第53話 自分の基準は根本的に違う

 松本清張や夏目漱石が好きと言うとどんなイメージを持つか分からないけれど、Twitterでレビュー活動をしていて企画などを行っていた時に言われたのが「厳しそう」と言うものだった。

 最近はアルゴリズムが変わった為、あまり見かけることがなくなった「読みます企画」だが、「甘口や辛口」という意味が俺には理解できなかった。


 感想とは感じたことや思ったことを述べるものであり、辛口も甘口もない。それは評価に対してつけるならわかるが、そうなると評価そのものは公平でも公正でもないので意味も成さないと感じている。


 まず感想とは……

・その作品からどんなメッセージを受け取ったのか?

・どこが印象に残ったのか?

・自分が主人公の立場だったらどうなのか?

 そういうものを書くものなのね。総合して「面白かった」という感想になる。

 この内容に対し、甘口も辛口もないのよ。


 恐らくみんなが言っているのは感想でも評価もでもなく「アドバイス」だと思うのね。辛口アドバイス、甘口アドバイス。これが一番しっくりくる。


 教授や専門家のまねごとをして評価(批評)をしたところで、あまり意味はないと思う。何故なら思想そのものに正解はないので。 


 あるとすれば、ジャンルに合致しているのか?

 向けに対してのテーマや表現は適正なのか?

 この辺りだと思う。あとは正しくルールに沿っているのか?

 それを判断してもらいたいというのは自由だと思うし、勝手にやればいい。ただし、ルールに沿っている=面白い保証ではない。


 自分が卒論を書いた時、アドバイスされたのは「引用を使った方がいい」ただこれだけだった。この、卒論を受け持ってくださった教授が松本清張を奨めてくれたの。

「近現代文学と同等のレベルで読めるミステリーはありませんか?」

 それが俺の質問。


 以前も言ったとは思うけれど、夏目漱石に関しては情景描写が好きなんだよ。内容とかテーマがどうとかではなく。

 そして松本清張に関しては構成が好きなのね。面白いと感じているのは、事件を追っている主人公が交代されるという部分。

  

 つまり、小説の中で「何を表現するために」どんな構成にするのか、非常に自由だということ。それが面白さに繋がるし、オリジナリティを産む。


 他の人の作品を読む時に、あなたはどこに注視していますか?

 ただ物語を読んでその物語自体に注視しているなら、それは読書の域を越えないと思う。間違いばかり気になるなら、あなたは何も学ぶことは出来ない。


 この人はどうしてこんな表現を選んだのだろう?

 この文は何故あえて加えたのだろう?

 意味があるものに気づく時、意図を理解する時、本当の面白さに気づく。

 書き手として見るべきなのは相手の技術面だと思うんだよね。上手い下手なんてわりとどうでもいいことだと思う。

 ただ読んでいるだけだと伏線に気づくことは無いし、あえてその言葉を選んだという意図にも気づかない。それでは読書は楽しめないでしょ?


 ルールよりも分かりやすさを選ぶ。

 それも思いやりの一つだと思うし、その人なりの表現法だったのだと思う。

 

 ルールで言えば、字下げ字下げ煩い人ほど何故字下げするのか理解していないし、空行の使い方も間違っていることが多い。だから理由を調べて理解して自分だけがそのルールを守るか、黙れば良いの。

 じゃあどうして字下げ問題と間違った空行問題が起きるのか?

 字下げするのが正しいと思っている人と、日本語は横組みにすると読み辛い理由をちゃんと理解していない人が混在するからよ。


 そして読むことに慣れている人ほど、正しい空行の使い方をしていないと読みづらいなと思うはず。その上で、俺はそれを無視して読むのでルールが守られていようがいまいが、その作品の中で一定のルールさえあればそんなものは気にならないの。

 そこは問題じゃないから。

 

 タブーだらけのエッセイが何故サクッと読めるのか?

 それは空行の空け方と文字数設定、言葉を重ねないと言うことに気を遣っているから。そして例を述べる時は、端的で親しみやすいものを選ぶ。

 詳しくは次で説明します。

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