第45話 ドワーフ娘をパーティへ
24階層
四方からのっそのっそと襲いかかる土のエレメントゴーレムにライズ達は苦戦していた。
「待って待って待って、こいつら防御力高過ぎない!?」
とうとう役立たずのスケルトン召喚では1ダメージにもならないと悟ったのか、ユティアも闇魔法で攻撃役に回っている。
お陰で火力は増えたものの、ゴーレムはそれ以上に硬い。
「たはは……中級魔法で有効打にならないとか、絶望過ぎっしょ?」
リースレットはセイントレイを撃ちながら途方に暮れている。
アリスティアも似たようなもので、剣で必死にヒットアンドアウェイを繰り返してちまちまダメージを与えるものの、決定打にはならない。
「ダークソード!」
ライズも覚えたての闇魔法で攻撃する。
風や土魔法を使うより、闇魔法の方がダメージは大きい。
「チッ、面倒ね!
ちょっとあんたら!少し遠くに行ってて!」
「へ?なんで!?
あ、もしかしてユティちゃんが囮になって逃してくれるとか!?
うそっ!ユティちゃんそんなキャラじゃないじゃん!
むしろあたしらを囮に使ってでも自分は生き残ろうとするタ……」
「うっさい守銭奴!
上級魔法ぶっ放すから避難しろって事!」
その言葉に3人は顔を見合わせた。
そして、言われた通り戦線を離脱。
「ブラックホール!」
闇の渦が広範囲にゴーレム達を飲み込む。
(あれは……パーティいる間じゃ絶対使えないよなぁ)
ライズは前にユティアが言っていた事を痛感した。
やがて魔法が消えると、ユティアの元へ戻る。
「ちょ、素材落ちてないじゃん!
こんな粉々になったら売っても金にならないし!」
オーバーキルと言わんばかりに粉々の屑と化したゴーレムを前に、リースレットは抗議する。
「うっさい、仕方ないでしょ?上級魔法は火力が高すぎるのよ。
しかも闇魔法は属性魔法トップの火力なのよ。
こうもなるわよ」
「開き直んなぁ!あぁ、あたしの魔石ちゃん……」
(別にリースレットだけのものでもないんだけど)
「こいつらと渡り合おうなんて思ったら、よほどの攻撃力か風の魔術師が必要よ?
もちろん、ライズみたいな雑魚と違ってちゃんと専門的な魔術師ね」
「悪かったね、雑魚で。
どうせギリギリ中級が使える程度で、適正は低いよ」
むしろ、長年使い続けてきた地魔法や風魔法をよりも最近覚えた闇魔法の方が使いやすさも火力も圧倒的に上なのだ。
適正というものの凄さを知らされる。
「まぁ、本来中級魔法自体が少数の人間にしか到達出来ない領域だからな?
ただ、このダンジョンを攻略するにはそんなレベルでも足りないというだけだ」
アリスティアがフォローにもならないフォローを入れる。
「あ、攻撃力必要ならニーシェに頼めば良いんじゃね?
ほら、あの子ハンマーでガンガンゴーレム砕いてたし」
リースレットが思い浮かぶが
「確かに、ニーシェなら頼りになるわね……。
でも、たぶん無理よ、あの子、鉱石とアクセ作り以外はマジで興味ないんだから。
絶対、面倒臭いって断るわ」
「そこはほら、あれこれ言い包めてさぁ」
なんて、悪どい表情を浮かべるリースレットにユティアは呆れた。
「こいつ、仮にダンジョン攻略出来ても絶対恩赦貰えないでしょ」
「君も無理だけどね」
「あたしは良いのよ、一度ダンジョン攻略して日の光浴びられれば。
そしたらまたダンジョン籠もって酒とギャンブルに溺れた生活を送るわ」
「ここまで開き直られるといっそ清々しさすら感じるな」
アリスティアは頭を抱えながら言った。
その後、ライズ達はダメ元でニーシェを誘う為、休憩所へ帰る事にした。
そして、休憩所にて
「いや」
簡潔な返事の後、ニーシェは自前の台座の上でインゴットを加工し始めた。
「あたしらに付いて来ればダンジョン攻略出来るとしても?」
「興味ない」
リースレットの言葉に即答した。
「だから言ったでしょ?
こいつはあたしと違って穴ぐら大好きなんだから、そもそも攻略する気も恩赦狙う気もないの。
無駄無駄」
(まぁ、ドワーフって地底国家出身だしなぁ)
「でもさ、奥の階層ならレアな鉱石だってゲットしやすいと思うよ?
これ、あたしがオーバーキルしちゃってほとんど砕けちゃったけど」
ユティアは倒したエレメントゴーレムから回収出来た、ギリギリ粉ではなく小石と呼べる程度の欠片を差し出す。
「……っ、この魔力は……かなり、純度が高い……!」
「さすがに20階層を超えると他の冒険者でも行けるパーティはほとんどいないし、ここにいても手に入らないと思うわよ」
ニーシェはむむ……と小石を見て、唸った。
「……分かった、手、貸す」
「ありがとね」
「でも、わたしは攻略に興味ない。
ここ、住みやすいし」
「まぁ、あたしも太陽見れない事以外は不満ないのよねぇ。
パッと攻略したらパッと戻って来るつもり」
「ここ、罪人の収容所代わりでもあるはずなんだけどなぁ」
ライズはなんとも言えない表情を浮かべながらも、ニーシェのパーティ入りを歓迎するのだった。
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