第23話
「二人のもマスターに頼んでくるよ」
そう言って席を立つと、真舞くんはカウンターへと向かった。
「片瀬成海って、やっぱイケメンだねー」
「え?」
いきなり早夕里が成海くんの前に頬杖をついてトロンとした目でそう言った。
「華泣いてたよ? まどかにチェンジしたから捨てたの? そして、まどかのことも遊ぶだけ遊んで捨てんでしょ?」
目の前のカクテルは空っぽになっている。まさか、一気に飲んだの⁉︎
怒ったように眉間に皺を寄せている早夕里に、あたしは慌てて隣にいる成海くんの様子を伺う。
「捨てないよ?」
成海くんも早夕里の目の前に同じように頬杖をついて、満面の笑顔で返した。
「まどかちゃんは、特別だから」
綺麗な顔の笑顔に、一気に酔いが冷めたのか、早夕里は酔った赤みじゃなく、明らかに顔を真っ赤にして成海くんから離れると、ソファーの背に寄りかかった。
「そ、それって、華は遊びだったって断言してるような感じじゃない?」
「あー、だって、華ちゃんが言ってきたんだよ? 遊ぼって」
「……何それ」
「だから遊んだだけ。キスしてって言ったからしただけ、うちに来たいって言ったから、連れてっただけ、抱いて欲しいって言われたから、しただけ」
淡々と言う成海くんに、あたしと早夕里は唖然としてしまう。
「華ちゃん俺のこと好きって言ってくれて嬉しかったし。ただ、もううちには来ないで欲しくてああ言ったんだけど」
「……え? どう言うこと? 華とは結局付き合ってたんだよね?」
「いや?」
「別れたくてもう家にくるなって言ったんでしょ?」
「いや?」
早夕里の質問にことごとく首を振る成海くんに、早夕里の首もどんどん傾いていく。
「は? 意味分かんないんだけど」
「華ちゃんとは付き合ってないし、だから別れるとかもないし」
「これ、永遠に答え見えないやつだな」
呆れたように早夕里はピンに刺さっていたチーズを口に放った。
「あー、成海はそう言うやつだよ。彼女いない歴イコール年齢、だよな」
戻ってきた真舞は座りつつ笑っている。
「は!? 彼女いた事ないの!? 嘘でしょ、そんなの」
驚く早夕里に、もはやあたしは小さくなって会話を聞いて居るだけしか出来ずにいた。
「お前もだろ」
「あー、俺はマジなやつだけどね」
「え⁉︎ 真舞くんも⁉︎」
「うん。はい、おかわりには、ちょっとすっきりしたやつ。持ってきたよ」
「え! 嬉しい。真舞くんの笑顔マジ天使♡」
「え? 何それ」
「可愛いってことっ」
「あー、そう?」
やっぱり早夕里にタジタジな真舞くんは、見ていて楽しい。
「あー、笑ってないでまどかも飲みな? もう今日は片瀬成海責めるより、真舞くんがいるからもう十分だわ。もうなんも言わないから楽しも」
「早夕里が一人でさっきから暴走してる気がするんだけど……まぁ、でも、良かったね」
ようやく乾杯をして、順調にお酒が進んできた頃、あたしのスマホの画面がテーブルの上で光った。
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