第14話 協力
ハイリンとフィオラは互いに座りながら向かい合っていた。フィオラはベッドで、ハイリンは椅子に腰かけている。フィオラが気を失った椅子だ。二人の表情は柔らかく、旧友のように会話をしている。
「来てくださってありがとうございます。本当はこちらから出向きたかったのですが、医者に止められておりまして」
「良い。この度はレイリオを守ってくれて感謝する。危うく、やっと戻った息子をまた亡くすところであった……」
「私も彼のことは大切に思っています。当たり前のことをしたまでです」
フィオラは側に置いてあるお茶を飲んだ。
(お茶を飲んで死にかけたというのに、なんの躊躇いもなく飲むとは……肝の座った女じゃ)
ハイリンはフィオラが倒れたという報を受けてすぐ、給仕した女をあぶり出し、尋問を始めた。しかしその女給にはアリバイがあり、犯人は彼女に化けて毒を盛ったのだと判明した。
「今調査隊を送り、犯人を探しておる。そなたが倒れてからまだ一日しか経っていない故、遠くへは逃げておらんじゃろう。見つけ次第、主犯を吐かせるつもりじゃ。じゃが……」
ペショリとハイリンの耳が垂れる。その言葉を引き継ぐようにフィオラは口を開く。
「おそらく、絶対に主犯の存在を吐かないでしょうね。話を聞いておりますと、それぞれの暗殺は、成功失敗含め、手腕が良すぎます。さらに刺客は主人に強い忠誠心を持っているのでしょう。プロ中のプロ。その方々の主人は皇族だと、
「…………そうよな。疑いたくはなかったが、私もそう思う」
ハイリンはゆっくりと顔をあげた。
「私はそなたを信用することにしたぞ、フィオラ・ヴィンセント・グレース。どうか、黒幕を潰すため、手を貸してくれぬか」
ハイリンが頭を下げた。広間での美しい礼とは違う、重く深い礼だ。彼女は王家のプライドを一番気にする人物のはず。そんな彼女がここまでの誠意を見せるとは。
フィオラの答えは最初から決まっている。
「勿論ですわ。グレース家の名にかけて、ハイリン様に協力いたします!」
「ありがとう」
さて、とハイリンは姿勢を正し、こほんと咳き込む。キョロキョロと周りに聞いているものがいないか確認をした後、フィオラのベッドに視線を移す。
「レイリオは……まあこのままで良いか」
フッとハイリンが笑った。レイリオはフィオラがいるベッドに体を預け、スヤスヤと眠っていた。
「犯人の目星はついておりますの?」
世間話をするかのようにフィオラは切り出した。
「ああ、というか、王宮のなかで絞れば、犯人は自ずと絞れてくるのでな。
この王宮で、私の他に力を持っているのは、ザリィバ、スイリン、そしてフーシィ。
ザリィバは蛇の
「ふむ………なるほど。今までの三つ巴の状態が、レイリオの登場によって崩れたのですね」
「ああ。
「…………」
できれば、三人全員に接触したい。なるべく早く。
フィオラの考えを悟ったのか、ハイリンは隠し事を耳打ちするように口を開く。
「明後日、レイリオが帰ってきたことを記念してパーティーが開かれる。そこには今いった三人も来るが………参加するかえ?」
「ええ、喜んで」
フィオラは即答した。彼女の瞳はやる気に満ち溢れている。
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