第23話
「内通者と言ってもまだ具体的には分かっておらぬ。とりあえずレイリオの馬を用意した者やスイリンと共に火消しを行った者全員に話を聞いておる。さて、こちらの話はあらかた終わった。次はフィオラとレイリオが話す番じゃ」
とハイリンは促した。
「私達と分断されてから、なにがあった?」
スイリンは険しい顔をして尋ねた。
「………まず、ワープ先は彼らの根城でした」
フィオラがレイリオに代わって話し始める。レイリオを渡せと提案されたこと、それを断れば命を狙ってきたこと。
フィオラの話を二人は神妙な面持ちで聞いていた。
一通り話し終わったところで、次にレイリオが口を開く。
「自分が売られる時のこと、うっすらだけど覚えてます。あの時、僕は散歩中に変な薬を嗅がされて気を失った。でもすぐには意識がなくならなかったんだ。僕は目隠しをされる寸前まで周りの様子を観察していたんだけど、その時に、あの、ヴァルモンがいたんだ。こっちを監視するみたいに遠くからね。もしかして、あの時から、魔族はこの国に干渉しようと企んでいたのかな……?」
「………すると、レイリオの誘拐も此度の跡継ぎ問題との関わりが……!?」
よろよろとハイリンは頭を押さえる。
「昔から、
ハイリンは心底参っているようだった。そんな彼女をスイリンが慰める。
その時、コンコンと扉がノックされた。
「どうした?」
ハイリンが促すと女の従者が息を切らして話した。
「レイリオ様の馬を手配した者が吐きました。自分がやったというのです!今は自害できないように処置をして、地下牢に繋いでおります!」
「よくやった!今向かう!」
スイリンがスクリと立ち上がる。続いてフィオラ達も席を立った。
「同席したいが………私はやるべきことが溜まっておる。あとは任せたぞ」
ハイリンは自室へと戻っていった。
3人は急いで地下牢へと向かう。
長い螺旋階段を降りると、そこにはいくつもの牢屋が、薄暗い空間に設置されていた。中には老若男女の囚人が収容され、呻く者、叫ぶ者、おし黙っている者……様々な
案内された先は最も奥の牢屋で、そこには虎の耳を生やした男の
無精髭を生やした男はフィオラ達が来たのに気がつくとギロリと目でにらんだ。
「彼がレイリオ様の馬を用意し、魔族に協力した張本人です」
「ご苦労。あとは私がやる」
案内をした
「君は馬の整備をしてくれていたアルマだね?」
スイリンが顔を近づけ笑いかけるとアルマと呼ばれた彼は小さく唸り俯いた。
スイリンはポケットから水色のゴム手袋を取り出すと丁寧に手につけた。
「フィオラ、レイリオ。すまないが、少しだけ席を外してくれないかな?」
嫌われたくないからね、と困ったように笑った。スイリンがこれからやることを察し、フィオラとレイリオは一時部屋から出る。
ギャアアアアアと悲鳴がドアの向こうで響く。
ドア越しでもそれはよく聞こえた。
「大丈夫?」
小声でレイリオに尋ねると彼はコクンと頷いた。顔色もそれほど悪くない。
(思っているより、レイリオは大人なのかもしれませんわね………)
長く続いていた悲鳴が止む。
牢への扉が開き、スイリンが部屋から出てきた。
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