2章 土の迷宮編
第32話 土のダンジョンに行こう
王国を呪いから開放する為、ライズは高難易度ダンジョン全てを攻略する事となった。
ガラガラと悪路を走る罪人輸送用の馬車の中にはライズ、アリスティア、寿がいる。
「たはは、結局恩赦はなかったでござるなぁ、残念無念」
なんて言いながらさほど残念そうでもなく、寿は頭を掻く。
「寿、土の迷宮に着いたらパーティ組まない?」
ライズはそう提案するが
「申し出は有り難いでござるが、拙者は一匹狼の身……遠慮させていただくでござる」
「ふむ、お主も分からんな、高難易度ダンジョンをソロ攻略などと」
「はは、あまり人と関わるのが得意ではないのでござるよ」
(そうは見えないんだけど……)
「寿は、どんな理由でダンプロに?
その、嫌なら話さなくて構わないけど」
「刃を握る者の罪など知れているでござるよ。
……拙者、人斬り故」
ふと、寿の表情に影が差す。
と、そこで馬車が停まる。
「どうやら、着いたようだな」
ライズ達は馬車を下りる。
目の前には剥き出しの巨大な岩に、天然の穴が大きく空いている。その中に、下り階段が見えた。
そこに、内部と外部を断つ檻と、見張りの監視役。
「って、あれ?クリコさん?」
戦斧を背負った大柄な女性は、確か水の迷宮の監視役だったはずだ。
「おぉ、てめぇらか。
国王から話は聞いてるぜ」
「あの、なんでここに?
確か水の迷宮担当だったんじゃ……」
「ちょっとここの監視役が怪我で長期休養しなきゃならなくなってな。
俺が駆り出される事になった」
クリコはそう説明し、ダンジョンの檻を開けた。
途端、穴の中から
「出口ぃぃぃぃぃ!」
と絶叫しながらダッシュしてくる犯罪冒険者の姿があったが
「ふんっ!」
クリコが斧を振るうと、風圧だけでその人物はゴロゴロと階段を落ちていくのだった。
「ほら、行きな」
クリコは何事もなかったかのように勧めてくる。
「ちなみに、お前等2人に関しては、頼まれればこっそり外に出しても良いとは言われてるけど、他の奴らの目には気を付けてくれ。
絶対、あれこれ邪推されるから」
「はい、分かりました」
頷いて、ライズ達は階段を下って行った。
階段を下ると、すぐに休憩室へ辿り着いた。
岩盤をくり抜いたようなスペースは円形となっており、中央に焚き火をする為の石枠。
周囲の壁には扉がいくつも建て付けられ、寝室はそちらにあるのだろう。
「なんだか、ドワーフの住むという地底国家みたいだな」
「地底国家……でござるか?」
首を傾げる寿に、アリスティアは頷く。
「ドワーフとは鍛冶の妖精と言われている。
そのドワーフは、普段地底に国を作って生活している……そんな逸話だな」
「逸話……作り話なのでござるか?」
「さぁな、過去に実在したという論文もあれば、そんなものは存在しないという論文もある。
我はいれば良いと思っている。
ドワーフは10歳前後で成長が止まるため、全員漏れなく合法ショタか合法ロリらしいぞ」
「それで言ったらホビットも同じだけどね。
子供から成長しない幻の種族って意味では」
「ホビットはただの永遠の子供だろう。
ドワーフはそのちっこい身体で大きな槌を扱うのだぞ?
ちんまい身体に大きな武器、これぞロマン!
トキメキというやつだ!」
(意味分からん)
とりあえず、アリスティアがドワーフ好きという事は分かった。
「では、拙者はそろそろ行くでござる。
ライズ殿とアリスティア殿の冒険に祝福あるよう、祈っているでござるよ」
寿はそう言ってダンジョンの方へ消えて行った。
「じゃあ私達も行こうか」
「うむ、そうだな」
「……ところで、後回しにしてたんだけどさぁ」
ライズは視線を向けた。
その視線の先には、先程クリコにふっ飛ばされてゴロゴロ階段を転がって行った少女がいる。
無様に転がった少女はでんぐり返しの姿勢でかぼちゃパンツを丸出しにしている。
「……何やってんの?ユティア」
「……うっさい、話し掛けんなこっち見んな人のパンツ国営放送すな」
不機嫌な声を出しながらゴロッと起き上がったのは黒髪の少女……ユティア・ヒーリンレイスだった。
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