第54話
「これからって言っても大体決まってるだろ」
フーシィはそう切り出した。
「そうじゃのぅ。とりあえず私は歳だからもう引退するとして……」
「次はレイリオじゃないか!?大体みんな納得してると思うし!私もそれでいいよ」
スイリンがうんうんと頷く。
「というわけで、あとはレイリオの判断ってこった」
どうする?とフーシィはレイリオの方を見た。
レイリオは少し悩み、フィオラの方を見た。
「フィオラは、これからもこの国にいるよね?」
確かめるような彼の言葉にフィオラは困ったようにウーンと唸った。
「ええ!国を出ていく!?」
一同が驚き、声をあげる。近くにいた
一番動揺しているのはレイリオだ。
「え?え?なんで?何か、嫌なことでもありましたか?」
彼は声を低くし、不穏な空気を醸し出す。
慌ててフィオラは言葉を付け足した。
「い、いえ違いますわ。問題は
「問題?」
ザリィバの一件が片付いてから数日後、フィオラはあるニュースを聞いた。それによりこの国を出ようと決心したのだが……このような席でいう話ではない。
「そんな大したことじゃないわ。気になるならあとで教えますし……。とりあえず、今は飲みましょう?」
フィオラはグラスをあげて見せる。レイリオは少し不服そうだったが、やがて頷き、手に持っているジュースを飲んだ。彼はお酒がそこまで好きじゃないらしい。この中で一番お酒が好きなのはフーシィで、彼はだいぶできあがっていた。
「それで?お前はどうすんの?」
フーシィがレイリオに振る。
「あ、僕王にならないです」
さらっと彼は言った。再び席に激震が走る。
「なんで!?」
スイリンが勢い良く腰をあげたせいで、テーブルに置かれたグラスがガタリと揺れた。
「理由を述べよ」
フィオラはハイリンがショックを受けるのではないかと心配したが、当のハイリンは特に動揺した様子を見せず、穏やかにそう言った。
「興味ないからです。僕は、フィオラについて行きたい」
レイリオは率直に自分の気持ちを伝える。
ホホホとハイリンは笑った。
「そうかそうか!興味がないんじゃあ、仕方ないのう」
「ハ、ハイリン様?よろしいのですか?」
彼女があまりに楽観的に受けとるので、なぜかフィオラが心配するはめになった。
「良いのじゃ。既に昨日、他の二人と話し合っておっての。レイリオがそう言った場合は、スイリンが王位を継ぐことになっておる」
「スイリン様が?」
レイリオがスイリンの方を見ると、彼女は恥ずかしそうに頭をかく。
「ああ、まあ、そうなんだよね。私はフーシィでもいいんじゃないかって言ったんだけど……」
「面倒だから断ったんだ。前から言ってるが、俺は国のおこぼれもらえりゃそれで満足だからな」
「うむ、少々特殊な対応となるが、血筋も問題ないしのう」
そこでフィオラとレイリオは「ん?」と首をかしげた。確かスイリンは王家の血を引いていないはず……。
「ああ、本当はスイリン、皇族の血をひいているんだよ」
フーシィの言葉にレイリオは頭にはてなを浮かべる。
「隠しておいたがのぅ、私の妹じゃ」
にこりとハイリンは告げた。
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