子に殺すという様な目線を向けられていた。
握っているのは俺のスマホだ。
「で?吉。何コレ?この画像は何?」
「.....AV女優の.....かたちゃんです.....」
「何でスマホに入っているの?変態」
「.....」
レイプ目の皆穂。
オイ、何だこの状況は。
俺は.....盛大に溜息を吐きながら。
因みに、正座させられていた。
パスワードは6桁の筈だ。
それを軽々しく超えるなんて.....怖い子!
俺はその様に思いながら、皆穂に向く。
「ってか、お前な、勝手に俺のスマホを開けるな」
「何?お兄ちゃん。私が好きな人のスマホを見たら駄目って言うの?何で?」
「.....ハァ.....」
俺はもう一度、盛大に溜息を吐く。
そして見ていると。
皆穂のスマホに電話が掛かってきた。
プルルルル!
「あ.....もしもし.....吉武先輩ですか?」
「.....吉武?」
電話をしている、皆穂の側で。
俺は?を浮かべていた。
その吉武という名には聞いた覚えが有る。
確か.....現生徒会の副会長じゃ無かったか?
「.....え?あ、そうです.....はい。例の件。宜しくお願いします」
「.....?」
「そうです。えっと、吉を入部させるの.....そうです」
「オイ」
聞いていれば何だそれは!
ちょっと待てよ、何の話をしてんだ!
俺はその様に思いながら、皆穂を見る。
皆穂はニコニコしながら電話をしていた。
「じゃあ、はい、はい。.....失礼します」
切れた様だ。
俺はそれを見計らって言った。
何を考えているのだ!?
「.....アホかお前は!俺を入部って!?」
「.....部活だよ?お兄ちゃん。一緒に行こうよ。楽しいよ!きっと」
「嫌だ。ってか、俺は人見知りだ!」
「お兄ちゃん。行こうよ..........?」
レイプ目で脅しても無駄だ!
俺は人見知りだからな!
絶対に行かんぞ!
ってか、ん?
「お前、何の部活に入ったんだ?部活入るとか珍しいな」
「そうだね。久々に楽しそうだから入ったの。漫画研究部」
「.....漫画研究部!?」
俺は見開いて衝撃を受けた。
コイツ、漫画の事、あまり詳しく無いし読まないのにか?
何でだ?
そう思っていると、直ぐに答えが皆穂から出た。
「簡単に言うと、お兄ちゃんの趣味が知りたいからだね」
「あー.....なるほどね」
俺は盛大に溜息を吐いた。
いかにもコイツらしい。
思っていると皆穂か赤面で話した。
「だから.....」
「卑怯だぞお前.....」
涙目になる、皆穂。
頭に手を添えた俺。
何だよこの可愛い女の子は。
くそう。
俺は諦め半分で言った。
「行けば良いんだろ.....全くよ」
「だから.....好きなんだよ。お兄ちゃん」
ボソボソ呟いて。
花が咲く様な笑顔を見せる皆穂。
俺は苦笑気味に、はいはい、と言った。
こうして俺は部活に入る事になり。
また新しい仲間と。
そして。
何というか新しい絆に出会うとはこの時、全く思わなかったのだ。
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