第55話

「え?妹……!?」

フィオラは予想外の言葉に目を丸くする。

「そうだよ。ほら、ハイリンとスイリンで名前も似てるだろう?」

ね?、とスイリンはウィンクをした。

「腹違いの妹とはいえ、スイリンの母方の身分は平民での。父の、一夜の過ちじゃ。情けない父親よ。皇族として育てるのも考えられたが、その時も、王宮内での力関係の変動があっての。味方が少なくなるであろうスイリンの身分を明かすのは、危険だと判断されたのじゃ」

(全然……気づきませんでしたわ……。でも確かに目元とか似てらっしゃるかも……)

なんせ二人は雰囲気が違いすぎるのだ。

ハイリンは落ち着いていて美しい所作をする人物であるのに対して、スイリンは活発で自信溢れる人物……言われなければ、二人を比べようとも思わなかった。

フィオラはその二人の隣でウンウンと頷いているフーシィを視線を移す。

「フーシィ様は知ってらっしゃったのですか?」

「んー?まあ、な」

「こいつは自分で色々調べ回ったんだよ!頑張って隠してたのに!」

スイリンがプンプンと頬を膨らませる。

「しょーがねぇだろぉー?気になっちまったんだから」

ポリポリとフーシィは頭をかいた。

そんなやり取りにハイリンは目を細める。

事件は終わった。

そう、感じさせる、和やかな日常であった。


宴が終わり、食器などが片付けられていく。怪物達は解散し、各自部屋へ戻っていった。


そんな中、フィオラは薄暗い廊下を歩き、階段を下った。

しっとりとした冷気が肌にまとわりつく。既に何度も訪れているが、お世辞にも居心地が良いとは言えない場所だ。

フィオラは一人でここに来た。

ある人物と話しをするためである。

封鎖的な地下は、硬い靴の足音が嫌に響く。階段を下りきり、扉を開ければそこには見慣れた地下牢が広がっている。

その牢の中に、鎖に繋がれた美しい女性がいる。

彼女の体は以前会った時よりも痩せ細っており、艶々とした髪は輝きをなくし傷んでいた。

手足を枷で拘束されている彼女の瞳は、虚ろで何も映していない。

「お久しぶりですわねザリィバ様」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る