第18話

* * *

『え! まどかコーヒー飲めんの? 大人じゃーん』


 初めて順平が家に遊びにきてくれた日、あたしは大好きなカフェflavorfulフレーバフルからチョコレートケーキとカフェオリジナルのコーヒーを用意していた。あたしが当たり前に飲んでいたコーヒーは、順平には苦手だった様で甘めに砂糖と牛乳をたっぷり入れたカフェオレにしてあげた。


『うっま! なにこれ。自販機とかコンビニのカフェオレの数億倍美味い! まどかのカフェオレ最高じゃん! 毎日飲みに来たい』

『え!』

『あ、ごめん。毎日来たら、迷惑だよな』


 シュンっとして眉を下げる順平の姿が本当に愛しくて、あたしは順平のTシャツの裾を掴んで近づいた。


『迷惑なんかじゃないよ。毎日順平と一緒にいたい』


 言ったはいいけど、恥ずかしくて俯いてしまった。そんなあたしの頭を撫でてくれて、順平はあたしを抱き寄せる。


『まどか、顔真っ赤。可愛い』


 微笑む順平に、あたしはますます熱くなる頬に手を当てた。


『キス、してい?』

『……ん』


 俯いたまま頷くあたしに、順平はおでこをくっ付ける。誘われる様に、あたしは順平の方へ顔を上げた。


『それ以上も、してい?』


 軽く唇が触れて離れると、順平はあたしを強く抱きしめてそう言うから、あたしは小さく頷いた。

 大好き。順平の声が、大きくて優しい手が、唇が、あたしを見つめる瞳が。

もうどうしようもないくらいに、大好き。

* * *


 湯気が消えて、誰もいない部屋の中に一人いることに気が付いて、あたしは知らずに伝っていた涙を拭った。

 その声で、その手で、唇で、瞳で、あたしにした様に、絵里子のことも愛したのかな?

 あたし以上に、絵里子のことが好きになってしまったのかな?

 そう思うと、やっぱり溢れ出す涙を止める事は出来なかった。

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