第12話 とりあえず情報収集
今日は三日目、ちょっと昨日は張り切り過ぎたからか少し筋肉痛だ。ストレッチが足りなかったか。
って、宿屋だとステータス全回復がデフォなのに、やはりモニターの開発中ゲームだからか不具合が多い。
リョウタはやはり朝からぐったりしていた。やはり宿屋でのステータス全回復は難しいようだ。今日はエナドリになるような薬草でもあったら買うのがいいかもしれない。
「おはよう。気のせいか顔色悪いぞ。朝ごはん行けるか?」
「ああ、ユウさんおはよう。食欲はあるから平気」
さすがメタボだけある。どんな時でも食欲は失わない。いつかインフルエンザにかかったときもラーメンやカツ丼をリクエストして食べたくらいだ。
「ユウさん、どうやら僕のステータスのウィンドウからいろいろ探れた。フリーシナリオ過ぎてヒントが少なすぎると問い合わせ多かったみたい。
それで、この世界には空間の歪みが生じていて危機を迎えてるという設定だった。昨日のダンジョンが海系モンスターが多かったのはそのせいらしい。
で、歪みを作ってる容疑者が魔王らしいから、やはり魔王討伐だね。ただ、魔王側近とか魔王の座を狙う魔導師の仕業という噂もあるから、午前中は買い物と情報収集しよう」
朝ごはんのパンとスープ(リョウタはもちろん追加で卵料理やらパンのお代わりしている)を食べているとリョウタが突然言い出した。
「私のは相変わらずステータスしか見られない。ダメなゲームだな」
「だからモニターで改善点探ってるのでしょ。あと十八日でクリアしないと懲戒免職のリスクもあるから食べたら街で聞き込みしよう」
「では早速、宿の人達に聞いてみるか。様々な冒険者が集まるから何か知ってるかも」
「さすがユウさん」
「ふふん、冴えてるだろ。すみませーん、この街に変なこと起きていると噂で聞いたのですが何か知ってます?」
宿の主人は、あれかという顔をして話し始めた。
「あちこちで場所がおかしくなっているやつだね。ダンジョンの冒険者からは地下にはいないはずのモンスターが出た話とか、ドエコの街の一部が急にエゴワカ山のふもとに一晩で移動したり。ここも朝になって起きたら海の中とかなったら心配だな」
「やはり魔王の仕業なんですかね?」
「ああ、こんなことできるのは魔王キルシュヴァッサーしかいないともっぱらの噂だ。ただ、魔王はサイドの谷に封印されてるはずだから封印が解けかかっているではないか、いや、魔王の座を狙う側近の魔導師の仕業という噂もあるな」
「魔王の側近?」
リョウタがちょっと間の抜けた声で復唱すると主人はそうそうと頷いてし話しを続けた。
「ナンバー2だった魔導師コニャックだ。魔族の中でも魔力がかなり強くて魔王の座を狙っていたとかいう話もあったし、勇者に魔王が封印された時は素早く逃亡したというからどこかに潜伏してるらしい。とにかくあらゆる魔法に精通していたよ」
「その魔王や魔導師の特徴って何かない? 顔にキズとか、服装は派手だったとか」
主人は思い出すように考え込んでいたが、あまり思い出せなかったようだ。
「俺も魔王や側近はそんなに見た事なかったな。街の視察の時はひれ伏せてなくてはならなかったし、魔王も側近も服に宝石を縫い付けて派手だったのはチラッと見て思い出したけど、顔の特徴ねえ……魔族特有の薄紫の肌以外は少なくともキズやアザは無かったよ。
ああ、強いて言えば魔王は赤っぽい服装で側近は青っぽい服装だからそういう色が好きなんじゃないかな?」
「なるほど、お話ありがとう。これ、チップね」
私はまた目の前で銅貨をまたグニャッと曲げて渡した。何枚か仕掛けを仕込んで置いておいてよかった。宿の主人は引きつった顔して受け取った。
「あ、ありがとうございます」
「あ、僕からもチップを。昨日の戦果ですけど」
リョウタは小さいアクアマリンを二、三粒ほど出した。チップを節約するためにしたのに無粋なやつだ。これでは節約にならない。もうちょっと無課金勢だという自覚を持って欲しい。
「ありがとうございます」
宿の主人は今度は安心した顔で受け取った。解せぬ。なぜこんなに差が出るのだ。
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