第18話 俺(親父)の思い
親父は.....言った。
俺に対して何時も、何時も。
何を言ったかというと俺を成長させる言葉を、だ。
当時はそれが理解出来なくて親父に刃向かった事もあった。
打つかって喧嘩もした事も有った。
だけど、親父の亡くなった今。
俺は.....成長しなくちゃと思ったのだ。
墓地で京子に出会った俺達は墓に眠る親父に挨拶をしてから。
近くに有った喫茶店に移動した。
そして椅子に座り.....。
「.....」
「.....」
「.....」
沈黙が流れていた。
唯一、コーヒーが湯気をウネウネ変な感じで上げている。
それだけが場を和ませている様な、救いな感じで。
あれだけ偉そうな事を言った俺も。
いざ、こうなると言葉に詰まっていた。
皆穂も沈黙していて母親も.....話すのをどうしたら良いか迷っている様だ。
俺が対面に座っている。
そして皆穂は真正面の右。
皆穂の母親は左に、と、そんな感じだった。
さて.....どうするか、そう思っていた時だ。
「.....私」
「.....?」
「.....伊藤くん。私は貴方にも西子にも本当に謝りたいと思っていました。でも.....足が動かなくて.....そして.....私なんかが行っても良いのかと思いました.....私は最低ですね.....本当に.....結局、全てから逃げてばかりで」
「.....お母さん.....」
その言葉を聞きながら俺は.....コーヒーを見た。
謝りに来てくれなかったのは.....ちょっと人として如何なものかと思う。
でもな.....その、人としてどうかとは思うけど。
この人は本気で反省しているから.....な。
「.....来てくれなかったのはちょっと問題が有ると思います。でも.....京子さん。京子さんは本当に反省しているんですよね?」
「それは当たり前です。貴方の.....お父さんを跳ねてからしかも逃げたのですからね.....」
「.....だから全部を許す訳にはいかないですね。でも.....許しても良いと思う部分も有る。俺はそう思います」
京子は.....はい、と言った。
そう言ってから俺は皆穂を見る。
そして京子に向く。
俺の全ての元凶に、だ。
「.....皆穂が俺を助けてくれます」
「.....?」
「.....俺は昔、皆穂も由紀治さんも京子さんと同じだろうと恨めしく思っていました。だけど.....皆穂と由紀治さんの優しさに触れて.....俺は変わっていく事も有りました。俺は恨むのが全てじゃないとこの時に思いました。.....皆穂は問題も有りますが良い義妹です。そして.....教育は間違っていないと思います」
「.....お兄ちゃん.....?」
呆然とする皆穂。
俺はそんな皆穂を見て笑んだ。
皆穂。
俺はお前と由紀治さんは.....優しいと。
それを伝えたい。
俺は何が言いたいのか.....そうだ。
「.....親父は.....きっとこう望む筈です。.....自らを責めすぎないで。体調崩したら意味無いと思いますから、生涯、ゆっくりと反省して欲しいと」
「.....はい.....」
皆穂と京子は。
寄り添う様にして涙を流した。
その光景を見ながら俺はポケットに手を当てる。
親父の遺影の入っている生徒手帳に、だ。
ってか、暗い話も続くのも良いが.....。
「皆穂。この後、どうする?」
「.....お母さんと一緒に少し.....買い物がしたい」
「.....そうか.....じゃあ分かった」
と思っていた時だ。
皆穂は頷いて、意を決した様に。
京子に向いた。
何かを話す様だが。
「.....私、伊藤くんを好いてるの。お母さん」
「.....は」
「.....え」
目を丸くする、京子。
こんな時に何を言い出してんの!?
俺はコーヒーを吹き出した。
嘘だろ!?
「.....でもね、この恋は絶対に許されない。お母さんも許可をしないと思う。あとね、同じ様に好いている女の子が居る。だから私は.....戦う。そしてお兄ちゃんの側に居れる様に.....常に居たいと思ってる。お母さん。応援してとは言わない。だけど.....見守って居て下さい。貴方の娘は.....大きく羽を広げています」
「皆穂.....?」
「.....」
京子は愕然としていた。
が、何か.....少しだけ柔和な顔立ちになる。
それから俺を真剣な顔立ちで見てきた。
「.....私の過去を知っていますでしょうか。伊藤くん」
「.....え?いや.....」
「貴方のお母様、西子さんとは.....幼馴染です。懐かしいです。私は.....同じ好きな相手を.....振り向かせたいが為に.....争っていました.....」
少しだけ懐かしみながら。
俺を見てくる、京子。
頭を下げた。
「.....娘を見ていて下さい。高望みはしません。でも大切な娘なの.....です。見守っていて欲しいです。本当に.....御免なさい.....私はこれ以上言える立場じゃ無いですから.....そして私の手が届くのは此処までですから」
憔悴し切った様な顔で言う、京子。
俺はその様子を見ながら.....皆穂を見た。
皆穂は俺に向いて頭を下げている。
「.....お兄ちゃん。お世話になるからね。でも自分の事は自分でするからね。居させて下さい」
「.....俺はそんなに鬼じゃ無いからな。大丈夫だ」
「.....有難う。伊藤くん.....」
涙を浮かべる、京子。
俺はその顔を見ながらコーヒーを見た。
すっかり冷めている。
でも悪い気は.....全くしなかった。
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