第16話 遠い世界ではそれをチートと呼ぶ

リースレットに属性魔法の師事を頼んだところ、2つ返事で了承してくれた。


「代わりにさっき稼いだお金、5割ぐらいあたしにちょーだい」


なんて図々しく言って来たが。


ティナはそれを快諾してしまった。


そして、魔法は実戦で覚えるのが1番楽、などという理由で1階層の魔物出没エリアにて特訓することになった。


ライズは護衛と監視を兼ねて同行。


「えっと、とりあえず基礎的な属性魔法の使い方だけど……グッとしてパッとしてドーン!ってすりゃ使えるから」


「ダメだ、この人教師には壊滅的に向かないタイプだ!」


「あはは〜、ってか、あたしも魔法なんて本パラッと見れば覚えられたしさぁ、教え方とかよく分かんないんだよねぇ」


(あ〜、典型的な天才タイプかぁ……)


「というわけで、ティナちゃんも見て覚えて!

魔法なんて所詮、魔力とイメージが大事なんだからさ。

本に書かれてる事はそれに理屈を付けて、効率的に使えるようにしてるだけ。

極論、魔力とイメージがあれば魔法は使えるから。

コスパ最悪になるだけで」


リースレットはそう言って、手を宙にかざす。


「ホーリー」


唱えると、手のひらに光が発生する。


「これが光魔法初級のホーリーね。

効果は光るだけ。

ただしアンデットにぶつければダメージにはなる。

覚えるのは簡単だけど、限定的にしか役に立たないから不人気魔法なんだよねぇ」


「へぇ」


ティナは光をまじまじと見つめる。


「んで、次が……セイントレイ」


唱えると、手のひらに光が急激に収束する。


リースレットが手のひらを壁に向けると、光は一筋の直線を描いて壁を穿った。


「見ての通り、こっちはかなり強い攻撃魔法だね。

光だからモーションも少なくて回避は困難だし、ゴーレムの防御だって貫けるよ。

ただ、コスパは悪いし、光適正の高い人間でも覚えるのは難しいみたい。

ま、あたしは天才だから覚えたけど」


「な、なるほど……それで、上級魔法はどんなのですか?」


ティナが興味津々に尋ねると、リースレットは気不味そうに頬を掻いた。


「そこまではあたしも覚えてない。

そもそもあたしは水適正の方が高かったし、光魔法も得意な部類とはいえ中級が限度だったの」


「そうですか……」


「一応、情報だけ与えると、光の上級魔法の名称はジャッジメントバースト。

広範囲に渡って、味方以外の敵を攻撃する、上級魔法としては最高威力とされる魔法よ」


「ジャッジメントバースト……」


「ま、今のティナちゃんには関係ないし、中級まで覚える事を考えれば良いと思うよ?」


「はい、分かりました!」




その後、理論も理屈もあったもんではない講義を受けたティナは、あろう事か1日にして中級魔法まで習得してしまった。


覚えるコツはティナ曰く、


「キュッとしてパッとしてドーン!としたら上手く行ったよ!」


「そんなんで魔法使えたら誰も苦労しないんだけどね……」


何はともあれ、ティナの戦闘力強化によってパーティの安定感は大幅に上がるのだった。

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