第46話 数人の学校復帰

数人と知り合って結構になる気がする。

実際はそんなに経ってないけど。


俺は知り合って良かったと思っている。

数人のお陰と。

皆穂とノアのお陰で。

みんなのお陰で将来の夢が出来たし。


学校のカウンセラーになりたい。

スクールカウンセラーに、だ。

その様な夢が、だ。

俺は.....そのスクールカウンセラーの夢を叶える為。

必死に勉強をしようと思っている。


今も相当に勉強はしているが、専門の勉強がしたいと思っている。

その事を.....三者面談の時に相談しようと思っている。

夢を諦めず、頑張りたい。


その夢は例えば。


砂粒の様に細かくて手から滑り落ちる程であっても。

流星の様に.....掴めなくても。

手を離してしまい届かなくなった風船の様になっても。


何時かは.....掴んでみせる。


その決意で.....今日も学校に向かう。

午後から数人が来る事になるが.....上手くいくと良いが。

色々と.....不安が有る。



キーンコーンカーンコーン


「.....さて.....昼か.....」


相変わらずクラスで浮きっぱなしの俺は盛大に溜息を吐きながら。

俺は.....外を見つめる。

数人が校門をくぐって来るんじゃないかって。

期待しながら待っている様だな、俺。


ガラッ


「お兄ちゃん」


「吉くん」


「よお。お前ら」


手を上げる、俺。

相変わらずの大切な奴らが。

顔を見せて俺の元にやって来る。

その様子を見ながら俺は和かに反応する。


「「お弁当作ってきた(よ)」」


「.....へ?」


声がエコーした。

俺は目をパチクリしながら見る。

すると皆穂が苦笑した。

ノアも苦笑する。


「.....ノア。アンタはすっこんでなさい」


「.....皆穂ちゃんだって」


「.....お前ら.....二人で弁当作って来たのか?同じ台所だろ」


「「時間差だと思う」」


時間差て。

俺は頭に手を添える。

そして.....盛大に溜息を吐いた。

何てこったい。

二人は意気投合しているが.....互いに敵視している。


「.....お前ら、弁当食うから。二人分」


「.....それじゃ駄目だよ。お兄ちゃん」


「そうだね。ごっちゃだと味が分からなくなっちゃうから」


ムー!と言いながら。

バチバチと火花を散らす、二人。

俺は顔を引き攣らせて.....そして溜息を吐いた。

いや.....もうどうしろってんだ。

その様に思っていると。


プルルルル


「.....?.....はい?」


『もしもし。僕だけど』


数人からの電話だった。

相変わらずの細々とした声だ。

俺はびっくりしながら数人に答える。


「おう。数人か?どうした」


『お弁当作ったから持って行く。食べて』


「.....え.....」


『何。その反応。要らないの』


ムスッとした声がする。

いやその、要らないって.....訳じゃ無い。

でも.....弁当が.....3つになるんだが。

俺は.....青ざめた。


「.....弁当.....量ってどれぐらい?」


『.....は?結構いっぱい作ったよ』


「.....」


不幸だ。

俺は思いながら目の前を見ると。

ノアと皆穂が俺を見ていた。

そして.....どんな感じ?という感じで待っている。


「.....数人は元気そうだ」


「良かった。数人さん.....来れるんじゃ無いかな」


「そうだね」


にしても弁当3つ.....どうしたもんかな。

俺は苦笑いで.....見つめる。

すると、教室の外に吉武先輩が立っていた。

俺を見ながら笑みを浮かべている。

どうやら俺を呼び出したいらしい様だが。


「悪い。ちょっと行って来る」


「分かった」


「うん、待っているね」


そして吉武先輩の元に向かうと。

俺を見て吉武先輩がびっくりしていた。

何を驚いているのだろうか?

と思っていると、答えが直ぐに分かった。


「身長、伸びたな。吉」


「.....あ、そうっすね。5センチは」


「まぁ成長期だからな。あ、えっと、私がやって来たのは.....お前に感謝を伝えたくてな。数人の件といい」


「.....ああ.....」


でもお礼をされる事は何もして無いですよ。

俺はその様な感じで言う。

すると吉武先輩は持っていた鞄から何かを取り出した。

チョコレートの様なものを。


「これは感謝の印だ。受け取り.....」


「お兄ちゃん!?」


「吉くん?!」


「うお!何だお前ら!」


吉武先輩が驚いているだろ!

いきなり声を上げんな!

俺は驚愕しながらツッコミを入れる。

二人はそれどころじゃ無い感じだった。


「チョコ.....ってどういう事!?まさか.....吉武先輩も口説いたの?!答えて!」


「お・に・い・ち・ゃ・ん?」


吉武先輩が顔を赤くする。

いや、誤解が誤解を生んでます。

違うからな、お前ら。

俺は否定しながら見る。


「あのな!この手作りチョコはお礼だっつの!落ち着け!」


「ふーん」


「.....ふーん?」


何だそのジト目は、よ。

俺はまたも溜息を吐いていると。

クラスの奴らが驚きながら廊下を見ていた。

俺は?を浮かべながら吉武先輩を見る。


一点をまるで射抜く様に見ていた。

俺は振り向いて確認する。

そこに有ったのは。

俺が心から.....待ち望んでいた光景だった。


「.....お前.....」


「.....吉。おはよう」


制服姿の髪を結った数人だった。

相変わらず男じゃ無い様な感じの顔立ちに。

俺を柔和に見据えている。

衝撃を受ける。


「数人さん!」


「数人!?」


まるで有り得ない物を見た様な感じだったが。

驚愕しながら.....も歓迎していた。

特に.....吉武先輩は泣いて。

そして数人に縋った。


俺も少しだけ笑みが漏れる。

そして俺は言った。

この一言を、だ。


「お帰り」


「.....ただいま」


恥じらいながら答える、数人。

こうして.....その日から数人がまた学校に何とか通える様になり。

俺の友達は.....必死に頑張って来てくれた。

嬉しくて.....涙が溢れる。


そして数人は俺のかけがえの無い友人となった。

まだ先は長いかも知れないけど.....超えれる。

そんな感じだった。

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