変化の訪れ
稲の植え付けをしてすぐの頃。山で山菜を摘む八重の前に
また何かしてしまっただろうか、と狼狽える八重に、
「………………った」
「はいっ! ええと、はい……?」
思わず返事をして、聞き取れずに恐る恐る問いかける八重に、
「だから! 悪かった!!」
八重は、きょとんと目を丸くして、
§
なんとか
顔を見せるのも気が重く、まだ信用したわけではない、と様子を伺っていると、八重はしゃがみ込んで手を伸ばし、蓮華を手折った。
それ見たことか、と言ってやろうと思った。どれ程信心深いと言われようが、意味もなく、手すさみに
八重の、その真っ直ぐな瞳からは、それ以外の意図を読み取ることが出来なかった。『余りに美しかったから』『白陽様の心慰になると思って』そんな感情ばかりが伝わってくる。
その場を立ち去って、それでも、と
災厄によく似た匂いに、
暫くして、新たに神が目覚めたことを
「
「あれ、
「ばあちゃん、目覚めてよかったな」
「ほんにねえ。巫女殿のおかげだよ」
「坊、今までどうしていたんだい?」
「別に、変わらん。山で蜂の世話をしていた」
「色んなものがだめになってねえ、蜂の巣はどうだったかい?」
「蜂は生きていたが、巣はだめだった。新しい巣箱で一からだ」
「そうかいそうかい、やっぱりねえ」
「……ちゃんと食べていたかい?」
暫く話続けると、
「…………食ってた」
「何をだい?」
嘘だとばれているのだろう、
「別に……なんか、葉っぱとか」
「そんなことだろうと思ったよ」
「何か食べておいき。どれ、握り飯でも拵えてやろうかね」
「米は!」
「米は、あの人の子が作ったものだ」
「坊、猪の坊、米に罪なんかありゃしないよ」
「坊は鼻が格別良いから、私らじゃ分からないことまで嗅ぎつけてしまうんだねえ」
「……うん」
「辛かったねえ、坊は隠し事が苦手で、ごまかしが効かないからねえ」
「…………うん」
「食べておいき、私の顔に免じて、ね」
「うん」
人の世を案じて、神への感謝と祈りを込めて。あれ程きつく当たったのに、感謝を捧げる神に、
「……こんなに小さくては、食った気にならない」
「ばあちゃん、ごめん」
ぽつりと落とされた
「いいんだよ。でもね、ほら、もうどうしたいか、決まっただろう?」
「うん」
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