第48話 恋愛のベクトルが向く方とは

成宮に声を掛けられ首を傾げたその日。

その後は成宮にはまあ声を掛けられなかったが。

しかしながら放課後の帰宅後にリビングにて俺はノアと皆穂に責められていた。


何故、責められているのかって?

分かるとは思うが成宮の事だ。

その為に正座させられている、俺。


つうか、かなり足が痺れてきたんだが一体いつまでこの状態なんだ。

因みに何を責められていたかと言うと俺が女の子に告白されたという問題の議論だ。


話しているだけならまだしもだが告白は完全に逆なでしてしまった様だ。

本当に盛大な溜息しか出ない。


江戸時代の拷問だなこれ。

刑務所の受刑者っつっても良いかも知れんが。

俺は思いながら.....顔を顰めて言葉を発する。

目の前の仁王像の様な奴らに、だ。


「いや.....もう機嫌直してくれよ。お前ら」


「お兄ちゃん。そういう問題じゃ無いよ。告白されていたでしょ。最低」


「あのな.....」


仁王立ちをしてハイライトを消して俺を見てくる皆穂。

目が死んでいる.....つまり、ヤンデレモードだ。

その横では困惑しているノアが立っている。

何だこの光景。


って言うか脅しは通用しないぞ。

それにアイツは俺に対して一方的に告白してきた。

つまり俺は被害者なんだが.....。


「一方的に無理矢理に告白してきたんだぞあの女。俺と知り合ってない癖に、だ。だから大丈夫だって。断ったしよ」


「うーん。あの女、殺しても良いかな?」


「何を言ってんだ.....よくねぇよ.....」


冗談じゃ無い。

って言うか、マジに冗談に聞こえない。

それでお前が殺したらお前は殺人鬼扱いだぞ。

昔の事をぶり返すなよと俺は思いながら皆穂を見つめる。


「皆穂。本当に落ち着け。取り敢えずあの女は大丈夫だから」


「.....本当に?吉くん」


「お前も何だか皆穂寄りになって来てんぞ.....ノア。怖い」


え?と素っ頓狂な声を発する、ノア。

自覚無しか.....。

ノアも最近怖いんだけどよマジな話。


何だかヤンデレの様な感じになっている。

俺は思いながら溜息を吐いて.....立ち上がる。

そして皆穂とノアの頭に手を乗せた。

それから苦笑する。


「アイツはもう関わって来ないさ。な?」


「むー.....お兄ちゃんが言うなら」


「.....だね。皆穂ちゃん」


って言うか俺もあの女にはもう関わりたく無いんだが。

俺は思いながら苦笑する。

そうしていると.....俺のスマホが鳴った。

俺は見開いて画面を見る。


プルルルル


「電話?もしもし.....」


『あ、もしもし』


「.....」


何だか聞き覚えが有る様な声だな。

俺は思い、考える。

そしてハッとして思いっきり見開く。

こ、コイツ!?成宮!?


「お、お前!何で俺の電話番号知ってんだ!」


『.....調べた。と言うか.....ロックを解除した』


「ふ、ふっざけんな!.....ハッ!」


背後から猛烈な視線を感じた。

と言うか、死神の様な視線を、だ。

俺はぎこちない動きで確認する。

そして.....顔を引き攣らせながら苦笑した。


「お兄ちゃん。代わって。今直ぐに」


「.....あ.....えっと」


「代わらないと大変な事になるから」


「.....は、はい」


命が狩られそうな気がしたのと、皆穂の余りの威圧にとてもじゃないがスマホを渡さずにいられなかった。

俺はスマホを通話状態にしたまま渡す。

すると.....皆穂はそれを奪い取ってそして話す。

ノアも聞き耳を立てていた。


「もしもし。アンタ.....勝手に調べるとか何様?」


『.....貴方誰』


「私はお兄ちゃん。つまり伊藤吉の義妹の皆穂。調子に乗るとマジにぶっ殺すから」


『.....そんな脅しが通じると思う。吉くんに代わって」


コイツ何様?という感じで俺を見てくる皆穂。

そしてノアも、何この人?、的な目をしている。

すると成宮はそれを無視で更に言葉を続けた。


『私は吉くんだけと話したいから。代わって』


その様な言葉が放たれた瞬間。

ブチッと皆穂は思いっ切り通話を切り。

そして俺をヤンデレの目で見つめてきた。

レイプ目と言えるかもだが。

恐怖で俺は竦む。


「お兄ちゃん。次、話したら数人さんに頼むから監視を。マジに」


「.....あ。はい」


それからポイッと携帯を投げてくる、皆穂。

俺はそれを受け取ってからハァと息を吐いた。


皆穂は飲み物を取りに行った。

一体、何を考えているんだ成宮は。

俺の電話番号を.....って。

まるで俺の全てを知りたい様な.....まさかな、hahaha。


「吉くん」


「.....どうした」


「揺るがないで」


「.....」


つまり、私達以外を恋愛対象に見ないで。

その様にノアは言っているのだろう。

不安そうな目で俺を見てきている点も考えて、だ。

心配している様だ。


「.....ノア。勘違いしてもらっては困るが、俺は.....成宮を恋愛対象に見てない。だから安心しろ」


「.....本当に?」


「ああ。マジに。って言うか俺は.....恋愛は.....暫くしないつもりだから」


「.....うん。約束だよ」


ノアは心配な顔で小指を立てて差し出してくる。

指切りげんまんか。

思いながら俺は頬を掻いてノアと指切りげんまんした。


丁度その時に皆穂が戻って来て俺達を見つめた。

目を丸くして、?、を浮かべている。


「どうしたの?」


「何でも無いよ。皆穂ちゃん」


「.....」


俺はノアを見ながら.....小指を見つつ。

顎に手を添えて考える。

そして.....何でアイツが突然俺に告白したのを考えたが全く分からなかった。

取り敢えず.....明日、アイツがまた迫って来たら。

対応してお断りしよう、色々と。


「お兄ちゃん」


「.....どうした。皆穂」


「約束して。恋をしないで。そんな女に」


「.....」


悲しげな顔をする、皆穂。

その言葉に俺は見開く。


本当にノアも皆穂も俺を大好きなんだな。

全く同じ事を言われるなんて思って無かった。


こんな俺を愛してくれているなんて.....だ。



この世界な雨が、大雨が降ったとして。

皆んなは.....ノアと皆穂という傘は俺を守ってくれる。

俺は.....その傘を風で壊さない様にしないといけないのだ。

それが.....俺の役目で有り.....最大の使命で有る。

そしてそれが.....最大の恩返しだと思っている。


「お兄ちゃん。早く早く!」


「.....おう。あまりはしゃぐなよ?.....ったく.....」


「吉くん。早く」


笑顔を見せながら走る皆穂とノアを見ながら。

俺は眉を顰め、その理屈を考える。

そう.....俺は勇敢なヒーローの二代目なのだ。

だからいつかは.....告白を受ける。


『無理はするなよ。吉』


その様な声が聞こえた気がした。

親父の、だ。

俺は.....その言葉を胸に今日も歩く。

今日という、素晴らしい日を。


「吉くん」


「.....!?.....お、お前!?」


「成宮.....」


曲がり角で出会ってから。

一気に皆穂から楽しげな表情が消えた。

俺は青ざめながら皆穂を見つめる。

しかしながらそれすら気にせず、成宮は言った。


「吉くん。考えてくれた」


「.....答えを言って良いか。成宮。俺は.....お前と付き合えない。身勝手な野郎とは特に、だ。だから諦めてくれ」


「.....そう.....」


悲しげな表情をする成宮。

俺は.....その表情を確認しながら.....皆穂とノアを見た。

そして通り過ぎようとした時だ。

成宮が俺に呟いた。


「実は.....その、わた、私、本当は吉くんが好きなわけじゃ無いの」


「.....へ?」


流石に足が止まってしまった。

皆穂とノアも!?を浮かべながら成宮を見ている。

成宮は震えながら.....俺を見て.....俯いた。

そして.....拳を握り締める。

ちょ、ちょっと待ってくれ、何だって?


「私、実は.....その.....数人くん。.....数人くんが本当は好きで.....その為に外堀を埋める為に貴方に接近したの.....だから.....利用した事は謝る。御免なさい.....!」


「.....!?.....え!!!?」


理解するのに1分近く掛かった。

まさかの事に余りに驚愕だ。

俺は顔が引き攣る。


ど、どういう事だ!?

俺は愕然として成宮を見る。

成宮はボッと赤面して.....数人の盗撮写真だと思われるものを見つめた。


「数人くん.....愛しい.....人.....!」


「.....」


写真を見つつハートマークを空に向かってポワポワ出しながら身悶える成宮を見ながら.....俺は唖然とする。

何だコイツ.....と顔をまた引き攣らせ、思ってしまった。

かなりドン引きなんですけど。

皆穂とノアもそれ相応にドン引きだった。


『.....僕に何の用かな』


突然、俺のスマホが反応した。

そして数人がドン引きした様な声で話す。

成宮はハッとして.....俺に向いた。

こっち見るなよ。


「数人と話せるの?」


「えっと.....うん、まぁ」


「じゃあ話させてくれない」


「.....え?.....あ、その嫌です.....」


この女に.....数人を紹介をするのはいかがなものか。

俺の親友に手を出すのはちょっと.....と思いながら俺は手を振る。

すると.....数人が俺の代わりに話した。

スマホから声を出しながら、だ。


『僕は君に会いたく無い。申し訳無いけど.....人が苦手な部分も有る』


「.....え.....」


『それから君、行動がおかしいから』


「いや.....そんなにおかしい」


数人が、え.....え?、と言った。

そうだな、数人の代わりに言うなら.....おかしいと思います。

って言うか.....よくよく思ったけどいつまで俺は成宮の相手をしなくちゃいけない。

俺は思いながら.....スマホを見て成宮に向いた。


「.....成宮。取り敢えずは学校に行くぞ。遅れる」


「.....そ、そうですね.....えへへ」


「.....えっと.....」


へ、変態.....が居る。

俺は額に手を添えて盛大に溜息を吐いた。


このままでは本当に遅刻する。

俺は思いながらノアと皆穂を見てから。

頷きあって走りながらそのまま学校に登校した。


因みにその日。

数人は一応、遅れて登校してきた。


寄って来る成宮に少しだけ引いていたが、悪い人じゃ無いと判断した様では有った。

数人と成宮を見ながら知ったのだが、成宮は昔。


実際に会った訳じゃ無いが小学生の時に友達関係のいざこざの件で同じクラスの数人に助けられたそうだ。

あの性格だしな、キツくは行ったんだろうけど。


それで好きになったらしい。

取り敢えずは俺は見守る事にした。

数人と成宮の状態を、だ。


しかしながらその能天気な事をしているうちにまた問題が起こった。

何が起こったかと言われたら。

数人が好きな.....吉武先輩の事だが.....。

こうなるとは予想していたのに、だ。

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