第53話
招かれた席に着く。
レイリオがフィオラを見て、目を輝かせた。
「かわいいです!すごくかわいいです!」
ありがとうとお礼を言い、フィオラは席に着いた。
レイリオは赤に金の刺繍が入った着物を着ている。
席に着くとすぐにスイリンがフィオラへ謝った。
「この間誤りそびれてしまったが、君を殺そうとしたこと、すまなかった」
「いえいえ……もう済んだことですし、実はちょっと楽しかったんですの。それよりかなり長い期間精神干渉を受けておりましたが、お二人ともその後体調はいかがでしょうか」
精神魔法をかけられた者はまれに副反応として体に不調が起きる人たちがいる。フィオラはそれを心配していたが二人は大丈夫だと首を振った。
それならば良かったとフィオラはホッと息をついた。
「それにしてもキミは強いんだね。正直びっくりしたよ!
今度正式に手合わせしてくれないか?」
キラキラと目を輝かせてスイリンは誘う。フィオラは是非喜んで、と快く返事をした。
ハイリンはそんな様子を微笑ましく見ている。 彼女はいつも通り髪を下ろしているが、花のかんざしがつけられ、さらに華やかな印象になっている。レイリオと同じく赤や金の色が入った、鮮やかな着物を身にまとい、食べ物を口に運んでいた。
対照的に、スイリンにはは特に髪飾りは付けていない。本人いわく、髪になにかをつけるのが嫌らしい。感覚が阻害されるのだそうだ。だが彼女にもいつもと違うところはある。メイクをしているのだ。彼女は凛々しい印象であったが、メイクをすると途端に可愛らしくなる。
一番の違いはその洋服だろう。彼女は大抵、体のラインに沿った動きやすい服を着用しているが、今日の彼女はふんわりとした水色の着物を着ている。
そんなスイリンを見て、正面に座っているフーシィは時折顔を赤らめているようだった。
彼の気持ちを知ってからは、よく観察していると 露骨なほど顔を七変化させていることが分かり、フィオラはクスリと笑う。
ちなみに彼がスイリンのことを好きなのは、二人の秘密だと固く口止めをされている。
フーシィは灰色の浴衣をいつものように適当に来ている。
しかしこのような席だからだろう、適当とは言え、だらしない印象を受けずおびや首元の布にはお洒落な刺繍が施されている。
フィオラは目の前にある魚料理に手をつける。慣れない箸を使い口に運ぶと、口の中にふわりと香りが広がって非常に美味であった。
「おいしい……」
フィオラが呟くと彼らは嬉しそうな顔をした。
そのまま 5人はいろんな話をした。たまに挨拶に来る獣の相手をしながら(なぜかリーリィがレイリオのことを怖がっていた)、自分たちの趣味のこと、最近気になっているもの、好きな食べ物やちょっとした悩みまで、それぞれ思い思いに話した。
あっという間に時は過ぎて、気がつけば辺りは暗くなり、提灯に橙色の明かりが灯った。
5人の話は
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