第2話 ダンジョンガールズプロジェクト

「ぶっちゃけ、うち、財政難なのだ」


「はい、知ってます」


それは、この王国フランが過去100年に渡って多大な不幸を被ってきた影響だった。


1000年に一度の豪雨が10年に一度のペースで到来したり、大盗賊団が国内で誘拐事件やら奴隷売買やらを繰り返してくれたり、貴族が横領やら独占行為やらを連発してくれたり、ダンジョンのスタンピードが何度も発生したり、そういう影響で治安が悪化して犯罪率が増えたり……


まぁ、とにかく、色々あって王国は貧乏なのだ。


世界一の借金国とすら揶揄されている。


「特に犯罪率とダンジョンがネックでな。

犯罪者も捕らえるのにコストが掛かり、牢屋で飯を食わせるだけでも金が掛かる。

ダンジョンのスタンピードを防ぐにしても、うちはダンジョンの多さに反して冒険者の人数が圧倒的に足りない。

そこで!

犯罪者にダンジョンを攻略させる事でこの2つの問題を解決させるのだ!

犯罪者は労働力だ!」


(なるほど、言いたい事は分かるけど……)


ダンジョンのスタンピードというのは、つまりダンジョン内に生息する魔物が許容量を越え、ダンジョンの外にまで溢れ出す状況だ。


これを防ぐには、定期的にダンジョンを攻略して魔物を減らす必要がある。


優秀な冒険者は強者がいたり金払いが良かったりする他国へ向かってしまう。


需要に反し、王国は冒険者の人数が圧倒的に足りていないのだ。


犯罪者を戦力にしてしまえばそこの問題を解決出来ると踏んだのだろう。


しかし


「なんで美少女限定?」


「だって視聴者に放映するなら、見栄えの良い女の子の方が良いだろう?」


国王がドヤ顔をした。


「放映……」


「うむ、美少女達の攻略風景を魔導液晶(テレビ)にて有料放映し、ガンガン稼ぐのだ!

うちの懐、めっちゃ赤字だしな」


「それ、男連中は結局牢屋暮らしと……」


「あ?男なんざ鉱山掘らせときゃ良いだろ」


(雑だな!)


「そして、ライズには液晶撮影装置(カメラ)を持って参加、美少女犯罪者達の攻略状況を監視しつつ、撮影してほしい」


(なるほど、私なら暗殺という明確な罪があり、犯罪者達に紛れ込ませるには最適だ。

だが……)


「その作戦には大きな穴があります」


「何だね?」



「私、男ですよ?」



昔から、勘違いはされやすかった。


男とは思えない小柄な体格、桃色がかった金髪は肩まで伸び、顔立ちは美少女と断言できるほど可愛らしい。


ライズとしては不本意だったが、任務の為に女装した事もある。


国王は大きく目を揺らした後


「安心しろ、言わなきゃバレない」


「いくら犯罪者とはいえ、女性ばかりの中に男が混ざるって倫理的に不味くないですか……?」


「バレなきゃ良い。

ちなみに、万が一バレたらお前の命は物理的になくなると共に社会的にも死ぬ」


「いっそ今現在殺された方がマシですよ」


「それがまかり通るとでも?」


ライズは目を細める国王に息を小さく吐いて「いいえ」と否定した。


結局は、これも仕事の1つなのだ。


どうせこのまま放っておいても処刑するだけ、せめて最大限に役立てようというのだろう。


(それなら、私に言える事はない)


それに、女装の仕事ならなかったわけでもない。


今回もそれと同じだと思えば良い。


「ちなみに罪人達には、ダンジョンを攻略し、著しい成果を成した者には恩赦を与えると言い含めている。

もちろん、お前にも適応される」


「良いのですか?罪人に」


「それぐらいでもしなければやる気になってくれんだろう。

それに、秘密裏に監視も付けるつもりだしな」


ジッと見つめられる辺り、その監視もライズに任せるつもりなのだろう。


「……分かりました、その任務、謹んで承ります」


「うむ、期待しているぞ!」




こうしてライズは処刑される事なく、罪人の少女というていでダンジョンの攻略と、他の罪人の監視をする事となったのだった。

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