第25話 実はすごかった?(凶暴除く)

 その後は無難に狼などの野生生物やゴブリンを地道に倒し、時にはティモがモンスターからアイテムをくすねるなどして森を順調に進んで行った。


「最初の熊以外は普通に勝てるね。レベルもだいぶ上がって僕も五十を超えた」


 リョウタが満足そうにつぶやく。そういえば私はずっとステータスを開いてなかった。久しぶりに確認してみよう。


「ステータス」


 つぶやくと目の前にウィンドウが現れた。あのスキルは改善されているのだろうか?


『名前 ユウ

 性別 F

 職業 剣士

 Lv五十五 無属性

 所持金  金貨二十枚 銀貨七枚、銅貨十枚 宝石複数

 スキル  子どもに対しても無慈悲、無自覚かつ容赦ない冷徹な凶暴さ』


 おい、なんだこれは。スキルがただの悪口からパワーアップしてもはや罵倒になっている。元々そうだが、もはやこれはスキルじゃないだろう。何か恨みをかっているのだろうか。


「リョウタ、わたしのスキルがさらに悪意ある表記になってるが、リョウタのウィンドウから問い合わせしてくれないか?」


「本人からの問い合わせじゃないと答えてくれないと思うけど、一応やってみる」


 リョウタの顔が引きつっているのは気のせいか。ログアウトしたら、無課金だろうと無料モニターだろうと運営に殴り込みかけないとならないひどさだ。


「しかし、属性が無属性なのはつまらないな。炎や氷とかそういう必殺技が使えると思ったのに」


 私がボヤくとティモが振り向いて驚いた顔をした。


「無属性だって!? すごい! 話には聞いていたけど無属性の人なんて初めて見た!」


 ティモの驚きようを見ると珍しいようだ。詳しく聞いてみよう。


「無属性だと何がすごいのだ?」


「四大要素と光と闇は相反するから炎属性だと氷に弱いとか大抵の属性には弱点があるけど、無属性にはそれがない。特定の属性に大ダメージ与えられない代わりに、どの属性からも大ダメージを受けることはない。言わば弱点無しなんだ」


 弱点無しか、それはすごい。


「で、無属性だと武器の制限が無いから何でも使えるし、なんかすごい剣も使えるらしい。とにかく滅多にいないよ!!」


 なんと! どの属性にも使えない剣があるとは! どのくらいレベルアップすればいいのか? 何かイベントをこなせばいいのか。しかもレアな属性、これはすごい話を聞いた。


「よーし! 鍛錬するぞー!」


 さっきの罵倒スキルの鬱憤が無くなるくらい嬉しくなってウキウキとして素振りをしていたら、剣がすっぽ抜けて飛んでしまった。


「ユウさん、いきなり素振りは危ないって」


 リョウタの警告通り、そのまま剣はクルクル回り、先にいた黒っぽいオークの頭に刺さり、あっけなく金貨に変わった。


「いかんいかん、浮かれすぎた。結果的にラッキーだけど」


 私は剣を回収に走った。


「ユウさんの機嫌が治ったのはいいけど、無自覚でモンスター倒すのが恐ろしい。運がいいとはおもうけど」


「あれ、わざとやってるのではないの?」


「恐ろしいことに無自覚の偶然だ。過去に何回も似たようなことに遭遇したから僕にはわかる」


「偶然でもさ、オークの上級であるブラックオークを一撃で仕留めること自体がレベル五十台ではありえないよ。普通は何回も攻撃して倒すものだよ」


「前にも言ったが、彼女はいろいろ規格外だから。スキルが凶暴という時点でわかるでしょ?」


「……そうだね、凶暴さがパワーアップの役目をしているのだろうね」


 向こうで話をしているが、私は地獄耳だから丸聞こえだ。まあいい、偶然でもモンスターを倒したし、金貨がオークの時よりも多いからティモの言うとおりオークの上位種だろう。

 うんうん、なかなか良い。ゲームだと最強技取得はレベル八十くらいがお約束だ。よし! 敵を斬って斬って斬りまくるぞ! 試食や宝石も気になるが必殺技を取得することが優先だ。


「なんとなくだけど、ユウさんはナチュラルに怖いことを考えているような気がする」


「夫婦ってそういうのもわかるんだね」


「一緒に過ごしているとある程度パターンがわかってくるから。なんとなく、ね」


「僕は優しい人を奥さんにしたいな。この姿でも嫌な顔しない人」


「君も苦労しているね」


 二人の会話が男同士の会話になっているから戻りにくい。しかし、ティモの言葉にひっかかる。後半部分はともかく私が優しくないとでも言うのか。

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