第4話 自己紹介
パーティを編成したライズ達が真っ先に行ったのは自己紹介だった。
今後、己の背中を預ける者の人となりや能力は最低限のこと知っておくべき、というアリスティアの提案である。
「まず、我はアリスティア・ミスティロード、先程も名乗ったが魔王グローズの娘だ。
得意な魔法は闇魔法と火魔法。
中級程度までなら一通り使える」
「えぇ、魔王の娘なのにショボくない?」
リースレットが肩すかしと言わんばかりに声を上げる。
「あのな、我は幼少期に魔王を殺され、王国に幽閉されていたのだぞ?
当然、魔法を覚える機会もなかったし、むしろそんな幼子の段階で中級魔法まで覚えられたことを称えてほしいぐらいだ」
王国では、魔術師が魔術師と名乗れる最低ラインが中級魔法を1つ以上使える事だとされている。
そのラインを満たせる人間も、人口換算すれば10人に1人のというレベルであり、それを幼少期に突破したというのは確かに神童と呼ばれるレベルだった。
「まぁ、しかし、魔族とはいえ当時の我も
むしろ、そこらの平民の子よりは上等な教育も受けたし、魔法は使えぬように枷を嵌められてはいたが魔術書を読む事も止められんかった。
剣術の指南もしてもらったぞ?」
(超優遇されてる!?)
罪人どころかVIP客の扱いにギョッとする。
「これでも新兵卒よりは使えるつもりだぞ。
流石に騎士団長ともなるとギリギリ負けるが」
(騎士団長って、あの
むしろギリギリまで戦える事に驚きなんだけど)
過去幾重にも渡る王国の災厄を退けてきた立役者である騎士団長は、闇の戦闘職の間では絶対に戦いたくない猛者ベスト10の1人のと言われている。
「では、次はそちらの青髪からにしようか」
「ほいほい、あたしはリースレット・エヴァンエテル。
得意魔法は光と水だから、魔王の娘様と真逆だよん。
火力ぶっぱは得意だけど、その分補助魔法には期待しないでよ?
剣術とかそういうのはからっきしなんでよろ☆」
(軽いなぁ……)
令嬢とは思えない気軽さに、本当に公爵家の娘なのか疑わしくなる。
「ぶっちゃけあたし、ソロ担だからパーティって新鮮なんだけどさぁ。
ティナシアちゃんに関しては前に会った事あるよね」
「へ?え、えっと、はい……」
「え、何?もしかして忘れてる?
ほら、3年ぐらい前だけどさぁ、聖女様の叙任式で会ったじゃん」
「あ〜、その……はい」
「え?マジで忘れてる?
そりゃあ、おたくのした事に比べりゃ、大事な叙任式1時間も遅刻した挙げ句、入り口から入るのまだるっこしくて窓ガラスぶっ壊して入場したぐらいどうって事ないかもだけど」
(何やってんだよ、この器物破損令嬢)
ちなみに、聖女の叙任式については暗部からも監視の為に何人か向かわされたが、ライズは割り振られていなかったので内情はよく分かっていなかった。
それにしても、そんなインパクト大の登場をしでかした女を忘れるとは、ティナシアも大概である。
「ま、別に良いけどさ。
んじゃ、次はおたくから紹介どぞ!」
リースレットに催促され、ティナシアは「えと、あと……」としどろもどろになりながら
「て、ティナシア・ヒーリンレイスです。
回復と補助の魔法を使えます。
体力は自信がないですけど、が、頑張りましゅ!……す!」
(噛んだな、盛大に)
聖女……ましてや、己の妹を殺そうとした悪女はか弱い少女にしか見えなかった。
「んじゃ、最後にそこの無口な彼女ね!」
リースレットに催促され、ライズは
「私はライズ・リーディット。
風魔法と土魔法を多少、後は、短剣と銃なら多少扱える」
「おぉ、属性コンプリートとは幸先良いですなぁ!」
魔法には6つの属性が存在し、ダンジョンに棲息する魔物の多くは、その属性のいずれかを弱点にしているとされている。
パーティ編成をする際には、なるべく属性をバラけさせるのも重要であった。
「ところでライズはどんな理由で罪人になったの?
ちなみにあたしは、王家の家宝盗みました☆」
(明るく言う事じゃない……)
「私は、元々暗殺者だったから。
具体的にどの罪で、と言われても答えられないよ」
嘘ではない。
ライズは間違いなく暗殺者なのだから。
「へぇ、暗殺者かぁ、こんな可愛くて綺麗な髪した暗殺者なんて、すぐに特徴覚えられて大変そ〜」
「そこは工夫でどうとでもなるから。
まぁ、暗殺者に不利な容姿をしてるとは自分でも思うけど」
「んでんで、どんな暗殺者だったの?
闇ギル系?個人商売系?お貴族お抱え系?」
「言うと思う?そんな事」
「ふむふむ、言えないという事は個人商売の可能性は薄くなりましたなぁ。
個人的には、ライズちゃんはお貴族お抱え系だと推測するんだよにゃあ。
なぜなら、ライズちゃんの愛らしい見た目なら護衛やメイドにしても絵面的に華やかだし、非常に貴族受けしそうだから!」
「勝手に決めつけないで欲しいんだけど」
なんて言いながらも、内心は冷や汗ものだった。
確かにリースレットの推測は遠くない。ライズは王族お抱えの暗殺者なのだから。
別に見た目で採用されたわけではないが、メイドに変装して王族の護衛をした事があるのも事実だ。
「自己紹介が終わったなら、そろそろ行かない?
他のパーティに遅れを取りたくもないし」
「うむ、そうだな、各々の戦闘スタイルや距離感なども、実戦でなければ分からんだろうし」
アリスティアがそう言ってくれたお陰で、ライズに対する追求は終わった。
極悪少女達のダンジョン攻略が、いよいよ幕を開けるのだった。
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