第12話 気遣い魔王 大きく成長する



〈イリアスの森の主、『狂気の牛マッドホーン』のマリクを討伐しました。エリアボス討伐達成により、経験点に『追加ボーナス』が入ります〉


〈称号【西部イリアス樹海の王】を手に入れました〉


「こんなに上がるのか」


 なんと8から一気に18にレベルアップした。

 『追加ボーナス』があるにせよ、上がりすぎだ。


 もしかしてこいつ、レベル30以上だったか?


 確かにそのレベルでフリアエの〈死の沼カルダノ〉から抜け出すとか、ありえないか。


 なおレベルアップに伴い、HPやMPは全快するので、己の負った深手もすべて治癒されている。


〈新しいスキルを覚えました〉



【斬撃2】……攻撃力の160%の威力で敵を斬りつける

 対象武器 剣

 再使用時間 40秒


鉄衛アーマード2】……自身もしくは味方のHP、防御力を5分間15%上昇させる。

 再使用時間 30秒



 レベル10を超えたので、スキルが強化された。

【斬撃2】は威力が10%アップ、再使用時間5秒短縮。

鉄衛アーマード2】は効果が5%アップした。



 まあそんなことよりドロップだ。

 己は倒れた牛の傍にかけ寄る。


「おお」


 一番最初に目についたのは、アビリティカードだ。

 青色に金色の縁取りがされたもので、猛る牛が突進している絵が描かれている。

 そう、ランク【Rare】、しかもゴールドレア。


「こいつ、レベル50以上あったのか」


 レベル30ならどう頑張っても【Normal】の1段階上、【Common】がいいところだからである。


 カードの性能はこんな感じだ。

 なお、Rareなのでアビリティスロットは各3つずつだ。



 ~~~~~~~~~


【『狂気の牛マッドホーン』マリクのアビリティカード】


 ランク:Rare(金)


 固有アビリティ:他の固有アビリティを強化する(中)

 固有アビリティ:

 固有アビリティ:


 ステータスアビリティ:HP+10%

 ステータスアビリティ:

 ステータスアビリティ:


 ~~~~~~~~~



「ほう……これは」


 かなり高値で取引されそうな能力だ。

 ステータスアビリティもHP上昇と誰にとっても嬉しい効果になっている。


 この固有アビリティは魔王ですら初見の能力である。

 間違いなくゴールドレアだからであろう。


「うーむ、迷うな」


 こうなると、己につけるか、リリスのカードに合成してフリアエにつけるか迷う。

 明らかに効果が高いのは、リリスのカードに合成する方法だろう。


 しかしそうすると、このカード自体を合成で失ってしまい、二度と自分につけることができなくなる。

 【Rare】が持つ空きスロット枠2も失くしてしまう。


「当面は己に付けておく方がメリットは多いかもしれぬな……」


 ひとまずは安泰な選択肢を取っておくか。

 己につけておけば、後で好きな時に変えられる。


 というわけで、さっそく装備する。

 ウッドゴーレムはもう少し使いたいので、トレントのカードを合成することにした。

 ついでに、イエローエイプのゴールドレアのカードも合成しておいた。



 ~~~~~~~~~


 テルル装備中)


【『狂気の牛マッドホーン』マリクのアビリティカード】


 ランク:Rare(金)


 固有アビリティ:他の固有アビリティを強化する(中)

 固有アビリティ:ウッドゴーレム→???を一体召喚し、共闘できる。

 固有アビリティ:エコーロケーション(Lv1→3)


 ステータスアビリティ:HP+10%

 ステータスアビリティ:防御力+2%

 ステータスアビリティ:運+2%


 ~~~~~~~~~



「よしよし」


 固有アビリティの他2つが伸びている。

 エコロケLv3はこんな感じだ。



【エコーロケーション】Lv3 …… パッシブアビリティで40メートル範囲で超音波を放ち、他者の位置を同定できる



 効果範囲が20メートル拡大。

 さらにパッシブ化しているため、いつでも好きな時に効果を把握できるようになった。

 素晴らしい能力になったな。 


 トレントのカードも効果が上がっている。

 なんとウッドゴーレムではなく、別の魔物になるらしい。


 後で試してみよう。


「また死にづらくなったな」


 ステータスアビリティと、レベルアップしたフリアエの加算分もあって、HPがメキメキ伸びた。

 そりゃレベルが10も上がれば、強くなるわな。


「懐かしい……」


 1500年も同じレベルで生きていると、こういうのが新鮮だな……。


 さて、求めていた牛肉だ。

 牛をアイテムボックスに放り込む。


〈角が武具育成素材となります。取り出しますか〉


 OKをしておく。


〈肉身、内臓が食用として利用可能です。取り出しますか〉


 これはやめておく。

 お別れの品にするのに、スライスされた肉とかホルモンとかが並んでたらビビるだろう。


 血抜き処理だけして、そのままドンと置いておくのがそれっぽいはずだ。


 他のドロップはお金、素材となる鋼鉄、銀などが落ちていた。

 折れてしまっただけに剣が欲しかったが、武器防具そのもののドロップがなかったのが残念。


 まあ十分なドロップか。

 贅沢は言うまい。




 ◇◆◇◆◇◆◇





 帰り道、ゴブリンに遭遇したので、ウッドゴーレムを召喚してみた。

 何に変わったかな。


「おお!?」


 全く違うものが出てきた。


 ストレートの緑の髪を生やし、髪にスイレンのような白い花を添えた少女。

 背丈は120cmほどだが、上半身は人で、下半身は木になっている。


 右手には同じくスイレンの花がついたワンドを持ち、なにか一心に詠唱を始めている。


「お前、女の子だったのか……」


 表記を確認すると、ウッドゴーレムではなく、『ドライアド』になっていた。


 ドライアドの詠唱が完成すると、ゴブリンは地面から出てきた蔦に絡まれ、動けなくなった。


「おお、〈植物の戒めドライアドルーツ〉ではないか」


 己の言葉が聞こえたらしく、少女はこちらを振り向いて、やりました、とばかりに右手を上げ、満面の笑顔になった。


 いや、可愛すぎるだろ。

 娘かよ。


 ドライアドは木の根の部分をカサカサと動かして移動し、勇ましくゴブリンをワンドで殴りに行くが、棍棒で殴られる姿は見てられないので、倒してあげた。


 ドライアドはにっこりして、己の脚にすり寄ってくる。


「予想外すぎる……」


 その頭をなでながら、己は呟く。


 まさか、あのウッドゴーレムがこんな可憐な少女になるとは。

 一応ステータスを見ておこうと思い、開く。


 名前はナッコというらしい。


「む」


 驚いて、食い入るように見る。

 ドライアドはステータス欄にレベル1と表記されていたのだ。


「……お前、成長するのか」


 レベル1の経験点必要量が隣に書かれている。

 今ゴブリンを倒したので、もう一体倒せば上がる計算だ。


「おいおい」


 あの牛のアビリティカードでこんな事ができてしまうのか。

 なにもわかっていないナッコは、ただ己を見てニコニコしている。


 ステータスをチェックしていくと、なんとカード装備も可能だ。


「とりあえずこれな」


 ひたすら懐いてくるナッコに、余っていたユメキノコのカードをつけてあげた。



 ~~~~~~~~~


 ナッコ装備中)


【ユメキノコのアビリティカード】


 ランク:Normal


 固有アビリティ:相手の命中率を3%低下させる

 ステータスアビリティ:精神+2%


 ~~~~~~~~~



 ナッコはフリアエに経験点を吸われるとかはないので、帰り道に何体かゴブリン(とホーンラビット)と戦っていただけですぐレベル4になった。



 ――――――――――――


 <本日の収穫> 


 大水牛  320cm 良型

 ホーンラビット 34cm 良型

 ホーンラビット 32cm 良型


 西部樹海産ユメキノコ 22個


 鋼鉄 2kg 13個

 銀 500g 6個


狂気の牛マッドホーン』のマリクの角 2 (希少素材)


 ¥26143


狂気の牛マッドホーン』のアビリティカード(Rare)(金) 1枚



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