最終章、全知全能、容姿端麗の義妹

第58話 卒業式

思えばそれは長旅だった気がするのだ。

何が長旅かと言えば、本当に色々な経験の、だ。

今俺は.....目の前の胸元に花を着飾った現校長の話を聞いている。

だけど校長の話も今日で最後だ。

俺は少しだけ寂し気持ちに包まれながら話を熱心に聞く。


最後ってどういう事か?

それは簡単だ。

三年生の春を迎えた俺は.....もうこの学校を卒業するのだ。

それは.....数人も同じだ。

留年が無かっただけでも本当に良かったと俺は思う。


和久田との争いから約一年経った、歌の曲名になっている様な三月九日の日。

俺も数人も高校三年生に成長した。

身長も.....精神も伸びた気がする。

この一年もまた複雑な日々だったが思った以上に早く過ぎて行き。

ただ俺達は流されるままに卒業の時期を迎えたのだ。


でもこの一年も.....本当に色が付いた日々だと思うのだ。

俺と数人、この校舎で、教室で、そして自宅などでの懐かしい日々。

何だか今思えば.....全てが懐かしい。

まあ、二年生の時にも本当に色々有ったけど。


でもそんな感じで色々有っても時計の針は止まる事無く進む。

だから.....俺は.....水の流れの様に流されるままだったのだ。

卒業証書と筒を持って俺は外から目の前の教室の並びを見る。

一階二階三階に目を通しながら.....思う。


確かに俺は.....人よりかなり劣っているかも知れない。

確かに俺は.....人よりかなり青春をしてないのかも知れない。

確かに俺は.....人よりかなり日常を送れてないのかも知れない。


それらを纏めて言うなれば.....そうだな。

多分、俺は寂しい人生を過ごしていると思われるのかも知れないけど。

だけど.....俺は本当に良い人生を送っている。


そして良い人達に俺は囲まれている。

俺は.....幸せ者だ。

この地球上の誰よりもきっと幸せ者だ。

きっと親父も安心して眠れるだろう。


思いながら俺は次に横に有る体育館を見上げる。

すると卒業生達や保護者達でザワザワしている中で背後から声がした。

俺は馴染みの声に柔和な顔になって振り返る。

それから見つめる。


そこには私服、制服、スーツ姿と人生もまさに色々有るんだよ、と言わんばかりの姿の何時もの人たちが居た。

その人達が聞いてくる。


「.....吉。どうしたの?」


「吉さん」


「吉くん」


「吉」


その場所に居たのは。

吉武さん、小町さん、鹿島さん、そして由紀治さんに母さん。

それから.....数人に灯篭さん。


更に言えばノアに.....皆穂。

一部を除いてだが、皆んなが勢揃いだった。

俺は笑みを浮かべて聞く。


「.....どうしたんだ?皆んな」


「どうもこうもボーッとしているからね。な?皆穂」


「そうですね。吉武先輩」


「皆穂。私はもう在校生じゃ無いぞ!あはは」


吉武さんはその様に言いながら笑顔になる。

ああ因みに.....漫画、アニメ部に関しては後輩達が入って来てその子達と、皆穂とノアが会長、部長を引き継いだ。


俺はその事には本当に嬉しく思っている。

でも本当に昔の皆穂だったら有り得ないけどな。

と思いながら苦笑する。

すると皆穂が?を浮かべて聞いてきた。


「.....吉さん?」


「.....あ、ああ。何でも無いよ。皆穂。ごめんな」


こんな事を察されたら大変だ。

思いながら誤魔化して謝罪しながら空を見上げる。

しかし.....今日は快晴だな。


俺は黄昏る様にしながら少しだけ笑みが浮かべる。

そして.....皆穂達を見る。

皆穂は俺に笑みを浮かべた。


「.....本当に.....相変わらずだね。吉さん」


「まぁ.....俺は考え込みやすからね」


「ガッハッハ。まぁそれが吉だしな!」


相変わらずの高身長の鹿島さん。

腕を組んで高笑いで言う。

俺はその言葉に笑みを浮かべる。

そして.....校舎側を見ながら顎に手を添えて考える。


さて、この後はどうすっか。

卒業式は終わって、教室に集合はさっきした。

つまり、フリーになってしまったが。

思いながら居ると由紀治さんが俺を見てきた。


「だったら皆んなでご飯を食べようじゃ無いか。美味い店を知っているんだ」


「由紀治さん.....さっき朝ご飯食べたじゃ無い.....」


「そう言うなよ。西子さん。確かに昼前だけど.....でも何か食べたく無いかい?皆んな?」


「「「はい!」」」


俺は苦笑しながらその光景を見守りながら思う。

卒業式も終わった。

この後は目標の大学へ入学だな。


思いながら.....俺は校舎を見る。

あばよ、俺のそれなりの青春。

そして.....あばよ.....先生達、同級生。

思いながら少しだけ涙を浮かべた。

拭いながら呟く。


「.....でもいざとなると本当に別れ惜しいな」


「.....そうだね。吉さん。私も卒業したら.....寂しくなるのかな?」


「.....そうだね.....皆穂ちゃん。あはは」


ノアも賛同しながら笑みを浮かべて頷く。

その中で、でも本当に吉さんが居なくなって本当に寂しい、と皆穂は苦笑いをした。

俺はそれを見ながらニヤッと口角を上げつつそして皆穂の頭をガシガシする。

皆穂は俺を見ながら髪の毛を戻しつつ涙目になる。

そして文句を言ってきた。


「ちょっと.....何するのぉ!?」


「安心しろ。大丈夫だよ皆穂。昔のお前じゃ無いしな。.....今のお前なら.....きっと乗り越えられるさ。この寂しさはな。昔のお前じゃ無いから.....」


「.....吉さん.....」


俺は、な?、と話した。

その事に皆穂は少しだけ嬉しそうな感じで俯く。

すると周りが茶化してきた。

フーフー!とか煽りながら、だ。

数人と灯篭さんと由紀治さんと母さんは苦笑いを浮かべる。

俺達は赤面した。


「ちょ、ちょっと.....」


「いやいや.....勘弁して下さい.....」


俺達も苦笑いを浮かべながらその様にワタワタする。

その様子の俺達の間に、ハイハイ、とノアが邪魔する様に言葉を発した。

それから.....皆さん行きますよ、と文句を言いながら頬を膨らませる。


「.....もう。吉くん。デレデレしないで」


「ノア.....分かってるよ」


そう溜息混じりに答えながら俺はスマホを取り出す。

最後の写真を撮ろうと思うのだ。

皆んな並ぶ中、俺が中央に来てから。

そしてピースサインで写真を撮る。

そうしていると由紀治さんが俺の頭を撫でた。


「.....本当に高校卒業おめでとう。吉くん。数人くん」


「.....有難う御座います」


「.....はい。有難う御座います、由紀治さん」


笑顔を浮かべている由紀治さんにお礼を俺は言って。

そして数人も控えめに言う。

にしても本当に卒業出来るとは思わなかった。


それなりに.....色々有ったから、だ。

後は夢に突き進んで行くだけだな。

スクールカウンセラーになる夢に、だ。


「.....じゃあ皆んな。.....行こうか」


「そうですね」


そして俺と数人は.....後ろの高校の校舎一礼して。

そのまま由紀治さんのお勧めのレストランとやらに食事をしに向かった。


その中で、有難う、先生。

そして.....有難う校舎。

と、思いながら.....俺は目を閉じて笑みを浮かべた。


本当に.....三年間、お世話になりました。

俺は.....その様に思いながら。

また涙を拭った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る