第51話 気遣い魔王 乱獲する


「……う、嘘だろ、水の中で息ができるってのかい」


「はい。『剣岩地帯ソード・リーフ』に行くのであった方がいいかと」


「待ってよ、簡単に言うけどさ! そんなの、とんでもなさすぎるだろ……!」


 イチカは動揺を隠せない。


 驚くのも無理はなかろう。

 15分も水の中に居られるとか、人間としての前提が崩れている。


「今後の船乗り生活にも役立つと良いです」


「……そ、そんなの」


 イチカはその顔を赤くして、視線を泳がせる。

 優しすぎるだろ……と呟いたイチカの言葉は、己には聞こえなかった。


「そんなのと言わず、使ってください」


「や、やっぱり貰えないよ」


 イチカは頬を染めたまま、己を見る。


「船乗りと名のつく者たちなら、こぞって欲しがるものだよ。高く売れるだろうし」


 あたいがタダで貰っちゃならないよ、とイチカが言う。


「今後ドロップを均等に分ける関係で、それはイチカさんに渡したいんですよ」


「だ、だめだよ。こんな高級品はもう出ないかもしれないし、なによりテルルのが苦労してるんだから……」


「どうしても納得できなければ、引き受けてくれたお礼と思ってください」


「………」


 イチカが己をじっと見る。


「……どうして」


「はい?」


「どうしてあたいに、こんなにしてくれるんだい」


「お互い、『長年の夢』に向かって努力しているんでしたよね」


 己の言葉に、イチカがはっとする。


「イチカさんがそれを手伝ってくれるのは、この上なく嬉しいことなんです。だから、僕もそうしたいだけなんですよ」


 なにせ1500年だからな。

 その想いはハンパではない。


 だからこそ、恩はしっかりと返すのだ。


「テルル……」


 当たり前のことをしているだけなのに、イチカは心を打たれたような顔で、己を見ている。

 ちょっと頬が赤い。


「さ、続けましょう」


「……うん」


 なにか、イチカの声が急にしおらしくなったようだが、気のせいか。


 その後、62体まで狩ったところでこの日はいったん引き上げることにした。



 テルル レベル33→35


 ナッコ レベル56→64


植物の戒めドライアドルーツ〉LV3→Lv6

石つぶての嵐ストーン・ブラスト〉LV1→Lv3


 ――――――――――――


 <本日の収穫> 



 タイダルゴーレムの指輪 1個

 潮流のかけら 35個

 塩塊 224個

 毒粘液 12個

 タコの触手 18個

 海虫の羽根 26個 

 トパーズ(宝石) 3個


 ¥139820 (半分はイチカへ渡す)


 ポイズンオクトパスのアビリティカード(Rare) 1枚

 キラーフライのアビリティカード(Common) 1枚


 ――――――――――――


 ~~~~~~~~~



【ポイズンオクトパスのアビリティカード】


 ランク:Rare


 固有アビリティ:攻撃後、10分の1の攻撃力で追撃する(1回)

 固有アビリティ:

 固有アビリティ:


 ステータスアビリティ:攻撃力+10%

 ステータスアビリティ:

 ステータスアビリティ:


 ~~~~~~~~~


 ~~~~~~~~~



【キラーフライのアビリティカード】


 ランク:Common


 固有アビリティ:魔法詠唱時間が10%短縮される

 固有アビリティ:


 ステータスアビリティ:素早さ+5%

 ステータスアビリティ:


 ~~~~~~~~~




 ◇◆◇◆◇◆◇




 翌日、また三ツ子島に行くと、何事もなかったようにゴーレムが湧いていたので、同じように狩り始めた。


 タイダルゴーレムの経験点が良いおかげで、今日は三体狩っただけで36になった。


 お金儲けも順調の一言。

 今までの効率の悪さを取り戻すべく、ひたすら狩り続ける。


「すごいね……相変わらずハイペースで狩るし……」


「相性のいい相手なんで」


「あのさ、たくさん使ってるけど、魔法の力は枯渇しないのかい」


 イチカが不思議そうな顔で訊ねてくる。


「裏技があるんですよ」


「へぇぇ……でも自信満々だった理由がよくわかったよ」


 さすがにこれだけぽんぽんと狩り続けると、イチカにもう戦いを怖がる様子はなくなった。

 パターン化された戦い方に見飽きたくらいになり、今は船の裏に行き、昼の準備をしている。


〈称号【海賊】を手に入れました〉

〈称号【タコの乱獲者】を手に入れました〉

〈称号【三ツ子島の平穏をもたらす者】を手に入れました〉


 昼前に、立て続けに称号がきた。


【海賊】……HP+1% 防御+1% 素早さ+1%

【タコの乱獲者】……MP+3% 運+3%

【三ツ子島の平穏をもたらす者】……防御+3% 素早さ+3% 運+3%


 運とか、上げづらいステータスが上がるのはありがたい。

【海賊】と【タコの乱獲者】はフリアエに、【三ツ子島の平穏をもたらす者】は己につけておく。


 昼を食べ終えてもひたすら狩り続け、倒した数を数えるのが面倒になったころ、とうとうタイダルゴーレムのアビリティカードを手に入れることができた。




 ~~~~~~~~~


【タイダルゴーレムのアビリティカード】


 ランク:Rare


 固有アビリティ: 水中呼吸が可能になる (連続15分まで)

 固有アビリティ:

 固有アビリティ:


 ステータスアビリティ: 魔力+10%

 ステータスアビリティ:

 ステータスアビリティ:




 ~~~~~~~~~



「さて」


 予想通りの好ましい効果だったが、どこにつけるか。


 今、己が装備している【『狂気の牛マッドホーン』マリクのアビリティカード】の固有アビリティは下記になっている。



 固有アビリティ:他の固有アビリティを強化する(中)

 固有アビリティ:ウッドゴーレム→ドライアドを一体召喚し、共闘できる。

 固有アビリティ:エコーロケーション(Lv1→3)



【エコーロケーション】を外すか考えたが、結構役に立っている。

 外すとこの能力は失くなってしまうので、少々もったいない気がする。


 それよりもまだフリアエが装備しているリリスのカードに空きがあるので、そちらに合成しておこうか。


 これにより、己も【水中呼吸】の恩恵を受けることができるしな。


 ポイズンオクトパスのアビリティカードは合計3枚(1枚が金)、キラーフライのアビリティカードは2枚手に入っているので、ついでにフリアエに合成してしまおう。


 空きスロットがすべて埋まった後は、効果の弱いアビリティから順に上書きしていく。



 ~~~~~~~~~

 フリアエ装備中)


【闇の聖女リリス ソロモン七十二柱『グレモリィ』のアビリティカード】


 ランク:Unique


 固有アビリティ:あらゆる魔法攻撃を吸収し、一定時間我がものとする。威力は使用者の魔力に依存する

 固有アビリティ:攻撃後、5分の1の攻撃力で追撃する(1回) 

 固有アビリティ:魔法詠唱時間が10%短縮される

 固有アビリティ:移動速度2%上昇

 固有アビリティ:HPとMPの値を10%ずつ増加させる

 固有アビリティ:水中呼吸が可能になる (連続15分まで)


 ステータスアビリティ:闇属性付与、さらに各ステータスを125%にする

 ステータスアビリティ:攻撃力+10%

 ステータスアビリティ:素早さ+5%

 ステータスアビリティ:素早さ+2%

 ステータスアビリティ:HP+10%

 ステータスアビリティ:魔力+10%


 ~~~~~~~~~




 詠唱短縮、魔力アップもフリアエには嬉しい効果だ。


 なにげに無名のポイズンオクトパスの固有アビリティがヤバかった。

 雑魚だと思っていたのに、こいつ、こんな強力な能力をくれるのか。

 タイラントよりやばいんだが。


 ゴールドカードだと、5分の1で【追撃】だからな。

 フリアエに【追撃】させるが、世界バランス大丈夫か。


 ともかく、サイレントにフリアエが強化された。

 ポイズンオクトパスのカードが余るので、有能だしナッコにも装備させよう。


「明日もやる? あたいは大歓迎だけど」


「そうですね、イチカさんが大丈夫ならぜひ」


「やった~♡」


 イチカが珍しく、胸の前で手を叩いて、女の子らしい喜び方をする。


 ん? なんかイチカ、変わってきた?

 いや、こういう可愛いところもあるのが見えていなかっただけか。


 というわけでもう一日ここで頑張ることにした。

 できればタイダルゴーレムのカードは予備まで取っておきたいところだしな。




 テルル レベル35→38

 ナッコ レベル64→68



 ――――――――――――


 <本日の収穫> 



 潮流のかけら 35個

 塩塊 324個

 毒粘液 16個

 タコの触手 21個

 海虫の羽根 28個 

 トパーズ(宝石) 4個


 ¥156140 (半分はイチカへ渡す)


 タイダルゴーレムのアビリティカード(Rare) 1枚(合成済消失)

 ポイズンオクトパスのアビリティカード(Rare)(金) 1枚(合成済消失)

 ポイズンオクトパスのアビリティカード(Rare) 2枚(1枚はナッコ装備済み)

 キラーフライのアビリティカード(Common) 2枚(1枚は合成済消失)



 ――――――――――――

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