第54話 エヴァンエテル家に行こう①
「エヴァンエテル家へ来訪する旨を伝えたら、了承してもらえた」
レオンに呼ばれ、応接室にはライズとリースレットがいた。
「これからあちらへ向かうから、2人には護衛役という
「はい、あたし行きたくないでーす!」
「拒否権ないよ、これ命令だから」
リースレットの要求はコンマ秒で却下された。
「まぁ、ライズを連れて行くのは僕の趣味だけど」
「堂々と言わないでくださいよ……。
まぁ、父さんの訓練を抜け出せた事は感謝しますが」
息子にはゲロ甘のエーデルガルトだが、部下への訓練は超絶スパルタという事でも部下には恐れられていた。
もちろん、暗殺者という危険過ぎる職業故に、中途半端な訓練では死に直結するから、というのは分かっているが。
それでもスパルタ訓練が好きだという人間はまずいないだろう。
「まったく、嘆かわしいばかりだ。
僕が公務だのなんだので可愛いライズと会えないのに、あのオッサンは毎日のようにライズにベタベタ……死ねば良いのに」
(本当に同族嫌悪だな……父さんとレオン様)
当たり前だが、王子相手にナイフを投げたり「死ね」などという暴言は吐かない。
「ま、護衛と言っても形ばかりだし、実際は僕の側でボーっとのんびりしてくれれば良いから」
「貴族の屋敷でのんびりって……」
「説教するような身内しかいない家でのんびりって……」
2人揃って微妙な顔をする。
その後、馬車の準備が出来ると3人はエヴァンエテル家へ向かうのだった。
公爵家の屋敷であるエヴァンエテル邸、そこは小さな城かというほど大きかった。
門番に通され、使用人に案内される。
リースレットは逃げようとしたので、ライズがその首根っこを掴んだ。
やがて、応接室に通される。
「ようこそお越し下さいました、レオン様、ライズ様、本来は我々が出向くところ、申し訳ありません」
屋敷の当主であろう男性は一礼する。
「構いません、出向きたいと申し出たのはこちらなのですから」
当主の男性にソファーを勧められ、レオンは腰掛ける。
ライズはその側に控えようとして
「ライズ、君は隣ね」
「えっ!?い、いや、でも私如きがレオン様と同じ席など……」
「君はもう暗部でも何でもないだろう。
エヴァンエテル卿も君の事は客人としてカウントしたんだし、何よりも君は隠蔽されていたとはいえ王族の血統だ。
そんな君を立たせる彼らの心労も考えなさい」
ライズは困惑し、エヴァンエテル卿を見る。
「はい、レイズ陛下のご子息であり、この国の英雄となるであろうライズ様を立たせるなど、ありえません。
どうぞ、ご遠慮なく」
「で、では、失礼します」
ライズはレオンの横に座った。
「んじゃあたしも……」
「貴様はバケツでも持って廊下に立ってろ!馬鹿娘!」
レオンとライズへの対応はどこへやら、娘には暴言をぶつける。
「ちょ、酷くね!?あたし娘ですけど!?」
「黙れ馬鹿娘!娘扱いされたかったらもう少しまともになれ!
昔から馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、まさか国宝まで盗むなど……」
「馬鹿馬鹿言わないでくれる!?
この天才美少女に対して馬鹿はなくない!?」
「何が天才だ!
才能の代わりに人として大事な人格を母親の腹に置き去りにしおって!
貴様がダンジョンで身勝手な振る舞いをする度にこっちは腹が痛むんだ!」
「あはは〜、そりゃあご苦労様〜」
リースレットは反省の意思もなく、ケラケラ笑っている。
「はぁ、ったく、お前は外に出てろ。
ルージュもお前に話があると言っていたしな」
「は?姉貴が?……分かったわよ、どうせ無視してもうざいんだろうし。
というわけで抜けるけど良いわよね?」
「構わん、僕はライズさえいれば他はどうでも良いからな」
リースレット卿かいるにも関わらず、レオンはそんな返しをする。
「じゃ、面倒なお話は野郎どもでどーぞー」
リースレットはそう言って部屋を出て行った。
「うちの馬鹿娘が迷惑掛けてすみませんね、昔からどうにも自由奔放で」
「まぁ、助けられる事も多いですけどね、彼女は優秀なので」
と、レオンが答える。
「そう言って頂けると幸いです。
まったく、どこで育て方を間違えたのか……。
人様に迷惑は掛けても、犯罪沙汰まで起こすほどアホではなかったはずなのに……」
リースレット卿は頭を抱えた後で
「と、娘の話は今は良いですな。
本題へ移りましょうか」
「はい、そうですね。
まずは、大魔女ベテルについてですが……」
「えぇ、大魔女ベテル……先祖とはいえ、我々は直系というわけではないですが。
彼女が、王神ゼオの妻であったという疑惑ですね」
エヴァンエテル卿は一拍置いて
「大魔女ベテル……本名、ベテルギーネ・エヴァンエテル……彼女は……王神ゼオの、妻でした」
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