第43話 ボス部屋の鉱石
20階層
闇魔法習得により苦手分野である火力が増したライズは、パーティと共に中ボスがいるだろう部屋へ侵入した。
しかし
「倒されてる……?」
そこには、巨体を地べたへ寝かせ、すでに死したドラゴンがいるのみだった。
「すでに誰かが倒したようだな」
「思い当たるとこだと、ことちゃんとか?」
誰だよ、ことちゃんって……と思ってから、寿の事だと思い至る。
「いやいや、いくら強いからって、ソロでボス倒すとかヤバいでしょ」
「うむ、敵にだけは回したくないな」
アリスティアが神妙な顔で、逆鱗を真っ二つにされたドラゴンを見ていると
「そんな事よりここ凄くね!?
お宝の山じゃん!」
空気をぶち壊し、リースレットが興奮気味に声を張り上げる。
それもそのはず、このボス部屋は、壁に沿うように大量の鉱石が生えていたのだ。
「ヤバいどうしよう全部持って帰りたい!
いっそ魔法で砕いて……あぁ、ダメ!
そんな事して下手したら価値が下がる……!」
「まぁ、でも仕方ないんじゃない?
そもそもこんなに大量にあっても持ち運べないし、先っちょのところ砕いて持って帰るしかないでしょ」
ユティアがそう言うと、リースレットはビシッと指を差して
「そんなん絶対ダメ!
ダンジョン産の天然鉱石がどんだけ価値あると思ってんの!?
しかもこの純度!このサイズ!
売ったら一生遊んで暮らせるものの価値を自分から下げるとかぜっっっったいあり得ない!」
「前々から思ってたけど君のその守銭奴なんなの?
公爵令嬢だよね?」
「令嬢ったって自分で自由に使える金なんてたかが知れてるもん。
魔導具とか新術の研究とか、個人でやるのにどんだけ金掛かると思う?
国家級の予算なんていくら公爵家だって持ってないし、そんだけの金があっても常に研究の成果が出るとは限らないの。
つまりあたしは金が欲しい」
「は?魔導具や新術の研究って、お主、そんな事してたのか?」
「およ?言ってなかった?
まぁ、言う意味ないしね。
ってか、そんぐらいの事しなきゃここまで金金言わないし。
自分でも思うけどあたし、かなり不自由ない生活送ってきた一流お嬢様なんで」
「でも、それなら学者なり研究者なりなれば良いんじゃないの?
君の言うように、魔法の研究は国家レベルの金が掛かる。
だからこそ、魔法の研究をしたい学者は国立 大学の教授や王国学者になるわけだし」
「はぁ、分かってないなぁ。
そんな事したら自由に行動出来ないじゃん。
基本、国が求める魔法ってのは、高い予算を投資する価値に合う、汎用性が高くて将来的に予算分を回収出来る見込みのある魔法なの。
特定の人間だけが使える特殊過ぎる魔法とか、趣味で作れる実用性皆無な魔法なんかに国は金を出さない。
それに、国仕えになったら論文書いたり研究所に入って他人の意見にも左右されなきゃいけないし、講演会とか貴族のパーティとか、面倒なものに参加しなきゃいけない。
結論、自力で金を稼いで自力で好きな研究をするのが1番だと判断しました!
というわけなんだよねぇ」
最後はおちゃらけられたものの、途中までの真顔でのマシンガン発言にこれはガチだな、とライズは悟った。
「とはいえ、これだけの鉱石を全て持ち出すなど不可能だぞ?」
「だからって適当に砕いて価値下げたくないし!
こんだけの鉱石よ?
まともな職人が加工したら研究用素材にもそのまま使えそうだし、無駄にするとかあり得ない!」
「あ、それならニーシェに頼む?」
ユティアがナイスアイデアとばかりにポンッ、と手を打つ。
「は?いやいや、何言ってんの?
あんな小さな子、わざわざここに連れてこれるわけないから。
危険だし、いくら手先が器用って言ってもこの鉱石を上手くカットするなんて……」
「まぁ、そこは聞いてみないとだけど……ライズ、あんた勘違いしてない?」
「は?」
「ニーシェ、別に弱くないわよ?
何なら、このダンジョンに送られた罪人の中でもかなり強い方」
ユティアの言葉を飲み込むのに、ライズはしばらく時間が掛かった。
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