第33話 あまり変わらんパーティ構成

ユティア・ヒーリンレイス、かつて妹を貶め、偽りの聖女の座に収まっていた悪女。


土の迷宮に送られたとは聞いていたが、まさか入ってすぐに遭遇するとは思わなかった。


純白のローブと白のワンピースに身を包んでいた彼女は、現在では胸元や生足を露出した黒のドレスを身に纏い、黒のケープを身に着けている。


残念な事にささやかな胸元と、胴回りとさほど違いのない腰回りの影響であまり色気はない。


しかし、露骨に清純を気取った白の衣装などよりこっちの方があからさまに似合っていた。


「ふん、さぞかし清々してるでしょうね、あたしはご覧の通り、無様に惨めにダンジョンという名の牢獄暮らしよ!

あんたらのせいでね!」


ドンッ、とユティアは地べたに一升瓶を置く。


胡座あぐらを掻いてグチグチと文句を言う姿は、酔っ払いの親父を彷彿とさせた。


(なんで私は、こんな奴の愚痴を聞かされてるんだろう)


「ってか、君未成年だよね?酒飲んで良いの?」


「あ?良いわけないでしょ?

でもこんな穴ぐらじゃこれしか楽しみがないのよ!

酒って良いわよぉ?

どんな地獄でも忘れて楽しい気分になれるし。

クッ、この快楽を、もっと早くに知りたかったわ」


「身体に悪いから止めた方良いよ、それと、未成年の飲酒って犯罪だからね?」


「だから何?

どーせあたしが、日の目を見る事なんて永遠にないんだから、多少罪が増えようがどうでも良いでしょ?」


そう言ってゴクゴク一升瓶を煽る。


「完全にやさぐれておるな……。

というか、キャラバンの奴らはなぜ未成年に酒などを……」


「あ?そんなのいくらでも抜け道あるわよ?

賄賂ワイロ握らせるとか他の冒険者に買わせるとか料理用って言い張るとか」


「罪を償わせるはずが、逆に犯罪の温床だな……」


アリスティアは呆れ果てた。



「あ〜!ライズにアリスティア!来てたの!?」



ダンジョンの方から声を上げて近付いてきたのはリースレットだった。


「ユティアちゃんに聞いたよ〜?

やっぱティナちゃんの方が聖女様だって?

そりゃああんなお人好しで金より人命優先する子、悪役令嬢なわけないもんね〜」


ケラケラと笑いながらライズの肩を叩くリースレットにライズは思った。


(こっちは酒飲まなくても酔っ払いみたいだな)


「んで?恩赦貰ったはずの2人がなんでまたダンジョンに?」


「うむ、ちょっと王国を救いに来た」


ちょっと近所へ買い出しに来た、のテンションでサクッと簡潔に言うアリスティア。


「あ、了解、分かったわ」


そして一瞬にして意図を理解するリースレット。


(意思疎通凄いな……!)


「んじゃパーティ組まない?

やっぱ慣れ親しんだ同士の方が連携確認の必要もないし、楽でしょ?」


「……私は構わないけど、アリスティアは?」


「うむ、お主なら実力も充分だしな」


性格的には守銭奴クズとはいえ、リースレットの能力は高い。


ライズ達の事情を知っている事を加味して、断る要素はなかった。


「あ、でもこうなるとヒーラーがいないか」


ライズは困り顔を浮かべる。


水の迷宮ではティナがヒーラー役をしてくれたが、今回彼女はいないのだ。


「はぁ、ヒーラーだけ、新しく探さないといけないのか……」


「?探す必要なくね?

だってすぐそこにいるじゃん」


リースレットはそう言って、そばで胡座を掻いて酒を飲むユティアの肩へポンッと手を置いた。


「ね?ユティちゃん?」


「はぁ……?」


こうして土の迷宮攻略パーティは結成されるのだった。

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