第49話 メデューサとの対戦が何かがおかしい・1
「誰? あんた? 馴れ馴れしく話しかけないでくれる?」
不機嫌そうに答えが返ってきた。
まあ、尋ねなくても一発でその蛇の混ざった髪の毛でわかる。目を合わせてはいけないのか、姿を完全に認識してはいけないのか、それとも目から怪光線出るのだっけ? もっとファンタジーを読んでおけば、いやファンタジーを科学的に解説する本でも読んでおけば良かった。
とりあえず、アイリスさんにもらったグッズのひとつを付けておくか。
「私は剣士のユウ。魔王について聞こうかと思ったけど、ご機嫌斜めみたいだな……ですわね」
名乗った瞬間に彼女が引きつったのがわかった。あと、自分は石化してないのでとりあえずサングラスは防御に有効なようだ。って紫外線並の威力かよ、意外と弱いな。それとも石化耐性の防具を付けているからか?
「ああ、あの人間にしては凶暴って噂の。何? 凶暴さの箔をつけるために倒しに来たの?」
「いえ、さすがに評判が悪くなりすぎて、仲間である人間からも遠ざけられるようになってしまって。一応夫はいるけど、他の人間は皆逃げてしまったの」
「そりゃあ、あなたのような凶暴な人はよっぽどのドMでなければ逃げるでしょうね」
さすが魔物。人間と違って気遣いゼロだ。岩影で小さくリョウタが「ど、ドMじゃないもん」といじけた声が聞こえた。
「それで? 何の用さ」
「あなたも噂でいろいろと苦労していると聞いたから、一緒に女子力を上げようと思って。旅の途中でそういうグッズをいくつかもらったけど使い方わからなかったり、色が合わないものもあるのよ。ちょっと見てもらえる?」
「だから女子力上げるために普通の女子っぽい言い方なのね。付け焼刃なのバレバレ」
うぐっ! やはり失礼でムカつく! こやつは一刀両断したいっ! しかし、あのステータス画面からしてモンスター相手でも暴力を奮ったらBANされるかもしれない。とりあえず大人しくミッションをこなさないと!
「やっぱそう思う?……せめて言葉遣いから入ろうと思ったのだけど。で、化粧品やらストールとか貰ったのだけど、このストールはあなたの頭に巻いた方がいいのじゃないかしら?」
ザックから鮮やかな青いストールを取り出した。アイリスさんは「これで少しでも日焼けを防いでくださいね」と言ってたけど、首に何か巻くとムズムズする体質の私には無理な物だったので眠っていたのだ。さすがに好意で貰ったものを売り飛ばすには気が引けた。そのくらいの人の心は持っている。
「え? 頭に?」
おっ、意外と食いついてきた。
「ああ、私の国のある宗教では女性はは家族以外の男性には髪を見せてはいけないから布で隠すという決まりがある。最初は厳しい戒律と思ったのだけど、その宗教の故郷では日差しと乾燥がひどいから髪を保護するには理に適っていると思った。あなたの髪もここの日射しや強い風で弱っているのではないかと。 ならばこれで保護しなきゃ」
「い、言われてみればそうね。ちょっと巻いて見るわ」
メデューサは私の手からストールを取ると頭に巻き始めた。
「こ、こうかしら?」
ハッキリ言って変な巻き方である。むやみにぐるぐる巻いたためか上の蛇は圧迫されて苦しそうだし、下の蛇はむき出しである。これでは魔物的な怖さではなく、別の意味の怖い人だ。
「うーん、ちょっと違うな。私も見様見真似だけどちょっとやってみる」
メデューサの後ろに周り、ストールを解く。あれ? 今ならこれで首を絞めればメデューサを仕留めるチャンスじゃね? 人間なら卑怯な犯罪だけど魔物、しかも魔王の側近。経験値も金貨も莫大だ。
いやいやいや! コンマの速さで私は否定する。ステータスからして今や私は運営にマークされてる要注意人物なのだ。経験値は落ちても穏やかに解決せねば!
「確か上手に頭全体を覆って、顔は出していたからこんな巻き方かしらね。宗派によっては目だけ出すけど顔全体出すのでいいかな。……よしできた。やはり青が似合うわ」
ウウッ、経験値が、金貨が! でも、平和的解決が先! BANされたら元も子もない!
「あら、いい感じ。蛇たちもやはり日射しがきつかったのね。なんかリラックスしてるわ」
『確かに蛇は乾燥には強いが休みたい時もあるよな』
『ああ、日陰行って涼みたいと何度思ったか』
ヒュドラの剣が合いの手を入れる。そっか、広い意味では仲間になるのか。蛇にも個性があるのか。
「あら、珍しい。ヒュドラの分身を手に入れたのね」
「よくわからないが、そうらしい。では、ヘアケアはこれで良いとして。
私もよく言われるが目つきが悪い、眼力の意味を間違えてると。今はサングラスで誤魔化しているが、やはり目を見るのではなく、伏し目がちがいいのか?」
「でも、真剣さを訴えるならきちんと目を見なきゃ」
うーん、だんだんと女子会メイク編になってきた。
ヒジャブになってるからパッと見た目はキツめ女子だけど、メデューサなんだよなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます