第6話 魔術師火力フィーバー

2階フロアへ下りると目に見えてゴーレムなどの岩系モンスターが多くなった。


火力の少ないライズは後方へ下がり、台頭したのは


「うらうらうらぁ!

美少女魔術師様のお通りでぇい!」


「それ、自分で言っていて恥ずかしくはないのか?」


水の奔流が岩の巨人を容赦なく木っ端微塵にし、闇の刃が通路の先からのっそのっそとやって来る岩の巨人を斬り裂いた。


(リースレットは光魔法も得意らしいけど、好みは水魔法って事か。

アリスティアは闇魔法をメインに使ってるな。

いや、アリスティアは火魔法が得意みたいだし、そもそも水の迷宮とじゃ相性が悪いか)


魔物には属性があり、魔物によって効く魔法は変わる。


水の迷宮の場合、その名の通り水属性の魔物が主に出てくる為、火魔法を得意とするアリスティアには若干やりにくいかもしれない。


ちなみにライズの得意とする土魔法は水属性に有効であるものの、ライズ本人は魔力が高い方ではないので高難易度ダンジョンでは補助的にしか使えない。


さらに、リースレットは高火力で一気に敵の体力を奪うような派手なものを好む一方で、アリスティアは闇魔法で剣を作り出し、1体ずつを確実に倒していく。


どちらも高い実力がなければ出来ない事だが、強いて言えば


(お嬢様と魔王の娘、戦闘スタイル逆じゃね?)


「おらおらぁ!

こちとら1ヶ月も監禁されてんだよ!

ストレス発散させろーい!」


「我は10年ほど監禁されていたのだが?」


(テンションの差が……)


ドゴン!ドゴン!と主にリースレットの高火力に任せて進んでいく。


ある意味安定感はあった。


「ど、どうしよう……私、あんな事出来そうにないです……」


「大丈夫だよ、あれ、ほとんどの人は出来ないから」


リースレットのパワーファイター的戦い方も、アリスティアの技巧的戦い方も、かなり手慣れていた。


素人が一朝一夕に身に付けられるものではないだろう。


リースレットは火力任せの脳筋プレイに見えるが、さっきから中級レベルの魔法を連発し、それでいて魔力切れの様子を見せないのだ。


エヴァンエテル家は代々優秀な魔術師を排出しており、リースレットもその例に漏れない事は知っていたが、それにしてもかなりの魔力量を伺える。


(運が良いといえば、良いんだろうな)


ダンジョンへの罪人の割り振りはあくまで、罪状の重さで決められる。


罪の重さ=戦闘力ではないので、運が悪ければ極端な足手まといとパーティを組む可能性もあった。


(残り物には福があるってやつか)


最後の最後、余り物でパーティを結成して良かったと、この時ライズはそう思った。




その後、2階フロアを攻略したところで時間も程々に経ち、キリも良かった事で4人は休憩エリアまで引き返す事とするのだった。

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