第47話 強そうだけど変な剣
リョウタのケアも無事に終わり、約束の三日目となったので私達一行は鍛冶屋へ向かった。
「ユウさん、何もケアヒ草使い切るまでやることないじゃない。低温やけど起こしてたから結局回復魔法使ったし」
リョウタがげんなりした顔で文句を言ってきた。
「でも、血行は良くなったろ?」
試しに腕を上げさせたら前より上がるようになってたから、ケアした甲斐があったものだ。まあ、余ったら宿に寄付なり誰かにあげても良かったが、ここはリョウタの体調を整えるに限る。
「そりゃ、肩も腰も楽になったけど」
「ならいいじゃないか。さて、鍛冶屋さんに来たぞ。おはようございまーす! ユウです」
「おう、おはようさん。頼まれていたものは出来たぞ。ガーゴイルの破片を入れた防具は石化魔法に耐性がある。ヒュドラの鱗を入れたタガーも強度が上がって時々毒性攻撃できる付加価値付いたぞ。やはり完璧な状態の鱗だと出来がいいな」
ドワーフのおじさんは得意げに私の鎧とティモの鎧を差し出した。見た目はよくわからないが石化に耐性あるだけでも少しは有利だろう。しかし、ユウさんのプラチナソードについては少し言葉を濁した。
「で、お前さんの剣だけど、鱗をふんだんに使ったから強度は抜群に上がった。色も診たことない輝きだ。……うーん、しかし、ちょっと変わった特性が付いててな」
おじさんはなんか口よどむが、とにかく早く手にしたい。
「いいのかなあ、これなんだけど」
そうして手渡された剣はあのヒュドラの鱗を思わせる虹色、光の加減によって何色にも見える。これはもしかしたら最強の武器?
「すばらしいぞ! で、何が問題なんだ?」
「振ってみな。もちろん人のいない方向へだぞ」
変なことを言うなと思いつつ、剣を振ってみた。
『キシャー』
なんだ? 今のは? 普通は『ブンッ』と風を切る音ではないのか?
「なんか、今、蛇の威嚇の声みたく聞こえた」
「ティモ君もかい? 僕も同じように聞こえた」
二人の会話からして、私の聞き間違えではない。もう一度素振りをしてみる。
『シャー!』
「おじさん、これ、どういうこと?」
ドワーフのおっさんも困惑したように頭をかく。
「鱗とプラチナソードの親和性が高くてな、ついつい多めに入れたら蛇のようになってしまった。もしかしたら毒の付加価値だけでなく蛇のようにしなるかもしれない」
何を言ってるのかよくわからない。
「つまり蛇化した剣?」
「そうとも言えるな。元のヒュドラの一部を受け継いだのかもしれん。この鱗、鮮度良かったからな。もしかして生け捕りにしたものか?」
ますます何を言ってるのかわからないが、肝心の戦いの時にしなっては困る。
「確かに寝てる隙に採ったものだけど、蛇みたいになったら戦いにならないのじゃないか?」
ドワーフは「これは推測だが」と前置きした時点で話し出した。
「そうとも限らない。オリジナルのヒュドラの記憶を継いでいるかもしれないから、アドバイスは貰えるかも」
「ほんとぉ?」
疑いの眼差しで虹色の剣を見てると何かつぶやいてるのが聞こえた。
「よぉ、こないだは酒とつまみをごちそうさん」
「酔いつぶれたのは不覚だったが、手にかけなかったフェア精神に免じてお前さんのサポートしてやろう」
「うぉ! おじさんの言うとおりだわ、ミニヒュドラが宿ってるわ」
「まあ、未知数が多いが戦えるだろう。ほい、調整代金は金貨三枚な」
リョウタの方を見ると小銭までかき集めているからギリギリなのだろう。
それを見たドワーフのおっさんは言葉を訂正した。
「いや、面白いもの作れたから金貨二枚と銀貨五枚でいいよ」
おお、優しい。リョウタもほっとしたようで支払いをなんとかすませた。
「装備も済ませたし、買えるだけアイテムも買った。行くか」
「行こう!」
「うん!」
さ、目指すはサイドの谷だ。しかし、ヒュドラの剣とは。変わった物好きの私らしいがどうなるのだろう。
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