第10話 気遣い魔王 森で狩る2
それから5日が過ぎた。
家の畑仕事に始まり、フリアエの魔法頼みでトレントを狩り、残りの時間は無理せず、ユメキノコを狩る。
毎日単調だったが、一日目でレベル4になってトレントを5体狩れるようになり、5日目でレベル5になった。
レベル5でテルルが新スキルを覚えた。
【
再使用時間 30秒
これは耐久力を上げる、使いやすいスキルだ。
他人に付与することも考慮してか、再使用時間が短いのがありがたい。
【斬撃】同様に多くの物理火力職業が持つスキルで、職業同定まではいかないが、テルルが前衛職なのはもはや疑いがないだろう。
更にフリアエも新たな魔法スキルを覚えた。
〈
効果時間5分 再使用時間 5分
「うは……もう〈
つい、唸ってしまう。
テルルと違い、フリアエはたったレベル5で猛烈に強くなった。
「溺れさせる」と説明は簡略だが、足元を奪い、沼にはまっている間は【移動不能】、【精神拘束】、【行動速度低下】が入る魔法だ。
動きを鈍らせるのがなにせ強い。
「初期だとこんな効果なのか」
これはのちのちとんでもない魔法になるのだが……。
まあいい。
〈
ありがとう、フリアエ。
――――――――――――
<本日の収穫> ✗5
西部樹海産ユメキノコ 816本
¥3890
ゴブリンのアビリティカード(Normal) 2枚
ユメキノコのアビリティカード(Normal) 3枚
――――――――――――
◇◆◇◆◇◆◇
魔王歴9日目。
「テルル、最近体力ついたんじゃないか?」
夜が明けたばかりの早朝。
畑仕事を手伝っていると、兄のセフィーロがそう声をかけてきた。
「そうだな。一人でずいぶん耕してくれるじゃないか」
兄のポールも、首に巻いたタオルを直しながら、こちらを見ている。
「いったいどうしたんだ」
「あー、いえいえ」
中身が変わっただけだが。
「……わかったぞ。もしかして居なくなったユキナを追いかけようとしてるのか」
セフィーロ兄がしたり顔で言った。
ほうほう、なるほど。
そういう理由で出ていけば差し障りがないのか。
「ええ、実はそれで最近がんばっています」
テルルは頷いた。
「そうかそうか、テルルはユキナが好きだったもんなぁ」
「いなくなってからテルルも男らしくなってきたってところか。ユキナに見せてやりたいなあ」
適当に話を合わせながら、畑仕事を終えた。
さて、自由時間だ。
レベル5になり、そろそろ牛退治が見えてきた気がする。
いや、まだ早いか。
森を歩いて、もう少しレベルを上げよう。
「よしよし」
【
レベルが上がって、各種ステータスが伸びているおかげもあろう。
それでも魔法を使わず狩れるのは、大きな成長だ。
これでトレント狩りの制限がなくなったので、一気に効率が上がる。
そうやってトレントを見つけては殴り倒してを繰り返していると、アビリティカードをゲットできた。
~~~~~~~~~
【トレントのアビリティカード】
ランク:Normal
固有アビリティ:ウッドゴーレムを一体召喚し、共闘できる。
倒されると次回戦闘まで召喚できない
ステータスアビリティ:防御力+2%
~~~~~~~~~
「おお」
トレントの固有は【部下召喚】か。
最弱召喚のウッドゴーレムといえど、【
このカードは値がつきそうなので合成に回さず、【ゴブリンのゴールドカード】を外して己の装備にした。
試してみようとゴブリンエリアに戻り、棍棒を持ったゴブリンを見つけたので、ウッドゴーレムを召喚してみた。
召喚自体は3秒もあれば可能だ。
「コーホー……」
現れたウッドゴーレムが、ゴブリンと対峙した。
なにか、我が子の戦いを見ているような気分だ。
「ギギッ」
「……コーホー……」
微笑ましいまでの、下等な殴り合いが始まる。
相手がゴブリンだと、かなりいい勝負だ。
【
「おお」
5分ほどの長期戦のすえ、ゴブリンを倒すことが出来た。
「よくやった」
ボロボロで左腕が取れたウッドゴーレムの頭を撫でる。
出してみて気づいたが、ウッドゴーレムはすぐに消え去ったりはしないようである。
説明によると、約30分ほどで消え去り、再召喚は消滅の5分後から可能らしい。
連戦時いちいち出す手間がないのはありがたい。
まあ、今はボロボロなのでいったん仕舞うのだが。
その後、トレントエリアの少し奥で「レッドエイプ」という赤い毛の大猿と、「イエローエイプ」という黄色毛の大猿の魔物を見つけた。
「素早いな」
レッドエイプは俊敏で、木と木を飛び回りながら石を投げてくるのだが、石を拾いに降りてきたところでフリアエの〈
「ウキィ!?」
足元がいきなり沼に変わり、レッドエイプが額まで沈む。
バシャバシャと水面で足掻くレッドエイプを沼が執拗に捕らえ続ける。
嵌ってみるとわかるが、フリアエが作る沼は生きている。
一度嵌ると簡単に出られないのは、そういうことだ。
ウッドゴーレムはそんなレッドエイプに追い打ちをかけて沈める係になっている。
レッドエイプからすれば、ウッドゴーレムは悪魔のように映ってるだろうな。
それはともかく、簡単に狩れた。
「ウホホ……!」
次にやってきたイエローエイプは隆々としていて、胸をドラミングしながら地の上をのしのし歩いてきた。
それだけに、沼に嵌って同じ目に遭う。
「――ウィキィ!?」
この日はひたすらエイプ、そしてトレントを狩りまくった。
イエローエイプが特に経験点が高いらしい。
相手の動きに慣れてきたので、沼を使わずに矢で狩る。
そうやって百を超える猿狩りができたこともあり、帰る頃までにレベルが2つ上がり、レベル7になった。
ドロップアイテムも新しいものが手に入り、食用にできる木の実や、調合に用いる
――――――――――――
<本日の収穫>
西部樹海産ユメキノコ 16本
¥6284
芳醇な木の実 28個 (苦いが栄養価が高い木の実)
矢 8本
茨の蔦 12本
トレントのアビリティカード(Normal) 1枚
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