第34話 アンデットサモナー(違法)

1階層


土の迷宮だけあり、出てくるモンスターはロックボムと呼ばれる石型の魔物やゴーレム系統がメインだった。


石型の魔物は防御力が高い事が多く、ライズには非常に不利だった。


また、属性相性の悪いリースレットは水魔法は一切使わずセイントレイを連発している。


アリスティアは水の迷宮と変わらず、闇の魔法の剣で確実に1体ずつ減らしていった。


そしてユティアはスケルトンを3体召喚した後、後方へ退避していた。


「って、君も動いてよ!?」


「はぁ!?あたしヒーラーだし!

前線に立つとかありえなくない!?」


ロックボムに風の初級魔法をぶち当て、吹っ飛ばす。


それをスケルトンが骨の剣で殴るが、剣はポッキリと折れた。


まぁ、岩と骨がぶつかれば骨が負けるだろう。


「せめてもうちょっと役に立つ魔物召喚してくれないかなぁ!?

なんの役にも立ってないんだけど!?」


「うっさいわねぇ!

禁術舐めんじゃないわよ!

こちとら、代償なしで召喚出来る魔物なんてスケルトンとゴーストしかいないのよ!

これでも最大火力召喚してやってんだからね!」


「威張る事じゃないだろ!?」


やいのやいのと言い争う間に、やがて戦闘は終了する。


「はぁ、無駄に疲れた気がする……」


「あんた、大して役に立ってなかったけど?」


「私は防御力の高い魔物と相性が悪いの。

そっちこそ、役に立たないスケルトン召喚するぐらいなら攻撃魔法の一発でも撃ってくれれば良いのに」


「はぁ?あたしはヒーラーよ?

回復役がその他の事で魔力消費してどーするわけ?

まさか、お姉ちゃんを基準にしてるわけじゃないわよね?冗談じゃないわよ?

お姉ちゃんは魔力の多さと、適正の高さがあったからどうにかなったのよ。

あたしは回復魔法の適正は低いから、普通よりも魔力を大量に消費するの。

お姉ちゃんみたいな頻度であっちにこっちに魔力無駄遣いしたら、それこそいざって時に回復する魔力がなくなるの。

お・わ・か・り?」


畳み掛けるように言われ、イラッとしたがユティアの言う事は筋が通っていた。


本来、ヒーラーというのは緊急時以外は己の保身を第一とすべきポジションだ。


ライズもそれは知っていたのに、ティナという規格外なヒーラーに慣れてしまったせいで感覚が麻痺していた。


「……悪かったよ、ごめん」 


ユティアは目を見開いた。


「あんた、随分素直に謝るのね?」


「そりゃ、間違ってたのはこっちだし。

間違えたら謝るのは当然だしね」


「でもあんた、あたしの事嫌いでしょ?」


「嫌いだけど、それとこれとは別。

間違ってる事を間違ってるって認められない人間にはなりたくないから」


「……ふぅん、そう」


ユティアは何を思ったのか、ライズから視線を逸らす。


「あ、でも、そこまで魔力を節約したいなら、なんでスケルトンなんてあんな役に立たない魔物を召喚したの?

それこそ魔力の無駄だと思うけど」


「悪かったわね、役に立たなくて……。

まず、闇属性の魔物や悪魔の召喚は闇魔法に分類されるから省エネな事、あとは、媒介を持ってるからさらにコストを安く抑えられる事よ」


ユティアはそう言って、腰のポーチから紐に括り付けられたいくつもの骨の欠片を取り出す。


「魔物の召喚には本来、媒体……呼び出す対象の身体の一部が必要なの。

あたしは天才だから、媒体なしでも召喚出来るけどやっぱり媒体あった方がコスパは良いわね」


「へぇ……ところで召喚魔法って禁術なのに、そんなポコポコ使って良いの?」


「禁術なのは悪魔みたいな、代償の激しいものだけよ。

一般的な魔物を召喚するだけなら違法行為にはならないわ。

あんた、そんな事も知らないの?」


「うっ……悪かったね、勉強不足で」


ライズが気不味きまずくなり視線を逸らすと


「確かに、召喚魔法そのものは違法ではないな。

国によってはサモナーやテイマーという形で、魔物を使役する専門の職業も存在する」


アリスティアがそう補足してきた。


「……ただし、魔物を召喚、使役する行為はリスクが高い為、特別な資格が無ければ許されん。

テイマーやサモナーが戦闘職の間ですら知られぬほどマイナーなのはその為だな。

……ところで、ユティア・ヒーリンレイスよ、お主はサモナーの資格でも持っているのか?」


「ハッ、そんなものあるわけないでしょ」


「思いっきり余罪増やしてた、この人!」


そんなこんなで、元聖女を加えた初探索は終わるのだった。

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