第51話
「全員武器を下ろせ」
ハイリンが指示をすると、騎士達は手に持っていた剣や弓槍を地面へ落とす。
ガシャンガシャンと金属がぶつかる音が響いた。それぞれの
「みな、混乱していると思う。じゃが、今だけは、何も言わず元の持ち場へ戻ってほしい。怪我をしているものは、手当ても頼む」
騎士達は誰も不満をもらさなかった。
全員が指示されたとおり、武器をしまい、広場を後にする。
隠れていた医療班が広場へかけつけ、怪我をしている
すぐに広場はハイリン、スイリン、フーシィ、フィオラのみとなった。
「まず、礼を言いたい。フーシィ、フィオラ……この度はこの国の危機を救ってくれたこと、感謝する。そして申し訳なかった」
そなたには謝ってばっかりじゃなとハイリンは自嘲気味に呟いた。
頭を下げようとする彼女をフィオラが止める。
「謝らないでください。ハイリン様は、今回の被害者でもありますわ。どうか自分を責めないでくださいませ」
「し、しかしこれは……私のせいじゃ。 私がもっと周りをよく見ていれば……ザリィバ疑っていれば……どうして信じてしまったのだ……」
消え入りそうな声でハイリンは言った。
「人を信じることはそんなに悪いことなのでしょうか」
フィオラは広場を見回す。何百人もの兵士が動いたせいで地面はえぐれ、所々に血の跡がある。
「こんなことがあったにも関わらず、兵士たちが素直にハイリン様の言うことを聞き、武器をしまったのはハイリン様の日頃の人望あってのこと。 それに、ハイリン様やレイリオ様の命が狙われたと知ったあんなに国民が怒るなんて、この国がいい国であることの証拠ですわ。ハイリン様……今まで、様々なトラブルがあったのかも知れませんけれど、貴女が仲間を信じて築いてきたこの国は、間違いなく良い国ですわ。
私が保証いたします」
力強くフィオラはハイリンの手を握った。
緊張の糸が切れたのだろう。彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
ハイリンはその白く美しい指で涙を拭うと、「ありがとう」とかすれるような声で言った。
「まー、なにはともあれ 一件落着だな!」
フーシィは上機嫌に懐から煙草を取り出した。「仕事終わりの一服は決まるねぇ」
ふーっとフーシィは煙を吐き出す。
「変わらないな、君は」
ずっと黙っていたスイリンがクスリと笑った。その顔を見て、フーシィも歯を見せてニカッと笑顔を見せる。
(やっと笑ったな)
「帰ろうか」
動けないものは肩を借りて、4人は城へと戻っていった。
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