第37話 由利、彼女の心に有るモノ

相澤由利(あいざわゆり)。

母さんが勤めている会社の社長さんの娘さんだと聞く。

俺は.....そんな由利にお気に入りに指定されてしまっていてそして、好かれていた。

何故かと由利に聞くと、簡単に言えば俺が優しそうだからという事だ。


俺は由利と共に俺の部屋に居た。

全く.....幼女に好かれる俺じゃ無いんだけどな。

そして.....このままでは皆穂が.....俺をマジに殺すかも知れない。

ホルマリン漬けってのも考えられる。

絶対的にマズい気がする。


因みに皆穂とノアからは変な事はしない様にってキツく言われているが.....皆穂が我慢出来るのだろうかこの状況に。

俺は苦笑気味に思いながら.....由利を見る。

由利は漫画を読んでいた。


「.....由利。お前さ.....何時までこの家に居るんだ?」


「うーんとね、3日!」


「.....マジか.....」


参ったな.....俺はその様に考えながら頭に手を添える。

由利はニコニコしながら俺を見ていた。

何てこったい.....三日か.....。

マジに困ったな。


「あ、おにいちゃん。明日、デートして!」


「.....それはちょっと無理が有るぞ由利.....」


「デート無理?」


「.....そうだな。お前はまだ若いから」


じゃあ、私のお母さんのお墓に行かない?

と由利は言った。

え?お墓って.....俺はノートから顔を上げて、ベッドに寝そべっている由利を見る。

何だ.....?お墓って.....。

俺は少しだけ冷や汗を流して固まる。


「.....お母さんのお墓。お母さん.....私を護って車に轢かれちゃったの。私が幼い頃に」


「.....お前.....」


「.....でも泣かないって決めたの。私は.....強くなるって」


「.....」


父親に育てられたのか。

俺は.....その様に思いながら考える。

俺と境遇が.....正反対だな.....。

そう思いつつ、由利を見る。

由利は少しだけ寂しげな顔をしていた。


「.....だから学校でも一人なの」


「.....!」


「.....皆んな私を.....気持ちが悪いってイジメるの。でも泣かないの」


「.....」


なんだろう。

親近感が湧くとかじゃ無い。

この子は.....俺とは.....違って.....強い。

そんな風に見える。


「.....だからおにいちゃん。一緒に行ってくれない?」


「.....分かったよ。お前のお母さんに会いに行こう」


「本当に!?やった!」


由利はベッドで跳ねる。

俺はそれを落ち着かせながら、苦笑した。

そして.....思う。


泣かないって決めたの


俺は.....由利をこの先どう見たら良いのだろうか。

そして.....どう.....接したら良いのだろうか。

その様に思いながら、明日を見据える。


「.....由利」


「.....何?おにいちゃん」


「強いな。.....実は俺も.....父さんを失ったんだ。俺は.....その事で閉じこもったんだ。だから.....それをしなかったお前は強いよ」


「.....おにいちゃん.....」


由利.....か。

俺は彼女を見つめる。

彼女がどれだけ苦しんだか俺は全てが分かる。

だから.....今の状況を.....少しだけでも打開してあげたくなった。


「.....由利。学校生活は大丈夫か?結構.....気になるが」


「?.....あ、大丈夫だよ。私、強いもん。泣いてないしね。ここ最近」


「.....泣いてない?」


「.....うん。何時しか涙が無くなっちゃったの。だから便利だよ。色々と。もう二度と悲しい思いをしなくもなったしね。悲しい気持ちとかも無くなっちゃった」


感情が.....不安定なのか?

涙が流れないなんて.....ってそう言えば何時もニコニコしているよな。

俺は.....眉を顰めて由利を見据える。

由利は.....俺をニコッと笑みを浮かべて見ていた。


感情が篭ってない気がした。


純真無垢な.....笑みでは有るが。

俺は眉を顰め、心で決めた。

その事で、だ。


「.....涙は必要だ」


「.....え?どういう事?おにいちゃん」


「.....お前は.....多分、感情を押し殺しすぎているんだ。だから.....泣かないんだ。その爆弾は.....何時か爆発する。感情の時限爆弾の様な感じだが.....」


「.....???」


訳が分からないという顔をしている。

そうだろうな、小三だもんな。


だけど俺には分かる.....俺が経験したから。

この状態は.....非常に非常にマズい事を。

爆発して精神が壊れたら。


それこそ、彼女の性格の終わりだ。

俺は.....彼女の手をそっと握る。

そして.....見つめた。


「由利。簡単に言うとな。お前の感情を.....外に発散しないとマズいんだ。笑ってくれ。泣いてくれ。怒ってくれ。そう出来る様に.....俺達が.....お前を救ってやる」


「?.....え?」


「.....楔を壊すんだ。楽しい事をずっとずっとしような」


「.....うーん。分からないけど、分かった!」


悲しい気持ち。

怒る気持ち。

笑う気持ちなどなど。

俺は.....それらが吐き出せないといかに苦しいか.....分かる。

だから.....俺は.....由利を救わないといけない。


『困った奴が居たら.....手を差し伸べろよ』


「親父.....」


由利は?を浮かべながら俺を見る。

そして俺は由利の手を握って、立ち上がらせた。

笑みを浮かべて、見る。


「.....何か欲しい物とか有るか」


「.....え?うーん.....えっと.....あ、そうだ.....リカちゃんとか.....!」


「.....じゃあ買ってやるよ。貯金有ったしな」


感情を上手くコントロール出来ない由利。


俺は.....彼女を救う。

同じ境遇の彼女を.....救いたい。

そう、思った。

病院でもきっと治せない。

その様にも.....思ってしまった。

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