第20話 選ばれし者?
39階層
所要時間に直して1ヶ月半、ライズ達はようやく高難易度ダンジョン最深部直前までやって来た。
そのフロア奥には、青く輝く薄暗い1本の通路が伸びておりその先には巨大な扉があった。
「むむ……困ったでござるなぁ」
そして、扉の前には先客がいた。
「寿」
ライズが声をかけるという振り返った。
「おぉ、皆様速かったでござるなぁ」
「いや、寿には劣るけど……。
それで、困り事?」
「いかにも。どうやらこの扉の先が最深部へ続くようでござるが、うんともすんとも言わないでござるよ」
お手上げだ、と言わんばかりに寿は肩を竦める。
「あれ?この紋様ってさ、王家の家紋じゃない?」
リースレットの言葉にライズは門を凝視する。
王国が掲げる国旗には、白い翼の生えた少女と剣が描かれている。
しかし王家の家紋と国旗は違いがあり、鎖に巻かれた漆黒の天使という、制作者の神経を疑うものだった。
(国の長である王家の紋様っぽくないよなぁ)
長年王家に仕えるライズだが、その理由は未だ知らない。
「んん〜、んん〜!
びくともしません……」
ティナが
「いっそ力づくで壊しちゃう?」
リースレットがロクでもない事を言い出す。
「王家の家紋って、傷付けたら国家反逆罪になるんだけど?」
「別に良いじゃん、誰か見てるわけでもないし」
(見てるんだよ、これが)
王国全国民と王家御本人が。
(でも、開かないってのは困ったな……。
何か仕掛けは……)
扉に手を当てて、仕掛けを探ろうとすると
ポゥゥ……と、扉が突如光り出した。
「へ?」
扉はゆっくりと、まるで来るべき者が来たとでも言うように開き、最深部への階段を示した。
「ちょ、ライズちゃん、何しちゃったの?」
「し、知らないよ」
ライズはただ、扉に触れただけなのだ。
「うむ……理由は分からんが、こうして先へ進めるのだ、進むしか無かろう。
寿よ、お主もついてくるだろう?」
「ん〜、まぁ、ここまで来た以上、そうするしかないでござろうな。
短過ぎる期間ではあろうが、共に行くでござるよ」
寿を加えたライズ達は、最深部へと足を進めるのだった。
その様子をテレビ越しに見ていた王家の親子がいる。
「とうとう、ここまで来たか」
「父上?」
玉座の間に設置された巨大な液晶画面を国王は食い入るように見ていた。
「あの、父上、どうして、ダンジョンの奥に我が王家の家紋があるのですか?
ダンジョンとは、神の気まぐれで自然発生する災厄であり、人が介入出来る余地はないはずなのに」
「神の気まぐれ……か。確かにな」
「父上?」
「ダンジョンとは神が生み出すもの、なればこそ、そこに我らの家紋があるとすれば、我らの血の中に、神に至った者がいる……そういう事だ」
「それは……」
「見ていろ、レオン。
あの先にあるのは、我ら王家の汚点であり、今の今まで続いて来た罪の証なのだから」
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