第7話 遭遇2
通りを歩く人がみな、振り返る。
輝くばかりの金の髪、整った顔立ちに長いまつげ、彼に微笑まれた女性はその頬を赤く染めることだろう。その隣で幸せそうに歩いているのはピンクの髪を一つで結い、花のように笑う可愛らしい女性だ。彼らの容姿に惹き付けられた人は次に彼らが身に付けているものの高価さに気がつくだろう。彼らは次期王位の継承者であり、この国を代表する者なのだ。よく見れば、民衆に紛れて彼らの周りをたくさんの護衛が囲っている。
「ん~~このわたあめ美味しいです!急にアカデミー表通りに行こうっておっしゃられた時は驚きましたが、来てよかったです!」
「庶民の暮らしを定期的に確認するのも王族の務めだからね。アジェリーも気晴らしができたようで良かったよ。ほら、フィオラのことで疲れていただろう?」
「クリス様……!お姉様のことは、きっと私も悪かったのです。もっと話し合えていたら………!」
アジェリーは顔を手で覆う。その背中をクリスが優しくさすった。
「アジェリーは悪くないよ。僕も、彼女がいじめなんてする人物だともっと早く見抜いていれば、婚約なんてしなかったのに……!
でもフィオラは能力だけはあったな。彼女は間違いなく優秀な人材だった。婚約は破棄するとして、辺境にやらなくても王宮で働くくらいは許してあげようと思ってたけど……」
「申し訳ありません……!私の両親は正義感が少々強くて……。お父様とお母様は、『辺境で少し苦労をするかもしれないけれど、人の痛みを知ってこそ更正できる』とおっしゃって……私はお姉様が可哀想だと止めたのですけれど……」
「ふふ、いいんだよ。フィオラを想っての行動なんだろう。素敵なご両親だね」
フィオラはその会話を無表情で聞いていた。二人はフィオラの前を通りすぎていく。どうやらその瞳にはお互いの姿しか写っていないようだ。
(生まれて初めて、叔父様と叔母様に感謝しようと思いましたわ……)
もしあの家を追い出されていなかったら。
フィオラは慈悲という形で大量の仕事をさせられたいたわけだ。アジェリーは幼少からの教育は受けていない。今から同じ量の知識を身につけるには寝る間も惜しんで努力しなければならないはず。だがこの様子を見ると、王妃教育だけでなく、現在溜まっている仕事も部下に押しつけているのだろう。加えて王子も恋にうつつを抜かして、フィオラと婚約していた時より仕事をしなくなっているようだ。
その尻拭いを
二人の会話で大体の事情察したのだろう。レイリオは気遣わしげにフィオラを見上げている。
レイリオになんて声をかけるべきか。数秒迷った後
「どうします?」
とレイリオに尋ねた。
「どう?」
「あの二人の会話が聞こえたでしょう?
「なんでそんなこと言うんですか……?」
レイリオは訳が分からないという風に言った。
「僕はあんな言葉信じてません。フィオラ様がいじめなんてするわけがありません。フィオラ様は僕の命の恩人です!」
「命の恩人だなんて……大袈裟よ」
「いいえ!僕はあのままだったらきっと、殺されてました。フィオラ様が壊してくれた首輪をつけられてからは上手く考えられなくなって……僕はこのまま、ぼろ雑巾みたいに捨てられて、殺されるんだと思ってたんです」
(………おそらく精神破壊の魔術がかけられた品だったのね。ひどいことをするわ……)
レイリオは俯いていた顔をあげる。喜色満面の笑みを浮かべながら泣き出しそうな顔でレイリオは続けた。
「でも!フィオラ様が来てくれた!フィオラ様は光なんです………僕の、光。フィオラ様のこと、僕信じます!フィオラ様の敵は全部僕が消します!だから、一緒にいてください……」
あまりの勢いにフィオラはレイリオが話し終わるまで一言もしゃべることができなかった。レイリオは勢いよく頭を下げた。
フィオラはその顎をすくい、優しく顔をあげさせた。
「ありがとう。そんなに
それを聞くとレイリオはパアアアっと顔を輝かせた。
「ありがとうございます!……さっき言いかけたことなんですけど、フィオラ様さえよければ、僕の家に来ませんか!」
「え?レイリオの家に……?それは流石に」
申し訳ないというフィオラの言葉を、レイリオは首をブンブンと振って答えた。
「僕が、来て欲しいんです!
レイリオの提案は、フィオラの現状としても金銭的にもメリットしかなかった。しかし人間から隠れて暮らしている
「いいの………?」
「はい!」
レイリオは迷いなく返事をした。かくして二人は、
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