第8話 気遣い魔王 カードを説明する
軽く泣き寝入りした、魔王歴二日目。
さて、『アビリティカード』の話をしよう。
『アビリティカード』というのは、ドロップ率1~0.1%のアイテムで、魔物の種類だけ存在する。
魔物の強さによってランク分けされており、『Normal』、『Common』、『Rare』、『Epic』、『Legend』、『Unique』の6種類。
Normalがもっとも低ランクで、Uniqueは世界に一枚しか存在しない、極めて希少なカードになる。
それだけに、手に入れると破格の能力を手にすることができる。
カードについてもう少し説明しよう。
ランクに関係なく、アビリティカードには2つ能力を付与する欄がある。
【固有アビリティ】と【ステータスアビリティ】というものだ。
これは説明するよりも実際に見てもらう方が早い。
ゴブリンのを手に入れていたので、見てほしい。
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【ゴブリンのアビリティカード】
ランク:Normal
固有アビリティ:HP20%以下になると、一度だけ威力130%となる一撃を放つことができる
ステータスアビリティ:攻撃力+2%
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このように、アビリティカードには個性的な【固有アビリティ】、【ステータスアビリティ】がひとつずつ記載されており、各人一枚だけ装備できる。
勇者や聖女でも特別扱いはなく、各人一枚は一緒である。
しかしカードはランクが上がるごとに、アビリティ枠は増えていく。
『Normal』、『Common』、『Rare』、『Epic』、『Legend』、『Unique』と上がるごとに一枠ずつ増えるため、最高ランクのUniqueのカードでは6つの固有アビリティおよび、6つのステータスアビリティをつけることが可能になる。
さて今、もう一枚ゴブリンのカードがあるので見てほしい。
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【ゴブリンのアビリティカード】
ランク:Normal(金)
固有アビリティ:HP20%以下になると、一度だけ威力1.35倍となる一撃を放つことができる
ステータスアビリティ:HP+1%
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Normalのアビリティカードは普通白色だが、ゲットした2枚目は縁取りだけが金色になっており、固有アビが若干良くなり、ステータスアビリティもHPアップに変わっている。
このように、同じ【ゴブリンのアビリティカード】でも、まれにレアアビリティがついてくることがある。
このようなカードを『ゴールドレア』と呼ぶ。
頻度としては100枚に1枚程度らしい。
ゴールドレアの中には、恐ろしく希少で強力な能力を持つものが出ることもあるので、魔王といえど、カード集めは欠かせない。
「さて、今まで忘れてたアレを」
リリスから彼女のアビリティカードを頂戴していたのだった。
転生してもアイテム
「あった」
アイテムボックスに眠っていたので、取り出し、封印解除を指定する。
指輪がぱっと輝き出す。
〈該当アイテムを取り出すには、パスワードを声に出して言う必要があります♡〉
指輪に設定された、聞いたことのある声のアナウンスが流れる。
「……は? パスワード?」
聞いていなかったな。
そんなものが指定されているとは。
まずい、もしかして取り出せないのか?
恐る恐る、パスワードのヒントを聞く。
〈ヒント。『リリス、あ○○てる』と大きな声で言ってください。くふっ♡〉
「………」
閉口していた。
「あのな、リリス……」
今はそんなやりとりをしている場合じゃ……。
〈残り5秒。4,3,2……〉
突然、冷たい声でカウントダウンが始まった。
「……ま、待て! 『リリス愛してる』」
〈声が小さい〉
「――り、リリス、愛してる!」
そんなわけで、森の中で、絶叫させられる。
パンパカパーン、という効果音とともに、指輪から吹き出た紙吹雪が舞っていた。
転生に耐えるために変えられていた指輪はなくなり、代わりに一枚のカードが己の手の上にあった。
『Unique』を示す、真紅の縁取り。
黒い蔦に囲まれた白い肌の美しい女がきりり、とした表情で、人差し指を突きつけている絵だった。
「おお……」
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【闇の聖女『グレモリィ』のアビリティカード】
ランク:Unique
固有アビリティ:あらゆる魔法攻撃を吸収し、一定時間我がものとする。
※ 威力は使用者の魔力に依存
固有アビリティ:
固有アビリティ:
固有アビリティ:
固有アビリティ:
固有アビリティ:
ステータスアビリティ:各ステータスを125%にし、【闇属性】を付与する
ステータスアビリティ:
ステータスアビリティ:
ステータスアビリティ:
ステータスアビリティ:
ステータスアビリティ:
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「リリス、こんなの持ってたのか」
前置きはあれだったが、とんでもないカードを取得した。
『あらゆる魔法を吸収』だから、もちろん魔法自体は無効化するわけだ。
その上、自分に放たれた魔法を一定時間行使できるようになってしまうという。
魔法はフリアエのが強力なので、リリスのカードはフリアエに装備させ、ゴブリンのゴールドカードは己に装備した。
どんな魔法であれ、フリアエの魔力で放たれることを考えると、寒気しかしないな。
「125%でステータスもバカ伸びしてる」
このようにアビリティカードはテルルと己で一枚、フリアエで一枚の合計2枚装備することができる。
効果は固有アビ、ステータスアビともに各自にかかるのみだが、体にかかるバリア効果などは互いのものを享受することができる。
つまり、フリアエの魔法吸収はテルルをも守ってくれるということだ。
そして強力なアビリティ、【闇属性】付与。
属性の話が出たので、ここで説明しておこう。
本来、『属性攻撃』というのは地・水・火・風・氷・雷の6属性を指す。
『職業持ち』の中でも属性を持つ者は一定数おり、一段階上の存在となる。
通常攻撃に加えて属性攻撃が重ねられた場合、ダメージは1.25倍、相手に対して弱点属性攻撃になっている場合は1.5倍のダメージになるからである。
そんな属性の中でも、【光属性】と【闇属性】は『上位属性』とされ、一般ダメージは1.5倍、弱点属性攻撃になった場合は2倍のダメージとなる。
リリスのカードがいかに凶悪なのか、わかってもらえるだろう。
ま、フリアエにしかのらないのだが、テルルには【闇属性】は搭載済みだ。
魔王が【闇属性】でないはずがなかろう。
「いや、ちゃんと感謝してるぞ、リリス」
なにか謝意が口にしづらいのは気のせいか。
それはともかく、カードのおかげで昨日と比べて、明らかに強くなった感じがする。
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