第2話
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『まどかー、あたしさ、順平くんと付き合ってんのぉ、悪いけど別れてくんない? なんかぁ、自分から言うのヤダって言ってんだよねー』
大学の仲良しグループで飲んでいた日の帰り際だった。親友、
『……え? どう言う事?』
賑やかな飲み屋街が、一瞬にして静まり返った気がした。あたしの心臓の音と、目の前の虚ろな目をしつつヘラヘラと笑う絵里子の姿しか、あたしの視界には映らなくなった。
『たしかぁ、七月くらいかな、今日みたいにみんなで飲み会した時あったじゃん! その時まどか途中で帰っちゃって。順平と話してたらすっごい楽しくなって盛り上がっちゃってー』
お酒が入っているからか、普段よりもハイテンションに話し始めた絵里子は、人の彼氏を平然と呼び捨てにした。
『その日のうちに最後までやっちゃってー。ごめんねー、あんまり気にしないでこれからも仲良くしてねっ』
手を顔の前で合わせた絵里子は、照れたようにしおらしくこちらを上目遣いして見てくる。
そんな顔をされて、あたしはなんて言ったらいいの?
「大丈夫、気にしないで?」「嫌、何でそんなことするの? やめてよ!」
頭の中が一気にグチャグチャになってしまって何も言えずにいると、絵里子が『じゃあ、またね』と手を振って、みんなの所へと戻った。輪の中には、順平もいる。
動けなくなって、ただ見つめているしか出来ないあたしになんて順平は気が付かない。戻っていった絵里子の肩に手を回し、抱きしめるように二人はくっ付く。その姿に、あたしは一気に絵里子の言葉を理解し始めて、ますます頭の中が混乱した。
お酒は多少飲んで気分は良かった。それなのに、今は酔いなんて一気に吹き飛んでしまった。目の前の現実が受け止めきれずにいる。
もう二人を見て居たくなくて、溢れてくる涙が全てをボヤけさせる。
ここから去りたくても、足が動かない。
助けてほしい。
こんな時、あたしは親友の絵里子が頼りだった。彼氏の順平が支えだった。
今のあたしは、どうしたらいいの?
『俺が、忘れさせてやるから』
突然、頭からコートのようなものを被せられると、あたしの手を引く男に連れ去られた。連れさられるがままに、もう一軒飲み屋に入ったあたしはそこでお酒を頼んだ。
『いっちばん強いやつください!』
もうヤケだった。出されたお酒が何なのかも分からずに、小さなグラスに入って出されたそれを、一気に飲み干した。
ぐにゃりと回る視界と、饒舌になる口に歯止めが効かなくなって、あたしはあれから記憶がない。
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