第22話 赤山家と.....。

赤山数人という少年。

俺は.....そいつに会ってみたいと思った。

ヤンデレの義妹、引き篭もり、親を亡くした、などなど。


様々な経験なら俺は数人に立ち向かえるかとそう思ったから、だ。

だから.....会いたいな、と、思った。


(次は〇〇区〜)


「あ、お兄ちゃん此処だね」


「.....そうだな」


バスの下車のボタンを押す、皆穂。

5月10日に母の日を祝うという事になっていたが、急遽予定を変更した。


そして今日は5月11日、金曜日。

俺と皆穂とノアはバスに乗ってこの町の南区まで向かっていた。

吉武先輩によると.....南区に.....数人の家が有るらしい。


俺は数人の好きな物を持ってそして.....来た。

もしかしたら駄目かも知れないが。

一か八かだな。


「.....お兄ちゃん。数人さんに.....会えるかな」


「.....少なくとも.....0では無いと思う」


「そうだと思うよ」


その様な会話をしながら、俺達は下車する為にバスの前方に歩く。

すると、真横に座っていた.....栗毛色の髪の毛のイケメンが.....俺を見て手を挙げて挨拶をする仕草を取った。

俺は少しだけ眉を顰める。


「.....?」


「お兄ちゃん。そいつに関わらない方が良い」


突然その様な皆穂の声がした。

俺は、は?、と言って皆穂を見る。

皆穂は警戒していた。

何だ?このイケメン知っているのか?


「とにかく早く」


「お、おい.....」


そしてバスを降りる。

そして見た皆穂はと言うと.....ヤンデレモードに入っていた。

何でだ!?俺は驚愕しながら見る。


「皆穂?どうした」


「.....あのクソ馬鹿.....こんな場所に.....」


「.....み、皆穂ちゃん?」


俺もノアも心配げに皆穂を見る。

ギリッと眉を顰めて、暫く住宅街を見ていた、皆穂。

だが何か吹っ切れた様に歩き出した。

俺とノアは顔を見合わせて?を浮かべながら歩く。


「.....アイツは.....何だ?知っているのか?」


「.....あれは富山。富山和彦(トヤマカズヒコ)。.....高校時代に.....転学前に私に付き纏っていた奴だから」


「.....え?皆穂ちゃんを?!」


驚愕する、ノア。

俺も衝撃で見開いていた。

まさかあのイケメンが?

言っちゃ悪いがそんな感じに見えない。


「.....アンタも気を付けて。吉。そして.....ノア」


「.....あ、ああ」


「.....分かった」


そんな奴もこの世の中に居るんだな。

俺は思いながら皆穂達と共に歩いて数人の家を目指した。

数人の家は.....レンガ模様の家らしい。

うん、有った。


「.....此処が数人さんの家?」


「そうらしいな」


目の前にレンガ模様の家が有る。

至って普通の.....二階建て、では無い。

二階の部分。

そこのカーテンが閉められていた。

つまり.....あれか?数人の部屋は。


「.....取り敢えずインターフォンを押すか.....」


因みに今日、来る事は赤山一家に伝えて有る。

今日は数との母親以外は家に居るそうだ。

俺はインターフォンを押してみる。

すると直ぐに返事があった。


『はい』


「あ、すいません。俺.....じゃ無い。伊藤と申します」


『.....ああ、伊藤くんかね。今日は宜しく』


少しだけ疲れた様な中年の声。

俺は.....その声を聞きながら、皆穂とノアを見た。

頷いて居る。

すると、玄関のドアが開いた。


「.....伊藤くんと.....皆さんだね。.....入りなさい」


眼鏡の白髪の中年の男が出て来た。

この人が.....数人の父親か。

俺は納得しながら、皆穂とノアに向いて。

そして玄関から中に入れてもらった。

数人の父親は玄関を閉めながら俺達に向いて言葉を発する。


「.....正直に言って.....君達が本当に来てくれるとは思わなかった。.....すまないね」


「.....いえ。大丈夫です」


「大丈夫ですよ」


そして.....玄関から綺麗な廊下を歩いて行き。

リビングまで案内された。

それから座る様に促され俺達はお言葉に甘えて、と腰掛ける。

部屋には.....数人の幼い頃の写真と思われる写真が.....幾つか有った。


「.....あの、つまらないものですが.....」


俺は台所に向かっている、数人の父親にお菓子を渡す。

ああ、これはこれは。

と、言いながらニコッと笑む数人の父親。

だが、直ぐに笑顔は消えた。


「.....お茶を淹れますからね」


「.....あ、じゃあ私も手伝います」


皆穂の得意分野だ。

ちょうど、皆穂は家事が得意なのだ。

俺はそれを見送ってから。

ノアと一緒に腰掛けていた。


「.....数人.....さん.....会えたら良いね」


「.....会える。きっと」


吉武先輩の思いも有る。

このまま何の収穫も無いままで.....帰る訳にはいかない。

そう思っていると、お茶を皆穂が運んで来た。


「.....すまないね。手伝ってもらって」


「.....いえ.....」


「.....それじゃ、早速内容に.....入ろうか。私の名前は赤山灯篭と言う。宜しく」


俺は伊藤吉と言います。

皆穂が私は義妹です、伊藤皆穂と言います。

最後にノアが私は山吹ノアです。

と自己紹介した。


灯篭さんは一番、俺と皆穂の関係を驚いていた。

そして.....俯く。


「.....君達.....いや.....やめておこう」


「.....俺達は.....再婚相手同士の子供です」


「.....そうなのだね.....」


仲がよろしいですね、と灯篭さんは和かに言う。

俺は.....そうですねここまで来るのは時間が掛かりましたけど、と答えた。

灯篭さんは直ぐに笑顔が消える。


「.....数人.....に会いに来たんですよね?皆さん」


「.....そうです」


「数人さんを心配して来ました」


俺と皆穂は必死の思いを告げた。

灯篭さんはお茶を一口飲んで、そして俯いたまま言う。

その言葉を、だ。


「.....多分.....会えません。数人は.....かれこれもう.....一年以上、他人と会ってない」


「.....はい」


「.....だから今日は無理だと思うのです」


「.....灯篭さん」


俺は話を遮って申し訳無いという顔をしながら。

灯篭さんに向いた。

そして.....俺は胸に手を当てる。


「.....俺は.....数人くんに会えると思います。彼の.....気持ちは俺は.....よく分かるんです。何故かと言われたら.....俺も引き篭もりでした」


「.....え?君が.....」


「はい。引き篭もりの気持ちは.....引き篭もりにしか分からない事も有ります」


「.....」


灯篭さんは俯いた。

それから数秒経って意を決した様に立ち上がる灯篭さん。

そして真剣な顔の俺達に向いた。

静かに灯篭さんは言葉を出す。


「.....案内します。付いて来て下さい」


「.....有難う御座います」


俺達は顔を見合わせて頷いた。

遂に決戦の場に向かう事になる。

灯篭さんの案内で、だ。

数人.....。

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