第48話
「これ、見たことある?」
すぐに、笑顔になって成海くんはスマホをむけてくる。画面に写っているアニメにあたしは見覚えがあった。
「あ! 知ってる。早夕里がイケメンスパイがカッコいいって話してて、見た事あるよ!」
「お、やっぱ女子にウケてんだな」
ニコニコと頷きながら、成海くんはスマホをじっくり見始めるから、あたしはそんな成海くんに微笑んだ。
「……ん? まどかちゃんはこういうの興味ない?」
「え! ううん、あたしもピンタ可愛いと思ってたし、これ飲んだらやろっ、あたしクレーンゲーム得意だよ?」
「まじ? うわ、まどかちゃんって意外」
「え?」
「絶対、取ってーってねだってくる様なタイプかと思ったのに、得意とか言っちゃうんだね。カラオケの時も反応良かったし、やっぱまどかちゃんって可愛い」
また、サラリとそうやって簡単に可愛いとか言うから、あたしは思いっきり照れてしまう。
隠したいのに、熱の上がる顔を隠せなくて、ちょうど良い温さになったカップをそっと持ち上げて、そっと顔を隠した。
目の前の成海くんは平然としているから、だから、こうやってあたしは成海くんに素の自分を出せてしまうのかも知れない。
これが順平だったら、きっと素直には突っ込んだり出来ないで、偽物の可愛いを作ってしまっていた気がする。
うん、たぶん、成海くんの言うように、あたしは前に順平とクレーンゲームをした時に、たしかに、「苦手だから順平とって?」ってお願いした覚えがある。
どうして、成海くんにはあたしの素がバレちゃうんだろう。しかも、可愛いって……あー、ダメダメ。これじゃあ他の女の子たちみたいに成海くんにハマってしまう。
「……ふっ、何一人でニヤけてんの? 途中から、誰のこと考えてた?」
自分の考えを否定する様に首を小さく振ったあたしに、右頬杖をついた成海くんが優しく微笑んでいて、その笑顔にまた照れてしまう。
この人は、やっぱりカッコ良過ぎる。その顔は、ずるい。
「俺のこと?」
「え⁉」
嬉しそうに聞いてくるから、あたしは目線を泳がせながら逸らした。
「嘘。んなわけないよね、よし、出よっか」
最後の一口を飲み終えてカップを置いたあたしを見て、成海くんは席を立つ。
あたしも一歩遅れて席を立つと、先を歩く成海くんに周りの人が視線を向けているのを感じて、後ろ姿を眺めた。
ほんと、あたしはなんで成海くんにこんなに支えられているんだろう。
あたしなんかよりも、素敵な子はたくさんいるはずなのに。
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