完璧義妹には重大な欠陥が有りますのでお取り扱いにご注意下さい

アキノリ@pokkey11.1

第一章 全知全能、容姿端麗の欠陥

第1話 相反する義妹

とある県立高校に通っている、伊藤吉(イトウヨシ)、16歳。

かなりの陰キャとも言える様な俺は本当に環境や人間に馴染めずに居る。

その原因は多分、引き篭もっていたせいで言葉が詰まるからだ。


陰では運動音痴キ●ガイとも言われるぐらいに馴染めないのだ。

普通、キチ●イとか言われたら折れてると思う。

俺は慣れているから良いけど。


そんな俺の容姿。

黒髪の短髪の黒縁眼鏡。

それから中肉中背で身長168センチと低めの泣き黒子という感じでそれだけしか自慢出来る物しか無い様な凡人。


本当に凡人過ぎて逆に何だか.....と思う。

一応、先ほどの引き篭り状態から復帰した点は自慢出来るかもな。


でもそれだけじゃあ.....あまり自慢にならないか。

運動音痴でも自慢するか?

逆にバラエティとかで笑いでも取れそうだ。


さて、これら全てを要約すると俺は路傍の石とも言える。

容姿、コミュニケーション力、体力については本当に神を恨むぐらいだ。

頭脳については神様を別に恨んでは無いが.....いや恨みは有る。

取り敢えず.....頭脳もイマイチだ。


勉強を幾らしても学年10位圏内を行ったり来たりだ。

つまり.....中途半端な才能。

10位圏内だから良いじゃ無いかという声も有るが.....俺は良く無い。

何故か?それは簡単。


中途半端が嫌いなのと.....俺の義妹に舐められるから。

当初は仲が良かった俺の義妹に、だ。

社会復帰を促してくれたあの麗しい姿は何処に行ったのだ。


今の俺の義妹は路傍の石の俺を.....まるで本当に石の様に酷くこき使う。

まるで.....白石を地面に書き殴る様な。

それでいてまるで反省の色も無い。

何故そんな酷い事をする様になったのも分からないが.....とにかく酷い。


多分、思春期を迎えたからだとは思うけど幾ら何でもこき使い過ぎだと思う。

クラスで浮いているのはそれなりに対応が出来るから良い。

時間が来れば結局はさっさと立ち退けば良いし。


だが俺の義妹については一緒に暮らしているので色々な場面に遭遇する。

トイレとか、風呂とか。

最低最悪だと思っているかも知れないが一緒に生活すりゃそうなるもんだ。


さて、これらを踏まえ比較する。

趣味のラノベ持ってりゃクラスメイトは寄って来ない。


しかしながら俺の義妹は違う。

ラノベを読んでようが何をどうしようが俺に寄って来てゴミ扱い。

罵倒とかされるのだ。


そんな恨めしい俺の義妹の名前は、吉田皆穂(ヨシダミナホ)、という。

今の名前は伊藤皆穂だ。

3年前の俺が引き篭もっていた時まで仲が良かったが.....何かが狂った。

険悪な仲になってしまい、今に至る。


皆穂は体系が完璧、アルビノ故の銀髪、更に顔立ちも整い、Eラインも完璧。

更に言えば細い眉毛にキリッとした唇。

明らかな差が有るが、成績の面でも10位圏内以上の成績の優秀者で、15歳、生徒会委員と.....将来も安泰している様な感じの奴だ。

俺は.....この色々な恵まれている事に溜息を吐くしか無かった。


外弁慶じゃ無くて猛烈な内弁慶で有る、皆穂。

俺の事を当時と違ってゴミ扱いする。

何故なのか全く分からないが.....思春期のせいかと思っているが。


色々と.....マズいんだよな。

こけんとかに関わる。

先ず、そこの醤油取れ?とか言うし。


自分の近くに有るのに、だ。

俺はお前の小間使いでも召使いでも無い。

醤油を取る俺も俺だけど。


俺の扱いが雑過ぎて指名ばかりされているのは随分だ。

義兄として俺を見てない上にまるで手駒と。

絶対に許されないと思うのだが.....俺は逆に考えて皆穂は何故こうなってしまったのかって思う。

あの優しい顔は何処に行ったのだろうと。


でも何が有ろうと一応、俺は義兄だ。

何だと思っているのだと俺は宣言をしようと思ったりもするが。

皆穂は無視を繰り返している。


だから俺はそんな皆穂に溜息を吐いてばかり。

そんな皆穂についてこれまで話したが。

俺はここ最近、皆穂に何か違和感を感じている。

違和感ってのは.....簡単に言えば皆穂の行動がおかしいのだ。


思えばそれが起こり始めたのは1年前。

3年前では無いが、それでも3年前からしているんじゃ無いかって思える程の異常な行動.....をしているのでは無いかと思う。


ずっとコソコソしているのだ。

俺に対してもそうだが.....俺に関する事で色々とコソコソしている気がする。

明らかに一般の人の行動じゃ無いのだ。

俺は?を浮かべながら.....その光景を感じ取っていたが。


ある日、俺は遂に決心した。

兄の威厳を保つ意味でも.....アイツの秘密を暴こうと。

だから俺は.....学校で放課後に早くならないかと待っていた。


今日は偶然に皆穂が生徒会から呼び出しを食らったのを知ったのだ。

という事は放課後直後は皆穂は家に居ない。


何というか.....悪い事だとは思う、本当に、だ。

だけど.....これ以上我慢ならないのと.....不審な行動が目立つから俺は早く帰って行動の謎を解こうとした。


そして4月、俺は.....義妹の秘密を暴くべく。

証拠集めも有り、行動を開始した。

後で何か言われたらそれもプラスだ。

だって考えてみてくれ。


義妹に指摘されるのはつまり、不審な行動をせざるを得なかった理由を問いただせると思わないか?

だから俺は行動を開始したのだ。



物凄く遅い速度で放課後になった。

桜もこの前まで咲いていたのに完全に散ってしまった道を俺は早足で歩く。

急がないと義妹が帰って来るので。


花弁が落ちている道を歩き家に着く。

そして俺は玄関の電気を点けてから早速行動を開始しようと思った。

鞄をソファに投げ捨てて動き出す。


「すまないな。皆穂。だけどお前の為でも有るから」


呟いて俺は二階に急いで上がる。

この状態で一番証拠が密集している場所。

それはもう一つしか無い。


母親と俺の義父の由紀治さんは仕事に行っている為にこの家には俺一人。

これはれっきとしたチャンスだと思う。

皆穂に申し訳無いと思いながら俺は皆穂の部屋に入った。


女の子の部屋に勝手に侵入するのも如何なものかと思うが。

散々勝手な事をされたのでこれぐらいは許せよ。

と思った。


部屋にはパソコン、書物の棚、ぬいぐるみ、ポスターと貼られたり置かれている。

俺はそれを一瞥しながらパソコンを真っ先に見た。

この中には情報がたんまり入っているだろうけど.....パスコードが分からない。

情報も残るだろう。

無闇に触るべからずだな、と諦めて俺は部屋を見る。


本棚を先ず漁る。

しかしながら何も無く、ぬいぐるみを調べてみたが.....何も無かった。

壁も漁ってみるが隠し部屋なども無い。

何の変哲も無いぬいぐるみ、プリント、チラシ、教科書の棚と、何もかもが普通過ぎて何も無かった。


俺はこれじゃ駄目か?と思いながら別の場所に動こうとしたが。

予想以上に早く、皆穂が帰って来た様で。

下からゴトゴト音がした。

俺は慌てて本などを元の場所に戻しながら部屋のノブを握る。


何時の間にか時刻は16時半近くを回っていたのだ。

確か俺が帰って来たのは16時。

そりゃ帰って来るかなと俺は溜息を吐いた。


肉食動物が肉を取り損ねた感じだな。

俺はガクッと肩を落としながら部屋を後にした。

そして隣の部屋に移る。


帰宅が予想以上に早かった。

何の証拠も集まら無かったな。

今日こそは絶対にと思ったのに何も見つからないとは思わなかったな。


部屋の片付けも完璧に、完璧で.....凄いと思った。

でも何だか.....完璧過ぎて逆に気持ちが悪いな。

そこを怪しみながら.....二階に上がって来る義妹を見計らって下に降りた。



「.....勉強でもするか」


夕方の17時を回ったしな。

休憩してからお茶を淹れて上がって来たのだ。

そしてお茶を飲みながら勉強道具とスマホとイヤホンを取り出し。

ノートに数式を書き記しながら黙々と勉強を始めた。


勉強しないと脳が廃れる。

その様に.....俺はヒーローに教わったのだ。

勉強は大切だと。

義妹に勝ちたいという希望も有るけど、どっちかと言われたらヒーローの方が強い。


勉学もすっぽかして良い程、有能じゃ無い。

だからヒーローの教えに従って勉強している。

皆穂は暫く勉強しなくても頭に入るそうだ。

流石は天才だと言える皆穂を思いながら勉強をする。


学校は違うが、全学年成績5位圏内を行ったり来たりの皆穂。

あんなに勉強して無いのに何で5位圏内を行ったり来たりなのか。

それは.....努力の証なのだろうか。

それとも.....3年前のあの事件がきっかけなのだろうか。


「.....」


何れにせよ、と俺はその様に思いながらリスニングもする。

あの事件は関係無い、そうだ。

関係無いのだ。


因みにこの成績の事も.....皆穂に駒扱いされるきっかけになっていたりもする。

それだけが嫌で勉強をしている訳では無いけどな。

勉強しているのは.....俺があの場所に戻らない為だし。


俺は思いながら.....部屋の件を思い出す。

全くな、と頭をグシャグシャしつつ溜息を吐いて勉強を続けていると。

ドアがノックされた。


コンコン


「.....?」


「.....吉、私だけど」


「.....私.....え!?」


まさかだった。

皆穂.....!?

俺の部屋にノックって。


何時も無断で俺の部屋に入る癖にか?

なんで今日に限ってノックなんだと俺は思考を巡らす。

だがそれで時間を食った様でまたノックが聞こえた。

俺はすぐに慌ててドアを開ける。


するとそこにはジト目をした銀髪を煌めかせながら可愛い制服姿の.....皆穂が立っていた。

俺を睨む様に見ている。

流石の俺も睨みに睨み返すしか無かった。


「何だよ」


「.....アンタ、私の部屋に入ったよね?無断で」


「.....へ?い、いや?入って無いが.....」


「.....本当に?」


俺は慌てて答える。

何でそれを知っているのだ。

猛烈な勢いで睨む皆穂。

肉食動物が草食動物を捕食するかの様な感じで、だ。


いやいや、一体何故、バレている?

まさか片し損ねたモノが有ったのか?

俺は青ざめつつ首を振って否定をする。


そんな中、皆穂は俺の顔を見てスマホを取り出す。

それから何かを確認するなり、俺を再度、睨む様に見てくる。

今にも俺が狩られそうな勢いだ。

俺は冷や汗を吹き出しながら皆穂を見つめる。


「.....ふーん。でも私の部屋に入ると大変だから」


「.....意味が分からないんだが」


「入らないでって言っているの」


何だよコイツ、怖いんですが。

あの部屋に何か有るのか?

俺は眉を顰めて顎に手を添えて考える。


訳が分からん。

監視カメラでも付いているのか?あの部屋。

思っていると、義妹が俺に中指を立てた。

そして俺の目をまた睨みながら告げる。


「.....明日からまた働いてもらうから」


「.....」


何だか知らないが.....取り敢えずあの部屋には入らない方が良さそうだ。

でも何だか腹立たしいな。

そんな感じの表現をされると、だ。


踵を返してさっさと去って行く皆穂を見ながら俺はハァと息を吐く。

中指って.....女の子だろアイツ。

仮にも.....。


「.....」


しかし....いや、もしかしてだが。

普段から寒気がしていたのはあの部屋に何か有るせいか?

俺はその様に思いながら頭を掻く為に俯く。


そして廊下に生徒手帳が落ちているのを発見した。

俺は?を浮かべつつそれを拾ってみる。

何だコレは?皆穂のか?

俺はその様に思いながら生徒手帳を見つめる。


「.....」


生徒手帳を捲る。

その中に俺の写真が貼ってあった。

大きな写真で生徒手帳2冊分は有る様な。

折り畳まれている.....って!?

思いっきり目を丸くする。


俺の写真は次のページにも、その次のページにも貼られていて計4ページに貼られて.....いて.....何だこれ!?

いやいや、ちょっと待ってくれ。

何だこれ.....いや、何だこれ!?


「.....えっと.....え?」


ただ、それしか言葉が出なかった。

俺は書かれている氏名を確認するが.....これは間違い無く.....皆穂の、だ。

まさかの事に俺は???を浮かべつつ落ち着く為に部屋に戻って。

生徒手帳を机に置いた。


何だコレは.....?

頭が混乱してくる。

一体、何が.....どうなって.....?

アイツ俺を嫌っているんじゃ無いのか?

違うのか.....?


「.....一体.....」


そう呟いて.....唇を噛みながら静かに時計を見てから考える。

しかし、全くこの相反した状態の答えは出て来なかった。

と、そんな事を思った時だ。

扉が鳴らされた。


ドンドン!!!


「な、何だよ!」


まるで拳で部屋のドアを打ち破る勢いを感じれるノックで俺は変な声で返事した。

本当に変な声だったので、頬を少し赤くしながら思っていると大声が.....響く。

それも結構、怒った声だ。


「私の生徒手帳、知らない!!?」


「は?知らん!アホか!」


「.....」


俺よ、なんでそう答えるのだ?

この部屋に来た時の皆穂の目を思い出して恐ろしくてつい。

その様に答えてしまった。

暫く沈黙が有り、猛烈な舌打ちと共に去って行く音がする。


それから小さな声で何処で落としたんだろうとも聞こえてきた。

俺は側に有るアイツの生徒手帳を見ながら.....うーむと思いながら、椅子を動かして天井を見つつ考える。

だけどやっぱり答えは出て来なかった。


一体.....何がどうなっているのかも。

分からなかった。

何か事態が動いている気はしたが.....。

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