第46話 ニーシェの事情
30階層
「うっわぁ、あっさり着いちゃった……もうニーちゃん様々やんけ〜」
リースレットがそんな事を言い出すのも無理はない。
ライズ達が苦労したゴーレムも、その他魔物も、ニーシェは片っ端からハンマーで倒して来たのだ。
「この程度の硬さのゴーレム、地元じゃ慣れてるから」
「地底国家ってどんな魔境なの?」
ライズは疑問を抱く。
「ふむ、そういえば、我の読んだ本では地底国家には多数のゴーレムが住んでおり、それらはドワーフにとって資源となっているらしい」
「わたしは、水のエレメントゴーレムが好き。
素材も綺麗で、アクセ向き」
「あ〜、純度の高い魔石だと、本当に宝石みたいで綺麗だもんねぇ、ちょっと気持ち分かるかも」
リースレットがうんうんと頷いていた。
(アクセサリーとか宝石か……私は、あまり興味ないかな)
仕事の都合上、知らなきゃいけない事もあり最低限は勉強したもののライズはあまり、光り物に興味はなかった。
(まぁ、これが男と女の差、なのかな)
と、そこでニーシェがジッと見てくる。
「わたし、それの色も好き」
「それって?」
「耳のやつ」
言われてドキッとした。
それは、罪人の撮影用カメラだったから。
見た目にはシンプルなイヤリングにしか見えないだろうが、指摘されるのは心臓に悪い。
「良い石使ってる。
それ、かなり腕の良い職人が作ってる」
「へ?そうなの?」
(まぁ、陛下から預かったものだし、安物じゃないとは思ってたけど……)
「装飾したい、わたしに預ければもっと可愛く出来る」
「あはは……私はこれが気に入ってるから……」
アクセが絡むとグイグイ来るな、と思いながらライズはやんわり断った。
見た目は綺麗な石だが、実態はカメラなのだ。
下手に渡して良いものではない。
「そーいえばさ、ニーちゃんはなんで犯罪者なったの?」
リースレットが唐突に、デリカシーもへったくれもなく尋ねた。
「……ダンジョン潜って宝石掻き集めたら、窃盗扱いされた」
ライズ達は思わず同情の目を浮かべた。
「しかもその時、宝石怪盗なんて変な奴等が出没してて、訳の分からない罪まで押し付けられた」
「ご、ごめんなさい……?」
ライズは思わず謝ってしまう。
宝石怪盗……6属性に合わせた色を名前に付け彼等彼女等は、数年前から出没し、現在でも半分は捕まっていない。
さらに、宝石怪盗と言われて一緒くたにされているが、実態は6人全員が窃盗スタンスの全く違う個人であり、殺人や放火も厭わない極悪人から、わざわざ予告状を出して警戒させてから奪った挙げ句盗んだ宝石は返品する、なんていう変人までいる。
一応この怪盗事件の解決には国家も取り組んでおり、ライズも参加した事があるが、怪盗は揃いも揃って逃げ足が早く、そもそも足取りを掴む事すら困難だった。
ニーシェの言葉が真実なら、彼女の濡れ衣被害は間接的に、ライズ達が怪盗を捕まえられない不甲斐なさのせいだった。
「でも、結果オーライ」
ニーシェは通路の曲がり角からのっそりと出てくるゴーレムを見た瞬間に、ハンマーで頭を砕いた。
「ここ、暮らしやすいから。
良い住居」
「とうとう住居扱いしちゃった!?」
ドワーフすげぇ……しばらくそれしか感想が思い浮かばなかったライズだった。
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