第49話 将来の夢 プログラマー

「数人に.....女の子が近寄っているって聞いたんだけど?」


「.....そ、そうですね」


「.....そうですね」


放課後、部室に吉武先輩に呼び出された俺、ノア、皆穂。

俺達は苦笑しながら目の前でポ○キーを10本ぐらいを纏めてボキッと折りながらガリガリ音を立てて食べる吉武先輩を見る。

その、吉武先輩には申し訳無いんだけど威圧が半端じゃ無い.....。

するとそのポッ○ーを使って俺を指す。


「何でかな?そんなに数人.....女の子に好かれやすいかな?」


「.....そ、そうですね。違うと思います」


「後輩だからって絶対に許さないぞ.....おのれ成宮.....」


フフフと笑う、吉武先輩。

女の子の嫉妬って相当なもんだと思う。

簡単に言うなら.....不良に絡まれる以上に.....怖い。

それはもう経験したので。

俺は苦笑いしか出来なかった。


「吉武先輩の為なら何でもしますよ?ね?お兄ちゃん」


「お前のそのナンデモは絶対にいかん方向だと思うから駄目」


「えー.....」


殺すのはナシだぞ。

それやったらマジで犯罪だ。

つまりそれ以外に方法を.....と思っていると。

ドアが開いてそして数人が現れた。

数人は?を浮かべている。


「.....どうしたの」


「.....いや。成宮の件について話してたんだ。お前が絡まれているから」


「.....ああ。その事。でも僕は誰とも恋愛をする気は無いから大丈夫。それに優香、以外は特別じゃ無いから。知り合いとして止めている」


「数人.....」


少しだけ赤くなりながら、優香。

つまり吉武先輩は反応する。

部室を見渡しながら、数人は少しだけ柔和な顔をした。

それから言う。


「でも何度も見返しても変わらない部室で嬉しいな。僕。優香。有難う」


「うん。数人の為だと思ってね」


「.....そう」


そう呟いて、俺を見て来る数人。

俺は?を浮かべる。

すると数人はこう言葉を発した。

プリントってか、紙を取り出して、だ。


「ところで.....ちょっと聞きたいんだけど.....三者面談.....吉は将来の夢とか有るの」


「ああ.....俺?.....俺の将来の夢はな。スクールカウンセラーだ」


「.....スクールカウンセラー?」


「そうだよ。俺はお前とか皆んなを見ながら.....考えたんだ。で、将来はそうなりたいって思ったんだ」


数人はもう一度、プリントを見る。

三者面談の日程表だと思われる、紙を、だ。

そして何かをシャーペンで記入し始めた。

俺達は顔を見合わせて数人に聞く。


「何やってんだ?」


「.....吉と同じ場所に行こうかと思って」


「いや.....え.....」


俺と同じ.....でも。

それは意味無いぞと思いながら数人に向いた。

そして苦笑する。


「俺と同じ場所は駄目だ。お前は.....将来をしっかり考えないと」


「.....でもそうは言われても何も思い付かない」


「そうなのか?」


「僕は夢とか希望とか持てるタイプじゃ無かったからね」


その様に言ってから紙をグシャッと掴む、数人。

いかん、なんか険悪な感じになってしまった。

俺は話を切り返そうとする.....が。

その前に吉武先輩が立ち上がって言った。


「数人。将来、プログラマーになるって.....」


「.....何時の話をしているの。優香。僕は天才でも無いからプログラマーにはなれないしね」


俯きながら話す、数人。

紙を更にグシャグシャにした。

吉武先輩は、あ、と呟いてそのまま黙り込んだ。

そんな数人と吉武先輩に俺は話す。


「.....プログラマー。良いんじゃねぇの?数人」


「.....え」


「.....よくは知らないけど、確か資格の仕事だったよな?だったら安定しているし、お前、そういうの得意じゃないか。安定は大事だしな」


「.....本当にそう思う。吉」


そうだな、と同意を求めた。

皆穂もノアも頷いている。

柔和な顔だ。

そして俺は前を見た。


「.....数人。将来の夢って好きな事で良いんだぞ。昔の事を.....思い出さずに今は前だけ見たら良いんだ」


「.....でも僕は.....引き篭もった。これ以上、親父に迷惑は.....」


そこまで呟いて.....数人はシャー芯を折った。

複雑な顔をしながら居ると。

背後から声がした。


「.....親御さんはきっと好きな事をしたら良いと思うよ」


ノアだった。

一言、数人にそう言ったのだ。

俺は見開きながらノアを見つめる。

ノアは胸に手を当てた。

そして優しげな顔で数人を見ながら言う。


「どれだけ無理なお願いでも親は支えてくれる可能性が有る。それが親なんだよね。例えば私が外国に行こうとした時も.....私が行きたく無いってわがままを聞いてくれたの。そして今もずっと養育費を払ってくれている。今は.....頼って良いんだと思うよ。数人さん」


「.....そうなのかな」


「ノア.....」


俺は少しだけ.....嬉しくなった。

ノアがその様に数人に言ってくれたのに、だ。

俺じゃ説得出来なかったかもだから。

数人は.....シャーペンを握ったまま.....真正面を見る。


「.....数人。大丈夫だ。今は一歩を踏み出す時だと思うぞ」


「.....そうなのかな.....でも僕は.....あれだけ他人に、親父に.....」


俯いて歯を食い縛っている様だ。

俺はそんな数人のシャーペンを数との手ごと握った。

そして皆んなも集まって来る。

気が付くと廊下に鹿島先輩、小町先輩も来ていた。

見守っている。


「.....吉」


「夢はでっかく、だな。みんな」


「うん」


「だね」


そして大きく、こう紙に書いた。

数人を支えながら、だ。

指を動かす。


将来の夢 プログラマー


と、だ。

これで良いんだ。

数人がなりたいものを.....書く。

俺は.....数人の顔を見ながら、そう思った。

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