第五章 欠陥の義妹

第24話 欠陥の義妹

この街の大きな総合病院で俺は2日ぶりに目が覚めた。

俺が気絶した後に何が有ったかと言うと。

あの後ノアが呼んだ、パトカー、救急車が来て。

そして倒れている俺と皆穂を保護。


皆穂も俺も倒れていたそうだ。

富山、アイツについては緊急逮捕らしい。

捕まったそうだ。


俺は.....包帯が巻かれた頭で総合病院の病室に居た。

目の前に座ってニコニコしている皆穂を見る。

ただの皆穂に見えるかも知れない。


だけど問題が起こった。

俺を殴ったショックで.....記憶が飛び。

そしてヤンデレが酷くなったのだ。


つまり.....今まで積み重ねてきた全てが。

崩れ落ちた瞬間だった。

俺は皆穂を見つめる。


「.....皆穂。ノア.....を知っているな。俺がもし、ノアとくっ付いたら.....どうなる」


「その時はその時だけど、状況によっては片付けるよ」


何と言うか、この有様である。

俺は.....頭に手を添えていた。

何だろうか、どうしたら良いのだろう。

皆穂と俺の絆が.....どんどん狂っていっている気がした。


「.....お前は.....皆穂だよな。女は嫌いか」


「そうだね。お兄ちゃん」


「.....」


ニコニコしているが。

ノアを嫌悪し。

そして.....部活の事も全部忘れて曖昧になっている。

俺は.....端的に言うと悲しかった。


全部がおじゃんになってしまった事に。

富山のヤツを俺は許さないだろうな。

これは絶対に。


コンコン


「皆穂ちゃん.....吉くん」


「ノア.....」


またアンタか的な目を向ける、皆穂。

お前の幼馴染にそんな目を向けるなよ。

俺はその様に思いながら、フルーツを持っているノアを見た。

ノアは.....ビクビクしている。


「.....み、皆穂ちゃん。私の事.....嫌い?」


「嫌い」


「.....」


ノアには警戒しながらこのザマだ。

俺は.....頭に手を添えた。

問題はこれだけじゃ無い。

京子を恨み辛みで見ているのも問題だ。


つまり、全てが真っ白。

白紙で有る。

俺は.....どうしようと頭に手を添える。


「.....取り敢えず.....数人の件は置いとこう。問題は皆穂だ」


「.....そうだね。吉くん.....」


ノアは悲しげな表情を浮かべた。

だろうな。

ノアの良い点を全て忘れられているのだから。

何でこんな滅茶苦茶になっちまったのか。


「.....お兄ちゃん。その女、放って置こうよ」


「そういう訳にはいかないんだ。皆穂」


「何で?じゃあ殺したら良いの?」


「.....お前.....」


ノアがビクッとした。

俺は.....その言葉を聞きながら、訂正を求めたが否定した。

頭に手を添える。


すると病室の扉が開いて.....お医者さんが入って来た。

中年の丸メガネのお医者さんは言う。


「.....やはり駄目ですか?」


「.....そうですね。良い点の記憶が無い。と言うか.....ショックで記憶が穴だらけになっています」


「ショックとは一時的なものです。でも.....そうですね.....記憶を思い出させる努力は惜しまない方が良いでしょうね」


「.....」


最も悔しいのが.....皆穂とノアの絆が破壊された点だ。

俺は.....その点が.....悲しい。

だから仲良くしてくれと言っているが.....全然駄目だ。

俺は一体、何をしに生きて来たんだろうな。


「落ち込むかもしれませんが、サポートは大事ですよ」


「.....ですね」


「.....そうですね」


また後で来ますね。

その様に言い残して、お医者さんは去って行く。

と同時にメッセージに.....吉武先輩からメッセージが入って来た。


(皆穂は.....)


(駄目っすね。全部、滅茶苦茶です)


(.....私のせいだね)


(何でですか?)


何でそんな事を.....。

俺は見開きながら、メッセージを見る。

すると、メッセージが来た。


(私が.....行かせなければこんな事に.....富山とは.....バスの中で出会ったんだよな?)


(そうっすね。でも先輩のせいじゃ無いですよ。先輩は何も.....悪く無い)


(.....私がしっかりしないと。.....今度そっちに行くから)


有難う御座います。

その様にメッセージを入れて、スマホを閉じた。

そんな目の前の皆穂はハイライトを消して見てきて居て。

俺を睨んでいた。


「.....誰から」


「.....お前の部活の先輩だ」


「じゃあ女だね。お兄ちゃんは私を見れば良いんだけど」


「.....」


イラつく。

でも.....これでも.....記憶喪失に近いのだ。

俺がイラついても仕方が無い。

だから.....しっかり支えないといけないな。


「.....ノア」


「.....何?吉くん」


「.....お前も協力してくれ」


「勿論だよ。このままは悲しすぎるから.....」


欠陥がさらに欠陥になった義妹。

さて.....どうなるのか。

俺は目の前の皆穂を見ながら.....思った。

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