第44話 ドワーフだからって剣が好きと思うなよ

「というわけだから、一緒に付いて来てくんない?」


ユティアの簡潔な説明の後


「鉱石がたくさん?

それも、綺麗なままの原石が大量に?」


「そうそう、採取したいんだけど、うちの守銭奴が価値を落としたくないから丸ごと欲しい、なんて言い出して……」


「……案内して。見てから判断する」


ニーシェはそう言って立ち上がった。


(無気力そうだけど、石は好きなんだ……)


ニーシェをパーティに加え、ライズ達は20階層へ戻る事にした。




その合間の戦闘だが、想像以上にニーシェは活躍をしていた。


まず、彼女の武器だが……


「ちょ、そのでかいハンマーどこに入れてたの!?」


「?収納リュック。

いっぱい入るお気に入り」


なんとニーシェは130にも到達するか怪しい背丈で2メートルにも及ぶだろうハンマーを軽々と操り、道中の魔物を倒しまくった。


砕いた岩も素材としてきっちり回収している。


「めっちゃ強いんだけど」


(なんで休憩所で雑用なんか……)


「強いんだけど、やる気ないのよ。

あの子、石とか素材は欲しいけど戦うのは疲れるから苦手なんだって。

そしたらほら、周りの冒険者の服洗ったり料理作ったりするだけで素材を貰えるって学習しちゃって……」


「あるんだ、そんな事……」


「ちなみにあたしもお姉ちゃんに倣って診療所で稼ごうとしたら、そもそもここのダンジョン、ユル勢が多すぎて怪我人が少ないし、「偽聖女の治療なんて受けられるか」って唾吐かれたわ」


「逆によく唾で済んだね……って、ここの犯罪冒険者達には偽聖女って知られてるんだ」


「あぁ、自分からバラしたわ」


ライズは絶句した。


「犯罪者相手に聖女ムーヴかますのも、面倒だし、痛々しくない?

犯罪者相手に一生懸命聖女のフリする偽聖女の絵面が国営放送されんのよ?」


「あ〜……うん、かなりきつそう」


なんて話している間に、20階層へ辿り着く。


「っっっ!宝の山……!」


ニーシェの目が、リースレット並に輝いた。


「でも、この量を原石のまま壊さないで持って帰るのは無理。

わたしのリュックにも入らない」


「そ、そんな……!」


リースレットが絶望に倒れ伏そうとすると



「だから、ここで加工する」



ニーシェはそう言うとリュックからツルハシを取り出し、ブンブンと振るった。


すると、床から生えた鉱石が根本からポロポロと採れていく。


さらに、リュックから工具を複数取り出したかと思うと、神速と呼べるスピードで鉱石を加工し、インゴットへと整えてしまった。


それを何度も何度も、無心に繰り返す。


ライズ達は、ポカンと見ているしかなかった。


やがて、どれだけ時間が経ったか、という頃に


「ふぅ、完成」


ニーシェは額をぬぐった。


目の前には、加工されてインゴットとなった鉱石が山積みされている。


「これなら持ち運びしやすい。

全員のリュックを使えば持っていける。

余分なところはカットしたけど、加工した方が価値は高いし利用もしやすい。

それと、手間賃代わりにわたしもいくらか貰うから」


有無を言わさずニーシェはインゴットをいくつか仕舞い込む。


「この人離れした手際……!

小さな身で軽々と振るわれるハンマー……!

ま、まさかお主……ドワーフか!?」


「違う」


即答された。


「ドワーフは武器が好き。

情緒も美的センスもない、あんなモグラと同じにされたくない」


(モグラって……)


「あなたは剣を使う。

武器を使う人間は、ドワーフと聞けばすぐ武器を作って貰いたがる。

それは嫌だから私はドワーフじゃない」


(それ、ほぼドワーフって自白してるのと同じなんじゃないかな?)


「我は武器を作って欲しいとは言わぬ。

いや、もしもドワーフが剣をくれるというなら感無量過ぎて家宝にするだろうが……。

我はドワーフという種族そのものが好きなのだ。

見た目と腕力のギャップも超魅力的だが、その幼子おさなごのような身体からいくつもの作品が生まれてゆく姿も憧れる。

我は不器用だからな。

だから、お主が武器が嫌いと言っても、細かく繊細な装飾類を作る姿すら我は愛おしいと思う。

我は、武器を作るドワーフが好きなのでなく、何かを生み出すドワーフに憧れているのだ」


普段のアリスティアからは考えられないほど、キラキラとした目で熱く語る。


ニーシェは何を思ったのか


「……そう」


と小さく反応して


「あなたの名前は?」


「む、アリスティア・ミスティロードだが?」


「アリスティア……うん、覚えた」


ニーシェは1人頷くと、我先にと帰路を辿って行った。


「あ〜、あれ、気に入られたかも」


ユティアが言う。


「気に入られたって、なんで?」


「あの子、あの通り普段は無気力だから、人の名前も覚えるのも面倒臭がるのよ。

だから、自分が興味持った相手じゃなきゃまず、名前なんて知ろうとしない」


ユティアはそう言ってから


「良かったわね、もしかしたら装飾品の1つぐらい作ってくれるかもしれないわよ」


「な、なな、なんと……!」


アリスティアは普段とは思えないほどに、破顔していた。


(これ、国営放送中なんだけどなぁ)


言わぬが花か、とライズは黙っている事にした。









____

あとがき


下書きのストックが切れて来たので今後、1話更新に切り替えます。

ストックが増えればまた2話更新に戻すかもしれませんが、現在コンテスト用の作品も執筆中なので厳しいかも……。

未完放置とならないよう、少しずつでも毎日更新出来るように頑張ります。

それにしても、ハーレムまでの道が遠い……。


PV1000超えました!

ここまで読んでくださった読者の皆様、感謝です!

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