第32話

「よし、これでクリスマスはひとりぼっちじゃないぞっ! 良かった! あたしクリスマスに彼氏居ないとか耐えられないの」

「……まさか、その為だけの?」


 いきなりそう言い出す早夕里に、あたしは驚いてしまった。


「真舞くんのことは気になるけど、まだ何も知らないし、ちょうど家にいたくなかったから、花嫁修行兼ねて居候させてもらえれば一石二鳥じゃない?」

「……結婚まで視野に入れてんの?」


 こちらも驚く成海くんに、早夕里は笑う。


「え⁉︎ やだ、そこまで考えてないからっ。真舞くんが少しでもあたしのこと気にしてくれたら良いなって思ってるだけ。で、好きになってくれたら絶対付き合うしっ」

「早夕里ちゃんって、軽いね?」


 成海くんに呆れたように言われて、早夕里は目を細めてそっぽを向く。


「片瀬成海に言われたくないんだけどー」

「俺軽くないよ?」


 その一言に、すぐにそっぽを向いた顔が戻ってくる。


「え⁉︎ それ本気で言ってる? 怖っ」

「……早夕里……」


 怯えるようなリアクションをする早夕里は、今度は成海くんにグイッと近づく。


「色んな女連れ込んでるって噂は嘘なの? さっきの彼女居ない歴年齢とか、あり得ないし!」

「それは、俺のこと好きだって言ってくれたら嬉しいでしょ? だから、できる限りそれには応えたいだけ。俺、自分に自信ないし」


 冷静にお茶を飲む成海くんに、早夕里は目を見開いている。あたしも、そんな成海くんの横顔を見つめてしまう。

 自信がない?

 今、成海くんが言ったんだよね?


「え? こんなカッコいいのに自信ないとか言うの?」


 早夕里は唖然として成海くんを見る。


「ありがと、そう言ってくれるの嬉しい」


 早夕里に向けてにっこりと笑う成海くんは、やっぱりカッコいい。向けられた早夕里は真っ赤になっているし。


「だ! だ・か・ら! それっ! それで華とか女子を落としてんの! 自信とかじゃなくて、自覚して?」


 信じらんないと怒っている早夕里のことを、成海くんは不思議に思って首を傾げている。


「……成海くんはカッコいいよ? 自信がないなんて、あたしもびっくりだよ」

「そ?」


 本当に無自覚なのかと、疑いたくなるくらいに。


「ところで話戻るけど、なんで家に帰りたくないの?」


 成海くんが早夕里を見て聞いてくる。

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