第23話 王家のスキャンダラスなネタバラシ②

「我が国では昔から双子の王族は不吉の証とされていてな。

産まれて間もなくして行った属性鑑定では、ライズは闇の適正が強かった。

別に闇属性そのものは悪ではないが、それでも忌避きひする人間は多く、お前は捨てられる事となった」


「で、ですが、それならなんで私は王国の暗部として生きる事となったのですか?」


「……当初の大臣達との話し合いでは、お前は殺すべきだ、という意見が濃厚だった。

それを覆したのはエーデルガルト・リーディット……王国暗部の長であり、お前の養父だった」


「父が……」


しかし、いかに暗部の長とはいえ裏方の汚れ仕事人の言葉など、本来なら聞く義理はない。


「エーデルガルトは、私の兄だ」


「えっ!?」


「昔、王位継承争いで国が荒れた……まぁ、ここ100年は荒れない時代がなかったが、それに嫌気が差したようでな。

それでも本来なら公爵家に婿入りしたり自分で家を起こしたりも出来ただろうが、あいつは暗部になる道を選んだ。

為政者として人の死を選択する事と、暗殺者として人を直接殺す事、どちらも変わらんだろ、とな」


(あの人が……まぁ、言うだろうなぁ、あの人なら)


「まぁ、あいつの主な仕事は暗殺よりも人の弱みを探す事だがな。

私含め、あいつにはこの城の殆どの重鎮が弱みを握られている……と、ここのところはお前が詳しいか」


「はい……」


下手をしたら国王より実権が強い暗殺者。


それが、王国上層部の9割が抱く王国暗部の長への感想である。


「とにかく、そういう事でお前はエーデルガルトの元で育つ事となった。

まさか、暗殺者にまで育ててしまうとは思わなかったがな」


「それは、私の意思もありましたので」


別に、ライズは誰かに強制されて暗殺者となったわけではない。


養父は何度もライズに、暗殺者がどういうものかを厳しく教えてくれた。


それでも、ライズは影の道を選んだ。


(まぁ、あの時は、レオン様の役に立ちたかったから、なんて単純な理由だったけど)


いつか、レオンが王となった時、その手を血で汚させたくなかったから。


それぐらいなら、レオンが被る汚れを自分が代わりに被りたいと思ったから。


最も、そんな事を言えばレオンが発狂して変態化するのは目に見えているので言わないが。


「そんな……ライズが僕のいもう……弟?」


レオンが驚愕している。


(毎度思うけど、ナチュラルに私の性別を間違えるの止めて欲しい)


「そんな……それじゃあ、同性婚を可決しても夫婦にはなれないじゃないか……!

ライズが身内だったのは今この場で飛び上がって踊りたいぐらいに嬉しいけど、ライズと結婚出来ないなんてあんまりだ!」


「ツッコミどころしかない発言止めてください!

これ、現在進行系で国民に生配信されてるんですよ!?

というか、ここまでの話題、どう考えてもスキャンダルにしかならないヤバいネタしか出てないんですが!?」


「安心しろ、本番はこれからだ(キリッ)」


「何を安心しろと!?」


ドヤ顔の国王に思わずツッコミを入れる。



「実は、この国にある6つの高難易度ダンジョンは、うちの身内……ご先祖様が生み出したものだ」



「本当に特大級のスキャンダル!?」


「今より200年前だな……当時も、王家には双子が産まれた。

不吉の象徴である、という理由で双子の弟は捨てられる。

名を、ゼオと言ったか。

幸い、ゼオは高い魔法と戦闘の才能があった。

それを見初められ、暗殺者として幼少期から暗躍していたらしい」


「それって……」


(私と、同じ……?)


「しかし、ゼオは世界を……王家を恨んでいた。

そして、禁術を使い国へ呪いを掛けたのだ。

未来永劫、国に災いが降りかかるように、と願ってな」


「じゃあ、ここ100年、王国に災いが降り掛かる理由は……」


「まず、間違いなくゼオの呪いだ。

大陸規模の強力な呪いは発動に誤差があり、ゼオの生前には発動しなかったものの、今現在牙を向いている」


壮大過ぎる話に、ライズは内容を理解するのに時間が掛かる。


「さらに、ゼオはその魔力で己を大陸と同化……この国において、奴は神にも等しい存在になった。

それこそ、ダンジョンを生み出す事すら容易となった。

凶悪な魔物を定期的に排出する6つの高難易度ダンジョンは、奴の悪意そのものだ」


だが、と国王は一拍置いた。


「ゼオは、1つだけ救済の手段を残した」


「え?」


「ライズ、お前はアクアニアスという娘から秘宝を預かっただろう?」


「は、はい」


ライズの腕には細かい装飾の彫られた腕輪が嵌められ、その腕輪についたくぼみには青色の宝石が嵌っている。


「ゼオの残した救済とは、『王家の人間が6つの秘宝を全て集め、7番目のダンジョンを開放し、攻略する事』だ。

ゼオは、王家の人間への恨みと共に、贖罪を求めていた。

つまり、7番目のダンジョンを王家の人間が攻略する事で、ゼオに対する贖罪の証となり、ゼオの呪いは解けるのだろう」


「あのー、陛下はどうやって、その情報手に入れたんですかー?」


リースレットが軽い口調で聞く。


元公爵令嬢とはいえ国王相手に失礼極まりないが、国王は気にした様子もなく


「うむ、うちの書庫にゼオ本人の文献……というか、日記が残されているのだ。

今は重要な部分だけ要約したが、日記を読む限りではゼオは愛妻家だったらしいぞ」


果てしなくどうでも良かった。


「あの……もしかして今回のプロジェクトで、高難易度ダンジョン6つも含めたのは、ゼオの呪いを解く為だったんですか?」


「いや、特別そういう意図はなかった。

ただ、最深部の王家の人間以外を受け付けないという仕組みが都合良かったから利用しただけだ」


「え、それって……」


国王は頷いた。


「元々このプロジェクト、高難易度ダンジョンに割り振られた罪人に関しては生かすつもりはなかった。

王家の血筋であるお前……そして、アリスティア以外には決して攻略出来ないものだったのだ」

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